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ご領主様の華麗なる日常

辱めにあったような朝食を終え、領内の巡回に出る。


外壁は新しく作り直されており、さらにその外側、山の斜面部分と反対側の麓部分もガンガン開発していくようだ。

しかし、こいつらはなぜこの土地にこだわるのだろう。

どうせなら平地の田んぼいっぱいの所をもっと開発すればいいと思うのだ。アッチの方がはるかに住みやすいと思うのだが…



まあそれはいいか。

俺はそこのところはあんまり考えないようにした。

新しく都市を作るとすればまずはその立地を決めるところから始まる。


既存の土地を使うのが楽かなとは思うが、その場合は地権者がうるさい。

立ち退かせる場合はさらにうるさいだろう。

碌な事は無い。


なら山の中をガンガン開発していくってのも悪くない。

建築資材はその辺にゴロゴロしているし、むしろ良いかも知れん。そういう事にしとこ。


「これが劇場か。悪くない。」

「初回公演の日程も先ほど決まりました」

「ほー。いいじゃん。ガンガン演ろう。お客さん満タンにしないとな」

「はい。初回公演はご当主様も観られるともう街中に触れ回ってありますので…」

「まあしょうがないんじゃないの?」


俺の街に俺が作れと命じて作った劇場の初回公演だ。

たぶん帰ってくるのを待ってたんだろうし、なら観ないとも言いづらい。


「ようございました。演目は『領主は辛いよ』『ダンジョンバカ日誌』『魔剣士カイトの華麗なる日常』『ヴェルケーロ八犬伝』…どれにしましょうか」

「どれも却下だろ」

「畏まりました。予定通りにご当主様のこれまでの歩みを描いたものに致します。」

「おいやめろ」


またマークスが変な事言ってらと思いながら果樹園に行って魔力を大量にばらまいた。

おかげで育ちの悪かった木は大きくなり、元々育ちの良かった木は実をつけ始めた。

暖かくなってきたとはいえ、何かいつもより展開が早い。


昼頃になり、果樹園や畑を見回って魔力をあっちこっちにばら撒く作業が一段落した。

そこで俺はアシュレイたちとともに劇場に行く羽目になった。


俺が甘かった。

マークスにやめろと言っても止まるはずがなかったのだ。

初回公演当日、アシュレイと師匠に両脇を囲まれた俺はマリアに着たことが無いようなピカピカの服に着替えさせられ、半強制的に劇場に連れていかれ。

観劇する羽目になった。



劇の中身は勿論俺の話だ。

子供の頃の日常からその崩壊、ヴェルケーロに来てからの苦労話や防衛、ダンジョン攻略シーンまで。どうやって調べたのかと思うほど細かく再現されていた。


かと思えば要所要所でうまく脚色してあって。

おれは領民のために粉骨砕身頑張ってるし、アシュレイを取り戻すために必死に努力しているし…そしてなんといっても主演の俳優、言うのも恥ずかしいがカイト役のイケメン男性の迫真の演技もあって会場は絶賛の嵐だった。


「うう…カイト、頑張ったのだな」

「おお…まあ、な?」


アシュレイは俳優の努力、苦労を見て涙を流していた。

かと思えば。


「あのボンヤリしたカイトがこれほど立派に…う、うッ…良かった。良かったなあ…」

「師匠!?」


まさかの師匠もガン泣きだった。てかボンヤリ!?俺そう思われてたの?

