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アシュレイ戦記⑤

久遠の塔62階層



この程度の階層に通常出現するモンスターなど今の私には相手にならない。

が、それでいい。

60層の火山地帯、そのモンスターたちは新しい武器にとっていい練習相手だ。


「フン!ハッ!シャアアアッ!」


突く、斬る、打つ。

素晴らしい。

先端はともかく、丸いフォルムなので斬る能力は期待していなかった。

だがそれは私の間違いだった。


斬ろうと思えば斬れる。

打とうと思えば打つ。


不思議なことだが槍が私の意志を読み取り、斬撃と打撃を自在に使い分けている。

勿論私も『斬る』動作はしている。当たった瞬間、刃を滑らせて引きながら押しつける…のだ?

言語化するのは難しい。

だが、得物を肉に乗せてそのまま引いてもごく表面しか斬れない。ある程度押し付ける力が必要になる…で合っているよな?まあ難しいことはいい。とにかく斬ろうと思って斬る動作をする。そうすると三角錐のような牙が見事に刃物に変わる。斬れてしまうのだ。


そして叩き潰そうと思えばきっちりと打撃を与えてくれる。勿論、牙が欠けたりへこんだりすることはない…便利な武器をもらってしまった。ありがたいことだ。


良い武器だと思えばそれにふさわしい腕前にならなければならない。

どうするか、実戦練習あるのみである。


空に飛びあがり、上段から鳥型モンスターを叩き潰し、熊を逆袈裟に斬り、獅子の目から入った刺突は後頭部を突き抜けた。円錐の形に傷を広げながらだ。


「円錐型…円錐の体積…!?ウッ頭が…」

「ピピーッ!?」


円錐の形を見ていると嘗ての授業を思い出す。

カイトは『こうするんだよ』と言いながらホイホイと解いていたが、円錐の体積など意味が分からない。

そんな物を知ってどうしようというのか。

いったい何の役に立つというのか。

そんな事を考える奴の脳味噌に円錐型の穴をあけてやればよいのではないか。ぐぬぬ…


「ピッ!?」

「む?」


思い出してイライラしていると、突然私の頭に金色の粉を振りまく甲虫。

何だ?と驚くと、気分が幾分か楽になったようだ。

体力回復の作用でもあるのだろうか。


「すまぬ、気を遣わせたな。何でもないのだ」

「ピッピッ」

「ふむ…楽になったようだ。さあ進もう」

「ピピ?」


本当に大丈夫?という風なしぐさに見える。


「大丈夫だ。問題ない。」






64層までは火山、それに対して65層以降は氷山が聳え立つ極寒の地だ。

勿論、以前にここを通っている私は準備をキッチリしてきている。

カイトの持っていた水龍の鎧は冷温の両方に対応しているが、私の使っている獄炎虎の毛皮を用いた革鎧も軽くて強く、当然のように冷温両方の環境に強い。だがまあ少し寒い感覚はある


「少し冷えるが…お前は寒くないのか?」

「ピピ?」


昆虫は寒い所では活動が活発にならない…のではなかったか?

昔、カイトと虫を捕まえに行った時、冬にはカブトムシは幼虫になって土の中で暮らしていると聞いた。

マナト先生に聞いてみてもやはりそうだったらしい。


だがこの甲虫は元気いっぱいだ。

短時間なら大丈夫なのだろうか?

それともダンジョンの魔物だからか?…分からない。

分からないが、この金色のカブトムシ(ヴェール)は何の問題もなさそうに極寒の地を飛んでいる。


不思議な事も有るものだと考えればよいか、ボスモンスターなのだから通常の虫とは違うと考えればよいか。ふーむ。


「まあ良いか。」

「ピッ!」


この付近の階層は暑かったり寒かったりする事を除けばどうという事は無い。

良い槍の練習相手だ。


両手持ちで、片手持ちで。

右手で左手で…左右の持ち替え、足の位置の入れ替え。

構えを上中下段、或いは右に左に斜めに。


様々なスタイルを試す。

試した中で良い物を模索し、煮詰めていく。


難しい。

やはり自然体の中段がバランスが良いかと思うが、上段からの打ち下ろしもたまらない威力だ。

下段はセオリーからいうと一段落ちるが、撥ね上げてからの打ち下ろしも良い。ううむ。難しいな。


「おっと…これはいかんな。ふふ」


槍と遊んでいるうちに70層に辿り着いてしまった。

さあ、ボス戦だ。

カイト「なんだか急に悪寒が…」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] あれ?虫がついてきたらソロじゃ
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