布教
何故か昨日の分投稿したと思ったのに消えてました。なんでやねん…
今回からカイトは主人公に戻ります。
アーク歴1509年 伍の月
ドレーヌ公爵領
アカと共にドレーヌ領に辿り着いた。
テントのような物を立て、沢山人が集まっているところがある。
難民っぽい感じだが、アレ恐らくうちの領民だろう。
アカを見て手を振っているから…まあコイツが飛んでるところは見慣れているだろうしな。
「あそこ降りるぞ」
「おー」
避難民たちのいるすぐ近くに広場があるのでそこに着地。
地面に着くとすぐに皆に囲まれた。
いや、降りる前からすぐそこにいたやつもいる。リリーとシュゲイムか…
「カイト様!」「カイト様ご無事で!」
「まあ無事じゃないけど…アシュレイのおかげで生き返ったみたいだ。皆はどうだ?ベロザは怪我したんだって?」
「申し訳ないですだ。オラは、オラは町を任されたのに…」
うっ、うっ…と泣き出すベロザ。
そしてそれを慰める美女はリリーだ。
「泣くなよベロザ。町はまた再建すればいい。陥とされたってどうって事は無いさ。もともと何もない…と言えばお前らに失礼だけど。俺が来る前は掘っ立て小屋ばっかりだったじゃないか」
「掘っ立て小屋は酷いですだ」
「ハハ。ごめんって。泣くなって。美人が見てるぞ」
ワハハと笑いに包まれる。
そうだ、笑ってりゃいい。
笑顔になれば人は元気が出て来るものだ。
「銃弾めり込んでるんだってな。取ってやるから来いよ」
「いたた!痛いですだ!」
グズグズするベロザをズルズルと引きずって治療小屋っぽい所へ。
ドレーヌも途中で見つけたからついでにこいつも引きずって。
「クリエイト・ウオーター ダブル」
服を脱がせて全身をじゃばーっと洗い。
「はーい、ちくっとしますよー」
傷口を熱消毒した爪切りナイフで切開。
消毒しないとジジイの爪の中のバイキンがいっぱい入って水虫になっちゃうかもしれんからな。
「弾は…あったあった」
「い、痛いですだ!」
「我慢しろ。ヒール!ほら取れたぞ」
「うう…痛かったですだ…」
治した傷はもう全く見えない。不思議なもんだな魔法ってのは。
「あと何個あるんだっけ」
「カイト様、あと5個ございます。こちらとこちらと…」
リリーがアシスタントに付いて、こことここと…って教えてくれる。
触診すると確かに違和感があるし痛がっているので、そこをバッサリ切って弾を取り出し、ヒールを繰り返す。ナイフで切った傷は勝手にくっ付いて縫合も要らない。
外科医が聞いたらブチ切れるか羨ましがるか…まあ羨ましがるだろうな。
「ヒール。これでおわりか?いやあ、魔眼って便利だなあ」
「必要ならおひとつ差し上げますが!」
「いや、止めろよ!」
いそいそと目をえぐり出そうとするリリー。
止めろマジで!
このあと、銃弾の入り込んだままの怪我人をスパスパ切って治した。
助手が優秀なおかげでついでに色んな病変や古傷までサクサクと治療が進んだ。
「前より調子いいですだ!」「腕の弾取ってもらって腰がなおっただ!」
「体全体が軽いですだ!」
ミノタウロスは角が再生し、ケンタウロスの取れた尻尾までなおった。
自分でも何かヒールの調子がいいなと思ったけどこりゃ明らかに部位欠損が治せるようになっている。
生き返って何かに目覚めたか!?と思って俺の腕にかけてみたが治らなかった。なんじゃい!
「まおーになったからじゃないのか?」
「アークトゥルス魔王に就任したのは…一昨年か。じゃあ違うはずだけど」
「じゃあ大まおになったから?」
「それはまだ名前だけだし。ギフト貰うのは来年の初めの筈なんだけど」
「じゃあ生き返ったからじゃないのか?」
「そーかもしれん。死んでるうちに何かの修行をしたとか!?蛇の道とか重力10倍とか!」
俺にもいよいよ主人公らしいアレやコレやがあるのか。
一度死にかける…いや、一度死んだか。
死んだら強くなるとかもう完全に主人公ムーブじゃないか。
ナハハ。何か色々申し訳ないような!?
「カイト様大魔王様になっただか!?」
「師匠が遺言でそう名乗れって言っただけだからな。まあ特に意味はないと思うが」
「魔界に住む者全てを束ねよという事では。勿論、我らはカイト様について行きますぞ」
どこから来たのかシュゲイムが跪いている。
というかさっき治療してた奴らもだ。お前らまだまだ病人なんだからさっさと奇麗なところに行け。地面に跪くなんてしなくていいんだよ…
「いいから顔を上げろ。病人や怪我人は少なくとも1日は静養するように…シュゲイム、食糧は?」
「放棄する際にすべて持ち出してあります。無いのは藁くらいですな。ワッハッハ」
藁をどうしたのかと思ったが、ヴェルケーロのあちこちに山積みにして火をつけたんだと。
むか~し小学校の講義で三国志の話をして、城を捨てたところに堂々と入場したら町中に火がついて『げえっ!これは孔明の罠だ』ってなった話をしたことがあった…らしい。
全く覚えてないわ。
こいつらの記憶力やべえな…
どんぶらこと言えば桃太郎だし、お椀を見れば一寸法師ってくらいに昔話とかいろんな話を思い出した時に適当に話していたが、その中で戦術というか無茶苦茶な作り話だろってのも面白おかしく話している。
仁王立ちとか鵯越とか桶狭間とかに混じって三国志の話もしていたらしいのだ。
と言っても俺は横山大先生の三国志しか知らん。それもうろ覚えだ。
いや、小説版の方も読んだことあるが記憶に濃厚に残っているのは『げえっ!孔明!』や『呂布だー!』の方だ。
原作というかベースは小説の方だったと思うが…よりコミカルに仕上がっていてとりあえず読んでない人は絶対読んだ方が良いです!?