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戦略会議

アーク歴1510年 陸の月


大魔王城




今年の春の収穫は例年並みだった。

そして米の作付けも終わり、夏野菜の出来もまあまあと来たら

…次は戦争のターンだ。



今、俺たちは会議をしている。

軍議と言うか、報告を含めた会議だ。

魔界でも有数の貴族たち、中立であるユグドラシルの者たち、交易商を集めてのこれからの方針を決定するための会議である。



その有数の知識者たちの間でも、恐らくこの秋冬に戦になるとみられている。

この世界は未だ農業が経済の中心、内政の中心である。

産業革命がおこり、ヒト一人で作ることのできる作物の量が食べる量より圧倒的に上になったら農業より他の産業にヒトが流れていく。


だが、それまではまずは食、という事になる。

生活を豊かにするような製品を作っている暇なんてないのだ。



だから戦争は農閑期に起こる。

人が増え、余ってしょうがない状況にならなければ万を超す常備軍なんてできない。

幾ら超人みたいな奴がいるからって一部のおかしいのを除き、通常は万を超えるような軍勢を凌ぎ切れない。数でゴリ押されると…ロッソのようになるのだ。


「まあ金が無いって言っても戦争に使う道具は別計算なんだけどなあ」

「何か仰ったかいの?」

「いや、スマンなんでも無い。続けてくれ」


リヒタールを取り戻す。

当面の目標はそこにある。


ヴェルケーロは2度の侵攻を防いだ。

特に2回目は俺不在で街をほぼ壊滅させたが…それでも攻め込んだ者は殆ど帰ることが出来ない程壊滅的な打撃を与えたのだ。

その分食料の生産も工場もストップしたが、なに…今となっては魔界はゴンゾの弟子が開いた工場があっちこっちにあり、食料の生産もヴェルケーロ式と名付けられた方式でホイホイ育っている。


今まで不遇だった樹魔法の使い手、レア中のレアな属性ではあるが…彼らに植物の種子を開花させてもらい、土壌を整えた畝に苗の状態にして植えるという方式。

その土壌の改良も勿論する。

土魔法の使い手によって深くまで掘り起こされ、牛糞や豚糞、馬糞などを用いて良く発酵させた堆肥と混ぜ合わせる。おっと、灰も忘れてはいけない。


そうして整えた土壌に苗を植えることにより、単位面積当たりの収穫は倍増したようだ。

倍増である。

正直そんなに増えると思ってなかった。


おまけに耕作面積も増やしたので、当然の結果として…


「そんなに食料余ってんの?」

「そのようです。戦で焼け野原になったので収穫は減ると思いましたが…」

「冷害対策で拓いた土地があります」

「余剰分をどうするかの協議が必要になるかと思い報告しました」

「うーん…ラム爺が仲良くなった国に安く売るとか?どうだ?」

「良いですのう。冷害と人口減で苦しんでいる国は有ります。まあ人口減はやや我らのせいと彼方では言われておりますがの。ホッホッホ」


どうやら調子に乗って攻めてきた軍勢、多くの兵を出した国が生産年齢人口の減少で苦労しているらしい。俺が死んでた時の事だから良く解らんけど、年寄りも多かったが、当然若いもあの時はホイホイ参戦していた。人の領土を攻め取ろうとして負けて苦労してるとか…ざまぁwwwwってところなのだが。


「まあ腹が減ってまた暴れられても困る。上層部がまともな国には売っても良い…麦や米は余ったら酒にして飲むくらいしかしょうがないからな」

「酒は酒で増やしてもらいたいものですがな…」


ガクさんがぼやくとあちこちからワッハッハと笑い声が出る。

ドレーヌはマジで酒増やしてほしそうな顔。お前んとこでやれよ…


「何なら友好な国にはエルフの中でも樹属性が使える者を派遣しても良い。そちらは高くつくと言っておいてくれ」

「それでは上層部が軒並み更迭された国も有りますのでそちらに交渉してみましょうか」

「頼む、ラム爺」


敗戦の責を負われ、魔族に対して厳しい姿勢を取っていた国王や王太子が排除された国があるそうだ。

で、今度の王は中立的なんだと。ええ国やん。それなんてとこ?


「ちなみにそれどこの国?」

「タラモル国です」

「…嫌なイメージしかない」


ヴェルケーロで戦死したタラモル王。

出兵に反対していたタラモル王の息子であるザン王太子は出兵前に廃嫡された。


そして王の死後、タラモル国王の弟が新王になり、2度目の出兵の際にも沢山兵と民を出した。

で、またボロクソに負けたので反対していたザン王子は新王とその息子を排除した…と。


つまり一回廃嫡にされた王子が王座に帰り着いたのだ。

ざまあしたんだな、って風に分かりやすくまとめてもらわないと。なかなかピンとこなかったわ。


「…人間関係が分かり辛いなあ」

「身内同士のドロドロの争いだな。嫌な事だ」

「魔族はその辺分かりやすくていい。駄目なら喧嘩でも決闘でもすればいいしな。あー、その辺も法律にでも決めるか。決闘場作ってバクチにしても良いな。儲かりそう」

「もうすでに賭けになっています」

「そうか。まあそうだろうな…」


俺ごときが考え付くことは偉い先人たちが考え付いているのだ。


「ちなみにカイト様とドレーヌ殿の戦いも賭けの対象になっていました。その節はお世話になりました」

「おいいい!?」

マークス「あの行き当たりばったりだったカイト様が立派な軍議を…(ヨヨヨ」

師匠「いうほど軍議か?雑談になってないか?」

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