禁断
アカに乗ってのんびりとアークトゥルス領まで空の旅をする。
休憩を挟みつつ、およそ半日ほどかな?急げばもっと早いが。
すっかり大きくなったトラックサイズドラゴンは4人乗っても大丈夫だ。最初に作った鞍と鐙なんて全く長さが足りない。大きくなったもんだねえ。
大きくなると安定感も違う。
初めて乗った時はいつ落とされるかヒヤヒヤして、おまけに風はパナイわ寒いわで景色なんて全く見る余裕がなかったが、今やほとんど揺れもない。
ファーストクラスでお空の旅である。
お金めっちゃかかりそう?いえいえ、アカ交通はタダなんです!
まあその分普段の食費はかなりかかるようになったが…
「ところで、大魔王城には寄らなくていいんですよね」
「いい」
「書類仕事がめっちゃ溜まってそうですねえ…」
「うぐ…一度マークスを貸してくれないか?」
「幾らなんでもそれは無理でしょ。マークスが過労死しますよ」
マークスは今でもうちの領内の殆ど…まあほぼ全てを取り仕切っている。
いい加減文官育てないと、と思うのだが…うちで学校を出た奴は研究者というか興味を持った分野を極めようとするやつが多い。でもこの世界でまだ分子生物学とか早いと思うんだ。自然科学とかにしようよ。
つーか、それよりマークスの補佐官をやってほしいんだけど…俺の適当に決めた授業内容が悪かったのか、理系の奴ばっかり増えて文系の道に進む奴が少ない。
文官コースとか作ろうかな。
各国の歴史なんかも学ばせてあちこち派遣しても良い。
人間界を統治する日が来るかもしれんと考えたらこれは必要な処置だ。うーむ。
シュゲイムのところの人間、その子供たち用の学校も作るか。
というか魔界全体に学校を作ろう。
歩いて通える程度の小学校、ある程度纏めた中学校…それとエキスパート向けの大学かな。
大学は大魔王領の…まあ大魔王城の近くに作ればいいか。あそこはなんだかんだで魔界のど真ん中に近い。そうするのが自然だ。
出来れば魔族と人族の教師は同程度の割合にしたい。
そうすることでお互いの考え、価値観の違いを学べるから…うーん。でも難しいかもな。
どちらも種族差別は勿論あるが、その上でさらに身分による差別がある。
同じ学校で人間の平民と魔族の貴族、あるいはその逆の組み合わせが上手く勉学に励めるだろうか。
ぜーーったい喧嘩になる。
それも程度によるとは思うけどさあ…
でもまあいい年になってから初めて『はい、隣の子と仲良くしてね!』をするよりは、小さなうちから喧嘩しながらも徐々に仲良くなっていった方が良いだろう。
「…おいカイト、カイト!?」
「ん?どうした?」
「もう着くぞ?」
「…おお、そうか」
「またねてるのかと思ったぞ!」
「気のせいだろ。お前と飛んでて寝たことなんて…まあ有るな。」
「あるぞ!」
まあ有る。
割と何回かある。最近は安定感もすごくなってきて、おまけに風魔法で寒さや風圧を防いでくれるようになった。おかげでポカポカしていい感じのゆらゆらで…まあ眠い。
「カイトもつがいいっぱいになったな!おれもそろそろつがいがほしい!」
「んんん!?…まあそうかもな。お前はどんなメスが好きなんだ?」
「やっぱり強くて、やさしいのがいいぞ」
「ふーん…?」
強い、が一番に来るのか。
その次が優しい…まあ普通やな。
ドラゴンの好みは良く解らん。見た目とかは良いんだろうか
「顔とか見た目とかは無いのか?」
「カッコイイのがいいな!」
カッコいい女の子、つまりはクール系美少女か。分かる。
女の子らしい、可愛い感じとはまた別の魅力なんだよね。分かるわ~
うんうん、ドラゴンでクール系という事は水や氷属性のドラゴンだろうか。
火と相性がいいかと言えばどちらかというとアカがいい感じで尻に敷かれそうな…まあ暴君みたいになるよりはいいだろうか。
などと一人考えていると。
「ほう、カイトの趣味はカッコイイ女か」
「私はカッコいい系だろうか?」
「あ、姉上は、カ…カッコイイと思いますよ!」
「そうか?アフェリスは相変わらず可愛いな。」
「姉上…」
可愛いと言われて赤くなるアフェリス。
おや、こんな所に禁断の百合の花が…!?
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