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アシュレイ戦記⑩

久遠の塔90層


アシュレイ・アークトゥルス



85層から上はそこまでと大差ない。

色々な属性持ちのモンスターが雨霰と襲い掛かり、いい感じでレベルが上がる。

私は鑑定能力が無いので良く解らないが、加速度的に強くなっているのは実感できる。

『けいけんち』が多いのだ。

ここでもう少し狩ればもっと強くなれそうだが、時間が惜しい。


「たのもーう!」

「ピピー!」


殆ど駆け上がるようにして90層へ。

ここはかつて人型のボスがいたところだ。

ということは恐らく、ここも誰か知り合いが…


「うむ、久しぶりだのう」

「大魔王様…!?」

「うむ。アシュレイよ、よくぞここまで参った。さあ、儂にその力を見せるがよい」

「はい!」


そこにいたのはかつて子供の時に謁見したことのある大魔王様だ。

よかった。普通に戦うようだ。

いや、良くないのか?カイトなら話だけで済むほうが楽だなどと言いそうだが…あれ?私がおかしいのか?いやいや、どうでも良い事だ。


「参れ。」

「参ります!せいいいっ!」


一瞬の逡巡を見て取ったか、大魔王様が催促をなさった。

申し訳ない事だ。


その思いを込めて渾身の突きを放つ。


「ぬうう!」

「はああああ!」


正面から剣で受ける大魔王様。

鍔迫り合いの状態になるも…


「はああ!」

「ぬ…グッ」


押し勝ってしまう。

押し勝ってしまえたのだ。私は。

魔界でも最強の大魔王様を相手にして。それでも。



以前、アカと一緒に90層に来た時は普通の人型モンスターだった。

何の種族かは分からないが魔族の、恐らくは嘗ての戦士を模した姿だったのだろう。

角があり翼と尻尾がある、由緒正しい魔族の姿だ。

父上やベラトリクス魔王のような姿だった。


その人型モンスター相手に私は少し押し負けていた。

アカと共に戦ってようやく勝ったのだ。


だが、あれから半年も経っていない。

なのにその90層番人よりはるかに格上の筈の大魔王様を相手に…


「驚いたな。それがお主の真の力か」

「は…はい」

「あやつがアシュレイはチート野郎だ、などと言っていた意味がようやく儂にも分かったわ。儂とて『前作』の主人公らしい。それなりの強者であるつもりであったのだがな…」

「『前作』?ですか?」

「ん、ああ。死して正式に塔の守護者に選ばれた。その際にインストールされた(渡された)知識によると。儂はココが出来る以前の世界で、お主のような役割だったらしい。世界を変える。そのような役割だ」

「世界を…」


何の事だかわからない、とは言わない。

寝物語で聞いた。私は本当は世界の主人公であると。

だから誰よりも強いのだと。


何の事やら分からなかったが、今になって見れば分かる。

レベルがはるか上だったアカと同等に戦えるようになったのはいつだったか。

適正レベルが1000オーバーと言われている80層ソロクリアはいくつで達成した?

ここに来てドンドンとレベルが上がった感覚があるのも恐らくは適正レベルより遥か上の敵を相手にしているからで…


「ふむ。ようやく理解したか。お主もまた神に選ばれておるのよ。」

「神に…」

「だが、その神が善きものとは限らぬ。そして神が一柱とも限らぬ。あちらにはあちらの都合がある。我等はそこで動かされる駒に過ぎぬ、だが…」

「たとえ駒であっても私達にも意思は有ります」

「左様。さあ、戦え。儂を超え、己を見せよ」

「参ります!」


既に力で押し勝てることは分かった。

大魔王様もそれをわかっているようで、為らばとばかりに速さと魔力を前面に押し出した戦い方にシフトチェンジしたようだ。


「はああっ!」

「甘いわっ!」


私の突きも払いも真正面からは決して受けず。

受け流し、或いは躱してカウンター攻撃を仕掛けてくる。

だが。


「サンダーブレイク!」

「見える!フレイムキャノン!トリプル!」


光より速いはずの雷の魔法が見える。

そこに合わせて火魔法を放ち、追撃に2発を合わせる。


「ちいっ!アイスニードル。なにっ!?」

「だああああっ!」


私の火魔法を迎撃する大魔王様。そしてその後ろに回り込み。

自爆も辞さぬ薙ぎ払いをかける。


「ぬおおお!」

「まだまだああああっ!ダブルストライク!」

「ぐっ!この…!」


ロッソを倒した二段突き。

後方からの上下二段突きは大魔王様を直撃した。


私の所には迎撃されなかった1本のフレイムキャノンと急遽私の方に向けられたアイスニードルが当たるが、どうという事は無い。

相性の問題もあるが、防御力も急激に上昇した私にはどちらの魔法も致命傷にはなり得ないのだ。


二連突きの後は逃がさないようにじっくりと料理する。

コーナーに追い込んだ後は逃がしちゃだめだ、とカイトがよく言っていた。

コーナーが何か良く解らないが、兎に角主導権を握ったら手放すなという事らしい。


「せいっ!はっ!スラッシュ!ダブルスラスト!」


大技は不要。

隙の少ない小技、基本技で追い込み。


「ぐっ!ライトニング・ノヴァ!」

「もらいます!レイジング・ゲイザー!」


焦って打ったカウンターに対するカウンター。

その技ズルいだろ。とカイトに言われる『無敵時間』付きの大技。

その一撃は相手のあらゆる攻撃を無効化しつつ、技の効果範囲に居る者にダメージを与える。


「ぐおおおおお!」

「やったか…あ。」


やったか、だけは言ってはいけない。

そう言われていたがつい口から出た。しょうがないじゃないか。


「ふう…ぐ…アシュレイよ…『あ。』とは何だ?」

「カイトより『やったか?』だけは言ってはいけないと言われていました。ふらぐ?だと」

「あいつの妙な知識か…だが今回はお主の勝ちで良かろう。まさか超必殺技を超必殺技で返すとは…」

「超必殺技?ですか?」

「うむ。儂のは強制カウンターと言って敵の攻撃を無効にしつつこちらの攻撃が通ると言う性能らしい。よくわからんがな。お主の技も同じような性能だな。しかも恐らくは広範囲の攻撃。何ともまあ…」


大魔王様は呆れている。

良く解らないが、私にしか使えないこの技は復活した時に何故か身体が覚えていたものだ。

一日一回しか使えないから今まで温存していたが、どう考えてもズルいほど強い。

やはり私は『くそちーと野郎』なのだろう。

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