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激闘

アーク歴1509年 陸の月


大魔王城



ゴンゾと新たな開発について相談した。押し付けたとも強要したともいえる。まあそれはいい。

大体の方針を決めて丸投げしておけば問題ないはずなんだ。

とまあ、ゴンゾには無駄に強い信頼感がある。


問題は今も次々と起きている戦争についてだ。

ヴェルケーロ方面は町に誘い込んで全部焼くというとんでもない方法で撃退した。

おかげで丹精込めて育てた町は焼け野原の瓦礫の海、さらにはその瓦礫の中に黒焦げの死体が転がるという阿鼻叫喚の有様である。


とてもお子様には見せられない…大きな大人にも見せたくないような悲惨な状況だ。

戦争ってホントに嫌なもんだな…


だが、襲ってくる者を斃さなければ、屍となって転がるのは自分たちだ。

この戦は、彼方(あちら)から見れば殲滅戦だろう。

負ければ俺たち魔族は奴隷で済めばいいってレベルになるはず。


恐らくは一部の見目麗しい奴隷以外は生き残ることすらできない。そういう戦いになるはずだ。

生き残った方がつらいかもしれんがな。


そして時間はこちらの味方ではない。

むしろ彼方の味方だろう。

魔界に籠城をしても誰かが援けに来てくれるわけでもない。

俺たちより早いサイクルで増える人族兵、そして力も大差ない。


さらに武器の開発もあちらの方が恐らく早い。

航空機が登場するまであと何年あるだろう。

そうなってしまえば一部の強者しか航空機を倒すことは出来なくなる。

ヒトは竹やりでは航空機を倒すことなどできないのだ。


プロペラ機の時代はまだいい。最高速も遅いし、アカがいれば防空程度は出来るんじゃないか。ただし、アカがいないところは…飛竜じゃプロペラ機を相手にしても対等に戦うのは難しいだろう。

防御力はそこそこ高いと思うが、機銃を連射されると撃墜されると思う。

そしてジェット機が出来、高度1万Mを超えるようになれば…大人のドラゴンですらマトモに勝負出来ないようになってしまうだろう。相手はそこから適当に爆弾を落とせばいい。

命中精度は悪いが、効果的にダメージを与えられるかどうかだけの問題だ。



…ってな展望を叔母上とガクさんとベラさん、それにアシュレイと話した。

場所はもちろん大魔王城だ。

今までは招集をかけても忙しいからなかなか集まれなかったが、まあ蒸気機関車のおかげで1日あれば余裕で集まれる。空飛べるやつはどうせ楽々移動できたんだけどな、ガクさんとか飛竜に乗るのは厳しいんだよ。重いから。アカなら大丈夫なんだが…


「それで、カイト様はどうなさるのかしら?」

「やめてくださいよ、カイト様なんて」

「貴方はアークトゥルス魔王に成り、今は大魔王様の後継者としての立場が有ります。義理の母でも敬語は必要ですよ」

「儂はまだ認めておらんぞ。この後一戦しよう」

「俺もまだだぞ。」

「じゃあ私もその後やろう」

「一人ずつ!せめて一人ずつでお願いします!」


ガクさんがウキウキしながら戦いを提案する。

そしたらベラさんもアシュレイも乗っかってくる。つーか、アシュレイはいいだろもう!?


