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蝗害

少し短めです。あんまり長くても悲壮感と鬱々しいシーンばかりなので…

アーク歴1508年 玖の月


アークトゥルス魔王領



最悪な事にコッチにもイナゴが来た。


人間界の北の方、国主が死んで代替わりでゴタゴタしているという噂のあるタラモル国を荒らしまわったイナゴはガクさんの領地を通り、さらにドレーヌの所へ行ったらしい。

タラモルは酷いことになる。天災と人災がきれいに重なってしまったのだ。

これで当分悪さできないなとみるか、かわいそうにとみるかは微妙なところだな…

夏の収穫はすでに終わっているし、秋の収穫も急がせるしかない。冬の野菜は…厳しい。

タイミング的には最悪の一歩手前くらいか。


そしてこれからのためにと新しく作っている炭鉱街にもイナゴは来たようだ。

師匠の名前でイナゴの大軍を見かけたら空に火魔法ぶっぱしまくれ。魔法が使えない奴は網で捕まえて踏み潰せって命令が出てたので、お祭りのような大騒ぎになって皆でイナゴを追い回した。


勿論楽しいお祭りではない。

悲壮感の溢れる祭りだ。


ガクルックス魔王領でも迎撃したが、一体何千万匹、それとも何億匹居たのかさっぱり数は分からない。

タラモル国とガクルックス魔王領の間には人が通れないほど険しい崖路しかない。

それと広大な湖、そして海だ。


でもイナゴにそんな物は関係ない。空を飛んで崖路に点々と生える草をすべて刈り取り。

ガクルックス領に殆どない畑を、樹木を丸裸にした。

俺たちも報せを聞いて鉄道ですぐに迎撃に向かい、昼夜を問わず虫退治をしたが…

鍛え上げられた俺たちが、たかがイナゴ相手にやられることは無いが…だからと言って飛来するイナゴをすべてを倒すなんてことは不可能だ。


ガクルックス領の、見えている緑は全部消えたと言って良い。


全数を半分ほどは減らしただろうか。

イナゴは今度は炭鉱街へ。

新しくできた炭鉱街に植樹した樹木は全て刈り取られた。


勿論畑も、野菜も道草も。

そんな物は関係ない。


迎撃のために出撃していた者たちを置いて、イナゴはさらに旅立った。


多少の怪我人は出たが嫌がらせの効果があったのかイナゴは一か所に長く滞在せずにあっちへフラフラこっちへフラフラ。数を減らしながら移動を重ねた。

そしてヴェルケーロ領にたどり着いて、収穫が終わっている麦畑を、これから収穫って所の田んぼを、まだまだ実が付いている夏野菜の畑を襲った。


勿論、畑を荒らすモノはそれが何であれ絶対に許さない。

皆ブチ切れてイナゴを追い回し、ついに群れを全滅させたと…


俺とアカとアシュレイもあちこち飛び回るイナゴを追跡しながら毎日火魔法をぶっぱしまくった。

ヘロヘロになって振り返った時に見たものは荒らされた畑に焦げた地面、夥しい数の食べられないイナゴの死骸だ。クソが…


「落ち込んでばかりはいられませんぞ」

「…分かってるよ。むしろ俺の仕事はこれからだ」


多少焦げているが、まだ死んでいない野菜たち。

踏み荒らされてもまだ元気のある稲。

葉っぱと果実を齧られた木。


それらに気絶するまで魔力を分け与える。

毎日だ。

朝起きて、回復している分を畑に。

昼、少しでも回復した分を稲に。

夜。俺より元気のない果樹に…


本来の収穫の何分の一かでもいい。

皆が冬を越せる程度でいいから。

どうか、実りをつけてくれ…

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