帝国侵入
荷物を詰め込み詰め込み。
忘れ物がないかを確認。よし、OKだ。
死ぬ気は全くないが敵地に行く。一応遺書も見えないところに隠した。いや、縁起でもないな…
「ふう、んじゃ行くか」
「おう」
「ハッ」
「おー!」
「カイト、これを持っていけ」
首飾りをアシュレイからもらった。
ダンジョン産のモノで…鑑定してみると状態異常耐性があるようだ。
「すまんな。ありがと」
「必ず返せよ」
「ああ…じゃあちょっと行ってくるわ」
散歩に行くようにアシュレイと伯母上に少し挨拶し、出かける。
なに、どうという事はない。
もし失敗しても死ぬだけ。いや死にたくはないが。
もし此処に居るメンバーでどうしようもないなら…
兵器の開発で遅れ、個人の力れ後れを取るとなると…このままではいずれ魔族は全て滅ぼされるだろう。
それだけの事だ。
早いか遅いかだけの問題ではあるな。
「ふふ…では征こうか」
「応!」「ハッ」「おー!」
アカに乗る。
大きくなったアカは最早ダンプより大きいんじゃないか。
柴犬サイズだったのが懐かしい。
あれから…ってまだ10年くらいじゃないか。
ドラゴンの成長はどうなってるんだ?ちょっと早すぎじゃないか?
まあ便利に使えるし言うことないからいいか。
暗くなってから大魔王城を出、その夜のうちに人間界に入った。
旧アルスハイル帝国領の山中で降りる。
此処には謎の木こり小屋があり…まあ早い話が諜報部員の休憩所なのだ。
「おーっす」
「カイト様、お久しぶりでございます」
「おう…トモナとコーノヨだっけ?合ってる?」
「ハッ…名前を覚えて頂き感動の極みでございます」
「止せよ…まあ一晩、というか朝まで頼むわ。」
「ハッ」
最新の情報を貰いながら飯を食い、英気を養う。
どうも帝国の国内もバタバタが酷いみたいだ。
本来の国王…この場合は皇帝だな。
皇帝はどこに行ったか分からず。
第一皇子は子供のころに教国に出家して、第二皇子が皇太子になっているらしい。
その皇太子も教国に連れていかれたとか?
まあこの場合。
帝国は教国の支配下にあるのだから皇太子は人質として連れていかれた、と考えるのが自然だ。
第一皇子は小さい時に出家したが、変わったことを一杯やって少しおかしい子だったと。
「民草との関係も悪くなく、まるで若のようだと内偵していた我々は感じました」
「ほーん?」
俺のように頭脳明晰でイケメンだと…おい、誰か突っ込み入れろよ?
で、第二皇子はといえば良くも悪くも帝国貴族らしく、貴族の間ではすごく受けが良いが、民衆からは評判が悪かったのだと。でも貴族受けが良かったし、血筋としても第二皇子の方が良かったのでそのまますっぽりと皇太子に収まったとか。
こうなると邪魔な第一皇子を周辺の貴族たちが追い出したのかな。と思えなくもない。
皇帝はどう思っていたのだろう。
帝国の皇帝はボンクラ野郎だと個人的には思っている。
何度もリヒタールに攻めてきていたが、何の工夫もなかった。
まあ人族と魔族、それに教国が絡んでいるとなると調略なんかは難しかったと思う。
それに攻め入る口もリヒタールくらいしかないってのもある。
だけどそれにしても油断させといてがぶっととか、夜襲してみたり新兵器試してみたり…ってのは特になかった。鉄砲なんかはあったけど教国産っぽかったしな。俺なら海を使って迂回させてみたり、いろんな手を使って揺さぶると思う。一回試してダメだった城砦を攻めるのだからいろんな手を使うのは当然だ。
でもそれをやってこなかったんだよなあ。皇帝だけが悪いってわけじゃないとは思う。軍部が駄目だってのもあると思うのだが…
まあそんなこんなを情報交換しながら腹いっぱい食って寝た。
アカの分はちゃんと食べさせてる。
小さくなって部屋に入れてカバンに詰め込んだご飯を食べたらおやつタイムだ。
何を入れてるのかと思ったけど、普通に飴玉を幸せそうな顔してペロペロ食べてバナナ食って寝た。
この世界だと飴はまだまだ高級品、と言うか砂糖がな…
テンサイもビーツも結局見つからん。
サトウキビはあったから暖かいリヒタールで沢山育ててたけど戦場になって収穫が…クソが!
というわけで砂糖は高級品。
飴玉は砂糖と水飴と水を混ぜて作った。
水飴は麦芽糖から作ったから割と何とでもなる。
魔力を少し与えて芽が出たら回収すればいいのだ。俺がやる気になればいつでも作れるいい水飴である。
イナゴの時はコレすら作るのをためらうほど食料不足だったが。
リヒタールで取れなくなったから砂糖は大魔王領とベラさんの所で作っている分くらいしか無い。
つまり俺の所にはほとんど回ってこない。
やっぱ戦争なんてクソだわ。
クソクソのクソだ!
国境にある山賊砦みたいなのに入っただけです。タイトル詐欺…?