そして気が付けば話も半ば、気も漫ろな皆を連れて大魔王城の外にある練武場へ。


俺はガクさんとは初めて戦う。

ガクさんは岩石の魔人と言った風情だ。

ゴーレムの仲間になるのかと思ったが、勿論人口生命体ではない。

体の表面に鱗のような物があり、それが土や石でを引っ付けるらしい。

ふーん?って感じだが、そういう種族だと言われれりゃ納得するしかない。


「じゃあやりますか…」

「応!行くぞ!」


ガクさんが突っ込んでくる。はや…くは無い。

むしろ、想定以下の速度だ。

あれっ?と思いながら受け流す。

そして反撃にパンチ。それなりに魔力を込めたそれなりの一撃はドゴォンと言う音を立てる。


「…いってええ!」

「ううむ。なかなかの拳であるな。…儂を素手で殴りに来たのはお主の父以来だ」

「そうですか…痛ててて」

「だが、ガンドルフは痛いなどと弱音を吐かなかったぞ。ものすごく微妙な顔をしていたが」

「…でしょうね。まだまだ行きますよ」

「おうさ!」


そう言われたら意地になる。

殴る、蹴る、ヒール。


「おらららら!」

「ははは!楽しいな、リヒタールよ!」

「俺は痛いし辛えよ!くそ!」


拳が、脚が痛めば癒しながら戦えば良い。

そう思って攻撃をかわしながらカウンターを入れていく。

それ自体は難しくないが、当てるごとにこちらが一方的に傷んでいる気がする。

カウンターを入れると相手に伝わる衝撃も大きくなるが、こちらの拳へのダメージも大きくなるのだ。


なるほど、だからボクサーはグローブをするのか。

アレは相手の傷を慮るだけじゃなくて自分の拳を守るためのものだったのか。

などと変な事を考えながら攻撃を続ける。


俺より大きいガクさんの攻撃は重い。

速度は俺の方がだいぶ早いと思うが、それでも攻撃力と防御力が高い。

やっとの思いで岩を砕くと『ううむ、岩を砕かれたのは久しぶりだ』、なーんて言いながらその辺の土を拾ってまた同じようなカチカチ岩を作りだした。なんじゃそりゃ!汚い!


汚いとは思うが、それが相手の特技なのだからしょうがない。

拳を痛めても、脚を痛めても、もうなんだか拳より手首の方が痛くなってきたくらいだが、それもこれもヒール連打で治る。


くそ痛いがだんだん慣れてきた。

外から見ればガクさんの防御力も、どんな傷がついてもヒールですぐに直して攻撃し続ける俺も大差ないのかもしれない。


レベルアップとギフトの相乗効果だろうか。

元々int寄りで打撃が低いと思っていた俺はそれなり以上の攻撃力を持つようになり、そしてそれをはるかに上回る魔法攻撃力、魔法回復量を持つようになった。


つまり、痛いだけで別にどうという事はない。MP切れは程遠い。

この程度なら使う量より回復する量の方が多いくらいだ。


と言う訳で俺が我慢すればいくらでも戦える。

火力が低い?良いじゃないの。その方が長く遊べるってなモンだ。


「がはははは!何か楽しくなってきたぞ!」

「ワハハ!儂もだ!楽しいのう!」


なんだか楽しくなってきた俺たちの殴り合いは日が暮れて周りに止められるまで延々と続いた。

気が付けば随分腹も減っている。

マリアはすでにご飯を用意していた。というわけで休戦して食堂へ。


大魔王城の食堂に入るといつぞやの『大人のお子様ランチ・超特盛』が出て来た。

うーむ。


「ねえマリア、何でこれ選んだの?」

「カイト様もガクルックス様もお疲れのようでしたので沢山お食べになるかなと…皆さま大変楽しそうだったので、お腹が空いておられるだろうな、と…」

「おう…まあどうぞ。ちなみにお残し厳禁です」

「この量をか!?」

「カイト様の冗談です。お持ち帰り用のトレイは用意してありますので食べきれない分は箸を付けずに持ち帰って後日食べて頂ければ幸いです。」

「そういう事なら頂こう。どれ…うん、美味いではないか」


ならば…という風に食べ始めるベラさん。

中々お上品な食べ方だ。さすがは魔界有数の貴公子である。

まあ食ってるものは大きなお子様ランチなわけだが。


いい大人の上流貴族がお子様ランチって…フヒヒ、と一人笑いを噛みしめる。

周りを見るとガクさんはバクバク食ってる。完食コースだな。

アシュレイと叔母上は…うん、アシュレイも食いまくってる。こっちも完食しちゃうんじゃないかってペースだ。叔母上は最初から小盛にしてもらったようだ。ずるい。


なに、食べきれそうなんて思うのは最初だけよ。

途中で箸が止まるようにできているのだ。


「さて…じゃあいただきます」


俺とてかつての俺ではない。

途中まで食って涙目になっていた、あの頃のひ弱なカイトではないと言うところを見せてやろうではないか。

今日の月曜日感ハンパネエっす…

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