えええ!?と思って振り向いた先にいたマークスはめっちゃいい笑顔だった。


「素晴らしい出来でしょう、アシュレイ様、マリラエール様。」

「ああ。凄いな」

「主役の演技も素晴らしい」

「そうでしょう。彼はユグドラシル王国から行商と一緒に流れて来た元吟遊詩人です。見た目と歌声の良さにスカウトしましてな。」

「なるほど~」

「へえ…ってお前そんなことまでやってたのか」

「いずれこういう機会があると思いましたゆえ。」


マークスは領で一番忙しい、と言っても良い程忙しく働いている。

俺がアイディアだけ出してほぼ丸投げしているからだ。


こういうと酷いようだが、まあ良いじゃないか。

俺は俺にしかできない事をしている。

食料生産の面でめちゃ頑張ってるのだ。

牧草だって初期は俺の魔力で養っていたのだ。


今はユグドラシルから貴重な樹属性持ちのエルフを雇い入れて手伝わせているらしいがからずいぶん楽になったらしいが。


でもまあ実際の話、山の方に開拓するのは限界がある。

高度が上がり気温が下がり過ぎるとまともな草も生えなくなるから、幾ら魔法を使っても牧畜も限界のラインが出て来るだろう。

やっぱり街を拡張するのは下方向に行くしかないな、どう考えても。


なーんてことをメシ食いながらマークスと話すとあっと言う間に内政が進む。

これでいいのかと思うほど優秀だ。

と思っていたのに。


「ご当主様も目標であったダンジョン攻略を終えられたのですからそろそろ領内の政を真剣に取り組まれるべきかと」

「それも良いが、魔界統一の話はどうなった」

「そろそろ母上にも会いに行きたいのだが」

「わ、私は…今のままで…?」


ふむ…

優先事項から考えよう。

今までの傾向から見るに、領内の事はマークスに超丸投げでOKだ。

マークスの方をチラッと見る。

うむ。問題ない。


「…丸投げでは困りますぞ」

「心を読むな」


『困る』という事は『大変だけどやればできる』という事だ。じゃあ問題ないな。


などと、どブラックな思考をしつつマークスに丸投げする。

なあに、親父の時代からこいつは丸投げされていたのだ。投げられ慣れてるだろうから大丈夫。

きっと受け身も上手いはずだ。


「ふむ、では伯母上の所へ行こう。アシュレイと…師匠とアフェリスも行きませんか?」

「ではそうさせて貰うか」

「私は…」

「あの嫌味な家庭教師はクビにしたそうだ。物理的に首になったかは知らんが」


伯母上はブチ切れていた。

だから首になったか、それとも串刺しにでもなったかは俺の知る所ではない。


「だからとりあえずお母さんに顔を見せてあげなさい。あー、お前が織った反物とか持ってけば喜ぶかもな」

「…じゃあそうする」


アフェリスは布を選びに行った。

越後上布ならぬヴェルケーロ上布は試行錯誤の末に完成を見た。

と言ってもまだチョイチョイ失敗はあるけど、出来としては問題なさそうだ。


絹糸は結局ユグドラシルで生産したものを生糸の状態でこちらに卸してもらい、染色して織る事になった。

綿花はヴェルケーロの山の中じゃ育たないから暖かい平地で栽培している。

でもそっちは田んぼや畑が順調だから態々綿花を育てなくても良いのでは感もある。

育ちもそれほど良くない感じだしな。リヒタールとアークトゥルス領で栽培を依頼しているからそっちからもらうのでいいかとは思う。綿花は運ぶのにめっちゃ嵩張るからイマイチだが…



まあでも魔界じゃ親父みたいに裸パンツが多い。

これはそういう代々続くトラディショナルなユニフォームかと思ったが案外そうでもないみたいなので木綿や麻の栽培は俺と仲のいい他領でもそこそこ増やしていっている…と言った所だ。

木綿栽培と言えば干鰯、って習った記憶もある。

海が近ければ肥料に良いらしいけど…なかなかそれをどこでもするというのは難しい。


干鰯が手に入らないなら干し肉じゃどうなんだと思うが貴重なタンパク源を奪い取ってまで綿花栽培か。となるのでそれもどうか。それを言えば干鰯もだが…あれは捨てるようなサイズを使うって事だから良いのか?


…などと考えているうちにアフェリスは布選びが終わったようだ。

大魔王様に献上した品にも一切劣らない。むしろあれから技術が磨かれてハッキリ言ってもっといい物になっている。俺から見てもすごいと思う。これが麻布か…

そんな物をお土産に持っていくのだ。伯母上もきっと喜ぶに違いない。


「と言う訳で行ってきます」

「行ってらっしゃいませ」


マークスはなにも文句は言わない。

俺は自家用車(ペット龍)に乗り込み、エンジンをかける。ぶるるんぶるるん!?


「じゃあ伯母上の所へ行くぞ」

「まかせろー!」


乗員は4人、俺とアシュレイと師匠とアフェリスだ。

うーん、これぞ正にハーレムパーティーである。

某RPGの3作目でいうなら勇者、戦士、魔法使い、僧侶ってところか。


中々バランスの良いパーティーだ。

砂漠に出てくる緑のカニ以外は楽勝だろう。

緑のカニがでてきたら『にげる』一択である。コレで何とでもなるだろう。


よし、冒険の旅に出発だ!

砂漠のカニはスクルト連打して来てホントもうさあ…って感じです。

あそこ行くときだけ魔法使いが欲しい。


ちなみに文中のPTは勇者アシュレイ・魔法使いカイトです。

男主人公のハーレムPTかとおもいきや、女三人の中にぽつんと男で肩身の狭い思いをするPTとなっております

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― 新着の感想 ―
[一言] 八犬伝だけはそれっぽい流れが実際に起きうるねぇ 種持ちが死んで飛び散った種が的な流れで 勝者が出ないように相討ち必須?
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