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冷夏


アーク歴1508年 捌の月


アークトゥルス魔王領



「また冷夏か…」

「冷夏の上にあちこちにイナゴが出ているようだぞ」

「マジかよ。バッタくらい魔法で焼けばどうなんだ」

「イナゴだ。虫も焼けるが麦も一緒に焼けるようだな…」

「それはイカンな…でも放っておいてもな…」


イナゴに国境なんてものは無い。

人族の領地も、魔族の領地もない。


気が向いた方に、風が向いた方に飛んで行き…悉く総てを喰らい尽すのだ。まさに天災そのものである。

どうせ食われるなら畑ごと焼いた方がマシかとも思うがそれも忍びないものだ。でも焼かなきゃ他所に行くし、でも食われてない麦もあるだろうし…ぐぬぬ。


今、俺が出来るのはこっちに来ないように祈るくらいか。

網を作るくらいはしておくか…とても取り切れないだろうがやらんよりはマシだろう。



暑い夏の盛り、ようやくアシュレイがダンジョンから帰って来た。

コイツとアカは一気にレベルが上がったっぽいな。もうペアで89層をクリアして90層を目指している。

なんすかね、俺の時と違ってペース早すぎないっすかね?

アカが育ってるからだよな?そーだよな!?


「コイツの方がカイトより強いぞ!」

「うっせ!わーってら!」


アシュレイが強いのは分かってる。だからそれはいいのだ。

そんな事よりもまた冷夏だ。

エアコンが無いと過ごせない日本の夏とは大違い。

寒くて寝る時に毛布を引っ張り出したくなるような日が続く。まあ毛布はちゃんと引っ張り出した。


魔族の皆さんは寒暑にある程度耐性があるようで、暑くても寒くても軟弱な事を言わないが俺は無理。

寒い時はすぐにお腹が冷えてピーピーになるし、暑いとへばって動けない。

惰弱なッ!って感じであるが暑いんだからしょうがないじゃないか。


…暑いんだからしょうがないと言いたいが、問題は今年の夏もそれほど暑くないという事だ。

それはそれで困った。

3年連続の冷夏だ。

今年もあちこちで収穫は不良だろう。


今年からリヒタール地方とアークトゥルス地方でも稲作を始めた。

コッチの方が気候的にはかなり暖かいから有利だとは思う。

もともと、ウルグエアルさんモノだった土地はリヒタールよりかなり寒い。

おかげで昨年も一昨年も出来は不良だったようだ。

というわけでこちらでも稲作をする。

新田開発は大変だし、やっとできるようになってきたのに…と思うが、土地を継げなさそうな次男、三男辺りの希望者を呼んで移住させ、開発していくことになった。


もともと少し寒い土地で育つ品種なんだから多少の冷夏でも問題ないだろ、と思って育てていたがまあ少し生育が悪いか?と思う程度で概ね問題なさそうである。


後は蕎麦とか稗粟とかをまたいっぱい植えないと。

ヴェルケーロはどうだろうか。マークスに任せておけば問題ないと思うが…


「気になるから見に行くか。アカもいるし」

「よんだか?」

「アシュレイ連れて3人でヴェルケーロに行こう。そうしよう」

「おー?」

「私は良いが」


と言う訳で伯母上にサクッと許可貰って出かけた。

伯母上にはヴェルケーロに行ってきまーっす3日くらいで帰りまーっすってその程度の挨拶だけだ。


師匠が頑張っているであろう大魔王城…を完全に素通りし、ヴェルケーロ領へ。

途中でシュゲイムたちのいる村…もう町やな。町に寄って後で領主館裏にこいや!と声をかけてヴェルケーロへ。


領主館前に降りたらマークスを筆頭にお出迎えが。

何でこいつ等準備万端なのか。素晴らしいけどちょっと怖い。


「アカ殿が見えましたゆえ」

「どこから見てんだ??」


どう考えても姿が見えてから用意して館を出ました、じゃ済まないくらい準備万端と言った感じである。疑問に思った俺が聞くと。


「失礼、ご当主様の気配がしましたゆえ」

「どうなってんだお前は…」


ゾッとするような答えが返って来た。ストーカーか何かか。

まあコイツにまともな良識やらその他を期待するのは色々難しい。

おかしな行動をするのは仕方ないと思ってあきらめよう。


「ご当主様にそう仰られるとは心外ですな」

「どういう意味だよ…所でこちらの状況はどうだ?」

「はい、おおむね順調と言った所ではありますが」

「ありますが?」

「山向こう、エルトリッヒ方面にイナゴの群れが押し寄せているようです。こちらにも来るかと」

「…マジか」


リヒタールの方に来るかと思ってたけどそうか、コッチに来たか。


「シュゲイム達も呼んである。皆が集まり次第会議にしよう。ところで、俺は腹が減ったんだが」

「心得ております。ご当主様、奥方様、アカ殿こちらへ…」

「おう」

「奥方様…」

「おー!」


コイツにご当主様と呼ばれるのは慣れないな、と思っている俺と奥方様と呼ばれて照れているアシュレイ、それに平常運行のアカ。

3者3様だが共通しているのは無意識にマークスに従っているという事。

従うというより…子供の頃からの当たり前の習慣のようになっている。

冷静に考えたらそれもどうかって感じだなあ。



マークスは1年でカイトの執事に戻ろうと思ったのにまだ戻れなくて、カイト成分が足りなくなって少しおかしくなってきています。しょうがないね。



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― 新着の感想 ―
[一言] 飛蝗に火炎放射したら焼けたイナゴが出鱈目に飛び回って大惨事になったとか やるなら瞬時に灰になる火力で
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