アシュレイ戦記⑪
遅くなりました。
今日メンテだなんて知らなかったのです…朝ログインしてみてビックリしました
「それで、その時カイトは…その後…」
「ああ、奴はそういう事をしそうだ。儂の時も…」
「それは大変無礼な真似を。アイツは大魔王様の悪口も時々言っておりまして…」
「まあ無茶な命を出したこともあるからな。それにしても…」
大魔王様とこんなにお話をしたことは勿論無かった。
最後にお会いした時はカイトの所で畑をいじっている時期だったか。
その前は…私が3歳くらいだったと思う。カイトが産まれて少ししたくらいだったか。
その時は疲れた顔をしたお爺さんだと思っていた。
今は元気そうだが。
やはり大魔王の重責に大変お疲れであられたのだろう。
「…お元気そうで何よりです」
「ん?ああ。塔の守護者になると身体は最盛期に近い状態になるようだ。儂はもっと若返るかと思っていたのだが…知識や小技も捨てた物ではないという事かな?ふふ。それでもお主には敵わなかったがな」
「私は大魔王様と思い切り戦えて楽しかったです」
「そうか。儂も久々に暴れて気分爽快であった。これがカイト相手だと暴れさせずに倒す、とかやりそうだからな…奴のそういう所は詰まらぬ」
「ありそうです。卑怯な攻撃も幾らでもやるでしょう。勝てば良いのだ、などとよく言っておりますので」
「あやつには魔族の誇りなど何の価値も無いからな…まあ人族もそうか。あ奴も根っこは弱者が強者に勝つための考え方をしている。儂らのような強き者からすれば褒められた考え方ではないと思うが、歴史は勝者が作る。お主も努々油断せぬように」
「ハッ」
「そうだな、これをやろう」
大魔王様は首飾りをはずして私に手渡した。
「ドロップ品、じゃな。本来塔の守護者に選ばれた者はこういうのを渡すことが出来ぬが、まあこれならよかろ」
「こちらは?」
「これは神々からの干渉を断ち切ることが出来る物。儂の仲間が命を懸けて作ったものだ。お主はこれでカイトを守ってやるがよい」
「はい。ありがとうございます」
「今のわしが持っていても何の価値もない物よ…ではさらば。愉しい時間であった」
「はっ。おさらばでございます」
大魔王様もさらさらと砂になった。
そしてそこに残るは3種の宝珠。それも2個づつだ。
「ピピ!」
「これを使えばよいのだな?」
「ピッ!」
一つづつ使うより強力な効果があるらしい。
何となくそういう思念が伝わってくるのだ。
私は命の珠を両手に持ち、念じた。
そして名前を探す。
…あった。
いつも面倒をかける弟で、いつのまにやら恋人で、私を生き返らせてくれた恩人で…そして私の夫の名前を。
「カイト・リヒタールを蘇生させる」
そして次の瞬間、私はダンジョンの外に居た。
隣には少し疲れた顔をしたカイトが不思議そうな顔をしている。
「あれ?アシュレイ?ここ塔の入り口だよな?んんん??」
「ああ。大変だったんだぞ。急に死んだって聞いて…」
「あ、俺死んでたの?えー?アカとあっちこっち行って作物育てて…そのあと???」
「思い出したか?」
「うーん…なんか変な夢見てた気がするんだけどな。みんなでアシュレイを応援してたような…?」
「夢?何を言っているのだお前は…」
久しぶりに会うカイトはいつもと何も変わらず、恍けた顔をしていた。
だがそれでいい。それこそがカイトそのものなのだ。