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アシュレイ戦記⑦


久遠の塔 75層



カイトが知人と出会ったと言っていた層だ。

誰かと聞くとやはり喋れなかったようだが…

私の場合は誰なのだろう。


少しドキドキしながら門を開けて中に入る


「たのもーう!」

「ピピピ!」


バタンと扉を開けて一声。


「お待ちしておりました」

「ぬ…お主はロッソではないか。久しいのう」

「お久しぶりでございますな、姫様。お元気そうで何よりです」

「うむ。」


そこにいたのはロッソだ。

何故こ奴が?先日戦で死んだとは聞いていたが…


「ふむ、なぜ私が選ばれたかはよく存じ上げませぬ。ですが、ダンジョンのシステムとして近親の縁者、もしくは幼少時からの知り合いが選ばれることが多いようですな。勿論死んだ者、戻る見込みのない者、ある程度の強者である…という条件が付くようですが」

「ふむ。良く解らんが是非もあるまい。さあ、仕合おうではないか」

「姫様も腕を上げられたでしょう。楽しみですな…いざ!」

「征くぞ!」


それはとても楽しい時間だった。

先ほどのドラゴンの時もそうだったが、全力での戦いは愉しいものだ。


全力で突き、払い、斬る。

ロッソは素手であったが闘気を全身に纏い、私の攻撃をある時は正面から受け止め、ある時は捌いて受け流す。


ロッソの攻撃も私に伸びて来るが、それを見切り、躱す。

やはり巨人族であるロッソはパワーに溢れ、防御力も高く。

そして一つ一つの動作はとても速い。


だが、大きさは力とスピードを産むが…至近距離での切り返しや回転にやはり難がある。

そこを突き、チクチクと攻撃を重ねる。

身体の大きさは基本的な力や速度を大きく伸ばすが、それが全てではないのだ。


小さな攻撃を重ね、産まれた隙に。


「どりゃああ!双竜突き!」

「ぐお…!おほお…あぁ…」


上下二段の突き。

本来なら頭部と腹部の二段突きだが…腹部と股間の二段突きになった。

苦しむロッソは青い顔をして出してはいけないようなうめき声を上げている。


とてもやってはいけないような攻撃になってしまった気がするが、仕方ない。

コイツが巨人族なのが悪いのだ。


「ぐお…姫、そこは…」

「すまぬ。何だか昔より大きくなった気がしてな。目測を誤ったのだ。成長期か?ロッソ?」

「そんな、訳…ないでしょう…ぐうう」

「ピッ!ピピッ!」


ヴェールがロッソの上を飛び回り、金の粉を振りまく。


「うぬぬ…ああ、ずいぶん楽になった。すまぬ、金鋼甲虫王(ゴルドリオン)殿。しかし貴殿に回復能力があったなどと…」

「ピピッ」

「ああ、主人に合わせて覚えられたので。何とも器用な」

「ピピー!」


何だか胸を張る金甲虫。

よくわからないが顔色の戻ったロッソと会話が成立している。


うむ、やはりコイツは役に立つではないか。

戻ってからも可愛がってやらねば!


「よし、続きと行こうか」


楽しかったのでもう少し遊ぼう。

そんなつもりで声をかけたのだが。


「ふむ…もっと遊びたいとも思いますが、此処までのようです。私は心の中で負けを認めてしまったようですな」

「なに…?」


サラサラと崩れていくロッソ。


「姫様、どうかご武運を。カイト様をよろしくお願いいたします」

「待て!ああそうだ…ロッソよ、私はもう姫ではない。私はカイトと結婚したのだ!」

「おお、左様ですな。では奥方様、何卒カイト様をお願いします…おさらばです」

「おい!待てロッソ!まだ話は……話は終わっておらぬというのに…」

「ピピ…」


ロッソはさらりさらり…と砂になった。

まだまだ話すこともあったし、報告すべきこともあったというのに。


「はあ…進むか」

「ピッ」


ロッソの砂を一掴みバッグに入れ、進む。

感傷に浸っている暇はない。恐らく人間たちが攻めてきているのだ。

ダンジョンに入ってすでに3日経った。


という事は外では早くても30日程度は経っているだろう。

80層までこのまま行けるか。

正直に言えばさすがに休憩したい。

戦いの高揚で誤魔化してはいるが、疲労が抜けていない感覚はある。


「このまま一気に行くしかない…か」


これまで聞いた、或いは体験した法則性を私なりに考えると。

80層では恐らく父上に会う事になるだろう。

そこで父上を倒し、カイトを蘇らせるのだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] アシュレイの一撃を股間に食らうとか 一息に殺せー、という奴だな
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