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閑話 アフェリス戦記②

少し時間は戻ります

アーク歴1509年 肆の月


アークトゥルス城

アフェリス・アークトゥルス


リヒタールは陥落した。

以前に昔カイトと作った畑は何とか復旧しようとしたが、再度踏み荒らされることになった。

あの頃、私はどうしていたのだったっけ。


お姉さまが鍬を振るって頑張っている横でカイトは樹を抜いたり種を植えてすぐ芽を出させたりしていた。

私がいくら引っ張っても動かない樹を、カイトは指一本で自由に操っていたのだ。まるで魔法だとおもった。


いや、実際に魔法だったのだけれど、私がそれを知ったのはもう少し大きくなってから。

その頃の私は二人の真似をしようと頑張って…頑張っていたのかな?遊んでいたような気がする。

そして泥んこになってマリアさんに洗ってもらった。

カイトはなぜか怒っていたけど、今なら理由はわかる。

私が泥んこになったからカイトは叔父上に怒られてしまったのだ。


悪いことをしたな、なんて気は起こらなかった。

何でカイトは怒ってるのだろう?と、不思議だっただけ。

姉上に聞いても困ったような顔をするだけだったし…。

…だが今ならわかる。

あの日々は私にとって楽園だったのだ。

いや、恐らくは私たちにとっての楽園だった。




…そんな思い出の残るカイトの畑は領主館の裏という立地から軍事物資を置く倉庫になり、そして敗戦が決定的になってからはそこから荷物を運び出し…運びきれなかった分は燃やした。

畑はカチカチに固められ、その後燃やした後の灰やゴミが沢山になった。


「姫様、準備できましたかな」

「…はい」


私の護衛として付いてくれているマークスさんと一緒に帰還の途に就く。

マークスさんは護衛として、時には一人の戦士として前線に行った。

勿論その間、代わりの護衛はきっちり手配してくれている。


マリアさんの部下だと言っていたけど、諜報だけではなく戦闘にも優れているようで…私なんか相手にもならないほどの実力だった。

でもマークスさんから見るとまだまだらしいけど。


「では、行きますぞ」

「はい」


感傷に浸る間もない。

そのまま私たちはリヒタールを引き払う。

殿に決死隊を置き、引き上げる。

決死隊の皆には適当に逃げてしまえといったが、彼らはそんなことは出来ないと…


ああ、早く姉上がカイトを生き返らせて、何とか守ってほしい。

姉上やカイトがいなければ、私の力ではもうどうにもならない。

1日で100人の重症患者を癒しても、次の日には200人が重症になって帰ってくる。

なんとか、敵を防ぐだけではない。どうにかして追い返さなければ…

次はアークトゥルスが、その次は大魔王城が落とされるだろう。


そこまで私たちは追い込まれてしまっているのだ。







アーク歴1509年 伍の月


アークトゥルス城

アフェリス・アークトゥルス


「リヒタールは、守れませんでした…」

「よくやったわ、アフェリス。あなたの頑張りは聞いています。援軍は送ったのだけれど…」

「敵は強くなっています。へ、兵の力は互角くらいです」

「馬鹿な…人族ごときと我ら魔族が互角などと」


母上に報告している最中、口を挟む者がいる。

あれは…ああ、父上の叔父さんだ。


魔王位の継承権は儂にある!とか言って母上に挑んであっさり負けたおじさんだ。

カイトがそこにいたらどんな顔をしただろう。

姉上は…姉上は困った顔をしただろう。カイトはおなかを抱えて笑いそうだ。


「何か申しましたかな?」

「ヒッ!」


マークスさんが殺気を飛ばす。

それだけでおじさんは腰が抜けたように後ろに座り込んだ


「この私が見たところ、素手ならやや我らの兵が有利でしょう。ですが、武器は圧倒的にあちらが上です。魔剣の類ではなく、銃器です。パンパンと何発も撃ってきておりましたな。一発一発は私からすれば大した威力ではありませんでしたが…それと大砲も多かった。並の城壁なら持たないでしょう」

「ふむ…」

「し、四方を囲まれました。マークスさんが居た西壁は抜かれませんでしたけど、他が危なくなったので…」


治癒の休憩中に戦っているところを見張り台から見た。

マークスさんが居たところは敵が近寄れないような有様だったけど、他の壁はそうもいかなかった。

魔族の並の武将では蹴散らすことは出来なかったのだ。


マークスさんやお母様のような、魔王クラスの実力の持ち主でなければ…


「やたらと士気も高かったですな。味方が蹴り落されても、バラバラに引き裂いてみてもひたすらに向かってくる有様で…」

「なるほどね、分かりました。ガクルックスもこちらに来てくれるという事です。私とマークス、それにガクルックスと…足りませんね」

「三方を強者のみで守るとして、もう一方は将たちをかき集めて一日中戦えば…やってやれなくはなさそうです。ホッホッホ」

「一日中なんて私は無理よ。そんな体力ないわよ」


嬉しそうなマークスさんにあきれ顔の母上。


リヒタールは守れなかったけど…何とかここで時間を稼がないと…

サブタイサッパリ思いつかないのでアフェリス戦記に。

パッと見アシュレイ戦記とみまちがえるだろうけどまあいいか、という大雑把な決め方です。


幕間で挟んでいた分もサブタイ変更してアフェリス戦記①に変更しました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 人間側は俗に「聖戦」などと言われるスキルの影響下だよね
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