何事も使い方次第
俺たちの授業はいつものようによくわからないまま終わった。
マナト先生はいつものように魔王様に報告に。
俺とアシュレイはその辺で適当に遊んでいる。
将棋モドキのボードゲームをしたり、隠れんぼや鬼ごっこをしたり…もっと他に同年代の子供がいないかな?こいつと鬼ごっこすると足の速さのせいで俺ばっかり鬼になるんだけど。
後は文化的に読書をしたり、絵を描いてみたり…城から抜け出して釣りをしたり。
『魔王様』に報告を、と言っても魔王様はアシュレイの親父で俺の伯父さんだ。
かーちゃんたちが姉妹で、アシュレイの親父はこの辺の魔王で、俺の親父はその右腕?っぽい感じ。
そしてアシュレイに似たイケメン…って言い方はおかしいが、とにかくカッコいい魔王様とその横にいるスラッとした美女が魔王様の奥方、つまり俺のかーちゃんのお姉ちゃんだ。
『この辺の魔王』という言い方をしたが、この世界は大魔王と神がそれぞれ僕たる魔族の王と神族の王を使って争っている世界…という設定。
んでアシュレイは親父の地盤を継いで魔王になる…んだったかな?
じゃあ本来のカイトはどうなるんだ?
ゲーム内ではカイト・リヒタールはアシュレイ・アークトゥルスに仕える貴族の身分になると思うんだが、何故か離れた土地で独立していた。
その辺の背景はよくわからない。
ゲーム的な演出、と言ってしまえばそれまでだが、普通は一緒にいて配下の武将みたいな扱いになってるはずなんじゃないの?
まあとにかく、今の所は魔王城の一つである『アークトゥルス城』の中で俺たちは暮らしている。
親父が領地である『リヒタール領』に帰るときは大体くっついて帰るけど、そうじゃなきゃこっちで一緒にいることが多い。俺はお城の方が本が多いから好きだ。
今日授業の時間に読んだ古文書には、魔王軍が人間を圧倒していた時代のことがかかれていた。
具体的にはその時代の軍事についてだが。
当時は兵糧は勿論、矢や剣などの補給も各自が襲った村々で調達するって酷いものだった。
元の世界でも割と昔は普通だったことなのだが、そりゃあ襲われた側はたまったもんじゃない。
根こそぎ食い物を奪い、進む。
まるでイナゴの群れのような行動だ。
襲われた村々は餓死待ったなし。
恨みを買って後の統治に影響が…なんてレベルじゃないのだ。
案の定というかなんと言うか、途中から人間側の反抗作戦がエライことになってきたらしい。って所まで読み取れた。
そもそも古文書の内容は日記的なもので、あとは隅っこの細かいところに今日の兵はどこそこへ行っただとか、上官の不満がとか。そんな内容だった。
んで親父たちはワイワイと話しながらメシの時間は終わり。
メシの時間は魔王様と親父と一緒に今日の授業について話した。
「何事も使い方次第だと思うぞ」
「カイトちゃんは誰かさんたちと違ってすごく頭がいいから大丈夫よ!」
王妃様がそう言うが、誰かさんたちってだれの事?
アシュレイは頑張ってるし頭の回転速そうじゃん?
…ああ、そこの脳筋親父と脳筋と仲のいい魔王様の事かあ。
その二人をちらりと見ながら俺も一言。
「何とかとハサミは使いようですか」
「カイトちゃんは良く分からない言い回しをするのね。まあ、あらゆる道具は使う人次第。カイトちゃんが樹魔法は使えないと決めつけなければいくらでも使い方を思いつくわ」
「うーん。」
「家でも作ればどうだ?」
悩んでいるところでアシュレイが話しかけてくる。
家か。ふむ、悪くない。
というかなぜ建造物に使おうと思わなかったのか。
戦闘でぶっ放すことばかり考えていた。
柵やら塀やら、何なら門だって木で作れる。
家だってレンガや石積み部分以外はほとんど木だ。
「家なあ…魔法で作った家ってどうなの?消えない?」
「試してみれば良いじゃないか?庭に小さな小屋でも立てて、実験してみよう」
「そうだな。」
それで建物が残るなら悪くない。
建材に出来るとなれば売り物にもなるかもしれん。
使えない使えないと思ってた樹魔法だけど、矢が当たったところに木が生えるなら、それを使えば敵の足止めにはすごく使えそう。
アロー系魔法は強くなると無数に、まるで雨のように矢を降らせる魔法がある。
その一本一本から木が生えたら…歩く分にはすごく邪魔になるけどまあ歩けるが、馬車の通行には邪魔でしょうがないな。
足止めには使えそうだ。樹魔法、いいじゃないか。
でもまあ敵と戦うなら爆発とかの方が楽だな。
やっぱり樹魔法なんて足止めくらいしか使えないんじゃ……ああ、でも爆発で道を塞げば倒木なんかより簡単に足止めできる。
それに水を大量に用意してもいいし土で壁とか崖を作ってもいい。
竜巻なんかが発生してたら近寄る気も起きないだろう。
樹魔法で作った倒木?そんなモン切ればいいじゃんでおわる。
ついでに薪になって丁度良いってな有様だ。
…やっぱ樹魔法使えねえ。
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