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閑話 アフェリス戦記①

アーク歴1509年 弐の月


アークトゥルス魔王領

アフェリス・アークトゥルス



カイトが死んだ

そうマリラエール様に聞かされても、誰一人として納得できるものではなかった。

だが状況はそんなものを置き去りにした。


<ヒエルナス・エル・ラ・アウラルアにより『聖神・ソラナム』が召喚されました>


年が明ける直前くらいに、恐らくすべての人々に天の声が聞こえた。

良く解らないが、人間の教皇の手によって神様が召喚されたらしい。


その瞬間から体が少し重くなった気がする。



そうして年が明け。

戦争が始まった。


多くの魔族は何が起こったか分からないまま、重くなった体を引きずって戦いに挑む。

マークスさんはカイト様の訃報を聞くと同時にリヒタールを守りに行った。

『城壁と城門をさらに強化し、柵と堀を新たに作り…やれることはたくさんあります』と、明らかに闘いを予感しての物だった。


アカさんはマークスさんと一緒に先行してリヒタールに入っている。

マークスさんがアカさんを上手く操って戦ってもらうというという予定のようだ。



そして私は…私たちも出陣する。人族に対抗するために。


「で、では…ま、参りましょう。皆さん、こ…この魔界を守ってください。傷は、わ、私が治します!」

「アフェリス様…行くぞ皆の者!出陣!!!」

「「「おおー!」」」


アークトゥルス騎士団の面々と供にリヒタールへ出陣する。

と言っても列車での出陣だ。

荷も鎧もすでに別便で運んでいる。


兵の中にはまるで旅行をするようなものだ。と言っている者もいる。

強がっているが内心の不安もあるのだろう。


そんな兵も、将軍たちも大人しく列に並んで列車に乗り込む。

押すと危ないから絶対駄目だとカイトがしつこく言っていた。

だから、荒くれものの兵達もこの時ばかりは大人しく列に並ぶのだ。


荒くれ者たちが大人しく、賢く並んでいるのは他にも理由がある。

体が少し重いのだ。

私を含めて皆、以前より体が重そうにしている。

軽々としていた鎧がやや重く、歩くと肩にまで重みが来る。

私の軽い鎧でもそう感じるのだから、重鎧を着ている者は余計ひどいだろう。

だがこれには慣れていくしかない。


『天の声』が聞こえた後で、試しにヴェルケーロでシュゲイムさんとマークスさんが戦ってみたようだ。

結果として少し以前より苦戦していたが、マークスさんが勝った。

ところが、魔眼の勇者であるリリイさんと試してみるとリリイさんが圧勝したと…

『母は強しですな』とマークスさんは苦笑いしながら言っていたが、やはりショックは隠せないようだ。


これはつまり、勇者相手だと魔界屈指の強者であるマークスさんでも敗れる可能性が高いという事だ。

以前はリリイさんと模擬戦をしても勝ったり負けたりするくらいの差だったらしいのだが…


今回、どう考えても攻め寄せる人族連合には勇者がいる。

母上もマリラエール様もそう言っていた。


私が先行して進むのはマークスさんが勇者と戦うとき、マークスさんを支えるためだ。

傷を負っても回復し、強化魔法をかけることで対等の勝負に持ち込むために…。

果たして私にそれが出来るだろうか。


「姫様、そう緊張なさいますな。なあに、リヒタールは防衛が強化されております。それに、時間を稼げばアシュレイ様やカイト様も合流なされるでしょう」

「そ、そうだと、思い、ますけど…」


アシュレイ姉上はカイトを蘇らせるために塔の試練に挑戦している。

姉上なら、何の問題も無いだろうと母上もマークスさんも言っている。実際に80層まで登った二人が言っているのだ。二人とも自分の思う願いは叶わなかったとも言っていたけど…


「姉上…お願いします」


早く、なるべく早くカイトを。


おそらく私たちは負ける。

何度も見た、リヒタールが再び炎に包まれる光景。そしてアークトゥルス城も…


私達は負ける。だが、被害は最小限に留める。

それこそが私の役目だ。

間でチョコチョコ閑話を挟むのは本当はそんなに好きじゃないのですが、時系列やら何やらを考えてこういう形にしています。

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