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マークス


アーク歴1509年 什の月


教国首都 教城中庭


マークス・アルハレヴィラ



「おさらばで御座います。カイト様…」


グングンと加速して去っていくアカ殿を見送った。

カイト様にお仕えしてかれこれ20年以上の月日が過ぎた。

赤子だったカイト様をあやし、不敬ではあるが孫のように思っていた。

立派に成長した姿を見て飲む酒は美味かった。どうか、このまま生きていただきたいものだ…


「クソ!魔王を逃がしたか…アイツさえ殺せば金も領地も思いのままだって言われてたのによ」

「惜しい事したな」

「それにしてもこれだけの兵を揃えて半死のジジイ一人とは、ぐおお!」

「…誰が…半死のジジイ?ですかな?」


人が感慨に耽っているというのに、無粋な声が聞こえる。

マークスは無礼な騎士を二人、始末した。

少しの抵抗を感じたが、まだまだ練りの足りない若い魔力だった。

即ち…未熟。


斃れた未熟者の手から槍を奪う。

潰れた肺で大きく呼吸する。


「コオオオオオ!」


カイトと傷を負ったマークス、2人乗せてはドラゴンであるアカとて追い付かれるかも知れない。

どうせこのまま朽ちる身なら、華々しく戦場で散って見せようではないか。

マークスは思いの丈を未熟者から奪い取った槍に乗せ、


「ガアアアッ!」


はるか上空に投げる。

まさか下から攻撃が来るとは思っていなかったのだろう。


離れていくドラゴンを追おうとしていた迂闊な天馬騎士は地上から投げられた槍に天馬ごと貫かれ、乗騎と共に地に落ちる。

どういう仕組みか。天馬騎士を貫いた槍はクルクルとそのままマークスの手元に帰って来た。

槍を掴み、邪魔なモノを千切り取ってもう一投、もう一殺。

呆気にとられたのか、地上の聖騎士団たちは彼に襲い掛かりもしない。


「…おや?来ないのですかな?」

「おのれ!この聖騎士団最強のウルベール様がお前の相手だ」

「マークスです。では失礼。」

「何を…あ…」


手刀を一薙ぎするとずるりと落ちる首。


「おっと、槍は頂かなくては」


最早かなり遠くへと行ってしまった天馬騎士へと向かってマークスはもう一投、当たった。

望外に嬉しそうな顔を見せるマークス。

だがそうこうしているうちに的は見えなくなってしまった。

致し方なし。


「3人ならまあいいでしょう。…さあ、この首が欲しいものはかかって参られい」


立ち昇る魔力、そしてあまりにあっさりと殺された同僚の姿に怯んでいた騎士たちだが、それでも上役と思しき男の声に立ち上がった。


「たかが死に損ないの老爺独り、囲って殺してしまえ!ゆけい!」

「「「うおおおおお!」」」


砂糖に群れる蟻のように集まる騎士たち。

その中をある時は跳ね、ある時は重装騎士を弾き飛ばしながら鎧を素手で貫く鬼が一人。


上役と思しき騎士は脳天を貫かれ、真っ先に死んだ。

逃がすまいと囲う者は引き裂かれて死んだ。

勇敢にも斬りかかる者は頭から股まで両断されて死んだ。

矢を放つ物は礫が体を貫通して死んだ。

鉄砲を撃つ者は弾を跳ね返され死んだ。

―――逃げる者は、勿論死んだ。


狂乱の中、自らも傷を負った半死の鬼が嘯く。


「良い冥途の土産たちです。先代に自慢できますな。ホッホッホ」


中庭にいたすべての騎士を全滅させるまで、鬼の動きは止まらなかった。

鬼の死は聖騎士団全滅後、恐る恐る近寄った兵によって確認されたのだった。


というわけでマークス退場です

ロッソとマークス、この二人はいわゆる傅役です。

初めから退場させるつもりだったのですがイザとなると書いていてもつらい。

つらいけど最初に決めたことだし、死んでもらわないと。


サクサク登場人物を殺すのに抵抗はあります。ありますが、戦争物で味方が一人も死なないなんてありえないと思います。敵だけ、無名のモブだけサクサク殺して味方は死なないとかおかしいでしょう。

某ロボットアニメなんかでも敵も味方もモリモリ死にますが、戦ってるんだから死なない方がおかしいわけでじゃあ誰を殺すかって話になって…とグダグダと言い訳をします。

鬱展開になると人が減るってなろう界隈では言われていますが実際そうなるかなと思いつつ投稿。

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― 新着の感想 ―
[一言] 死に際が格好良いから十分に有り 為す術もなく殺されて嫁さんに蘇らせて貰った奴だって居るのです
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