幕間 その頃舞台裏では
久遠の塔???層
カイト・リヒタール
「いけ!そこだアシュレイ!ああっ!」
「うーむ、アーノルドの奴やりおる」
「あぶない!うしろ!そうだ!ナイス!」
「カイトはうるさいのう。ちと黙れ」
「すみません大魔王様…あっバカ!直線的過ぎだろ!」
「坊ちゃん、後ろが見れませぬ」
「ああ、ロッソすまん」
俺は今、どこかの不思議な空間で不思議なテレビを見ている。
近くに居るのは大魔王様を始めとしてオヤジにロッソに…後は知らない人もいっぱいだ。
あちこちの畑を忙しく回っていて、それで…?
兎に角、気が付いたら此処に居てアシュレイを応援する謎の一団に加わっている。
知り合いのやたら多い謎の一団である。
つーか親父にロッソ…???
「所で今更だけどこれってなんの集まりなんすか?何でアシュレイ観てんの?親父なんで生きてんの?」
「ここは…守護者たちの集まる部屋だな。古今東西の強者たちが集められている。ある一定の強さ以上に達した物は死ねばここに来るのだ。人族も魔族も沢山おるだろ?」
そう言われて周りを見ると強そうなのばっかり。俺がまだ見たことない人やモンスター、それに…マンモスの野郎と水龍もいるじゃん?あいつら守護者だとか言ってたけど…?
「ここに来た者の娯楽はこの『もにた』とやらしかないのだ。これをみるか試合でもするかしかないからたがいに試合って鍛えておる者も多い。まあ鍛えてもレベルは上がらんから技術だけだがな」
「確かに強そうな人ばっかりで……あれ?でもみんな死んだ人じゃ?あれ?俺??」
「しかしこ奴は自分の事になると鈍いのう…父に似たのか?おぬしは儂の後継者としてこれか「かいとちゅわああああん!会いたかったわ!!」「んほおおお?」ら…もうええわ」
大魔王様と話してたらとんでもねー美女が飛びついてきた。
知ってる人か?
つーか、肖像画で見た顔と同じだ。
「…母上?」
「そうですよ。私のカイトちゃん。大きくなったわね。でも母上じゃなくってもうちょっと、呼び方があるんじゃないのかしら?」
「ええ…おかあさん?」
「ブー」
何なんだ一体。
周りを見ても誰もヒントはくれない。
あっちで誰か知らない人が申し訳なさそうな顔をしているだけだ。
さっきまで抑えててくれたんだな…
「ええーっと…?…ママ?」
「ピンポンピンポーン!大正解でーっす!貴方のママですよ!ああ、この日をどれだけ待ち焦がれたことかっ!あー、もう死んでもいい!」
突然の熱い抱擁。
胸圧がすごくて息が出来ない。
大きなおっぱい様だが、嬉しいとか気持ちいいとかは無い。
純粋に苦しいだけだ。
「お主はとっくに死んでおるぞ、それよりな、カイトはこれかr「(うるっせえなクソジジイ…)あらそうでしたわね。オホホ」…。」
俺にしか聞こえない小声で黒いことを言う母上。なんだか色々テンションが高くてヤバイ。
大人しく人形みたいに扱われておこうって気分になる。
アシュレイの映るテレビに集中したいけどとてもそうはさせてもらえない。
色々話しかけられて『ああ』とか『ハイ』とか『ソウッスネ』なんて相槌をうつ。
外野がワチャワチャしてる間にアシュレイと伯父上の戦いはクライマックスだ。
アシュレイが伯父上の動きを模倣し始めると、あっと言う間に追いついた。
さっきまでは猛牛と闘牛士のような戦いだったのに、今は同じ流派の達人同士の戦いになっている。
違うのは得物だけ。
そう。
どんな相手にもあっと言う間に追い付いてしまえるのだ、アシュレイは。
「さすがクソチート野郎…」
「うーむ、凄いセンスじゃな。じゃがこうなるとアークトゥルスには厳しいのう」
「ですが、子に自分の技を伝授できたのです。アーノルドからすればこれほど嬉しいことはないでしょう」
「それを言うとお主はカイトにロクに技術を伝授できてはいないような気がするが…」
「儂とカイトはタイプが違いすぎますからなあ…」
親父と大魔王様が仲良く話している。
そうこうしているうちにテレビの中のアシュレイは伯父上の砂を袋に詰め、歩きはじめた。
「さて、次は…おう、お主が選ばれるのか。不思議な人選じゃな」
「では行ってまいります。カイトちゃん待っててね~」
「あ、ハイ」
母上は光に包まれ消えていった。ちょっとホッとした。
少しすると、すぐ近くに同じような光が現れて伯父上がこの空間に帰って来た。
「おつかれ」
「おつかれ様じゃの」
「ただいま帰りました。お、カイト君。アシュレイを貰ってくれてありがとうね」
「あ、はぁ…」
「いやあ、強くなっちゃってもう感無量ですよ。もう大魔王様にも勝てるんじゃないですか?」
「今ならまだわしが勝てると思うがな…90層まで来たらもう危ないとは思う。ありゃ酷いわ」
やんややんやと感想戦が続く。
俺は一人ぼんやりとその話を聞いていた。
一体何なんだこの空間は…?