初夜
「ただいま~」
屋敷に帰ってもだーれもで迎えに来ない。
さっきはご当主様とか言ってたくせに何なんだ、と思いつつ腹が減ったというアカの誘導に従って食堂へ。
「せ~の、「「「カイト様おめでとうございまーっす!!!」」」」
パンパンと鳴り響くクラッカー。
音でびっくり、クラッカーをしれっと開発していたことにさらにびっくり。
以前に火薬を使って大砲を開発している際にゴンゾにそんな話をしたことがあるような無いような気がするが…うーむ。
こんなものまで開発するとは。
中々やりおるなあ。
「ビックリしたじゃないか。なんのお祝いだ?」
「何の、と申されましても。アシュレイ様の事でございますよ。若の10年来の夢だったでしょう」
「…そうだな。あれからもう何年たつのやら。10年は経ってないはずだけどな。ハハッ」
皆勢揃いである。
俺は風呂から帰ったままの格好だが、師匠とそのお付き、アフェリスたちもそれぞれに着飾っている。
マークスの執事姿とマリアのメイド姿はそのままだが…
「当主様、主賓の登場ですぞ」
「なんだよ。当主様って恥ずかしいな…」
ボヤく俺の前に現れたのは純白のドレス姿のアシュレイだ。
見た目は完全にウェディングドレスである。マーメイド型の、ラインがはっきり出るドレスだ。
素晴らしい曲線美である。
それはいい。
でも、あの。なんと言いますか。
ちょっと大人びているとはいえ完全に犯罪なんじゃないか。
えーっとあいつは俺より2歳上だから1482年生まれで?死んだのが…ああ、97年だから15歳か。
なら全然おかしくないのか。むしろ異世界基準ならめっちゃ適齢期だ。
確かに以前俺たちは結婚する予定になっていて。
でもアシュレイは今日復活したばっかりで。
それで、じゃあ復活したから結婚しまーっすってどうなんだ。
伯母上には何も報告していないしうーんうーん。
ちょっとまて。という事は今夜が初夜か。
でも俺の心の準備が全くできていない。
まだまだアシュレイはお子様の筈だから~なんて考えていたが年齢的には申し分なくなっている。
発育も大変素晴らしく体のラインなんてグラドルも真っ青だ。
そしてお子様だったはずの俺もいつの間にやらまあまあ成長して…るよな?
俺は今22歳。のはず。
体の成長からするとまだ前世の22歳と比べると子供っぽいが、鏡に映る自分は中学生から高校生くらいの感じではある。
という事はアレやコレやもやってやれねえこたあねえ、なのだ。
まさか今日、今からこういう流れになるとは思わず。
あ、だめだ。頭が回ってる感じがしない。
「おかしいか?カイト?」
「い、いや。奇麗だ」
「そう?そうか?」
照れたように笑うアシュレイ。
俺は、俺はどんな顔だ?
こんな時どんな顔すればいいのか分からないの!?
「若、少し落ち着いて。今宵はアシュレイ様のお帰りなさいパーティーです。若の想像しているような事ではありませぬぞ」
「お、おう?…そーなの?」
「純白のドレスはいずれアシュレイ様に着て頂こうとアフェリス様が織って居られた物です。婚礼の時にと思っておられたようですが、アシュレイ様にお見せすると気に入ってしまったようで…」
「あー…アフェリスがな。ああ、そうか。そういうことか??」
「また目をグルグル回して、何を考えていたのやら…嫌らしいものだな」
「ち、違いますよ師匠!誤解です。」
「マリラエール様の誤解だとは思えませぬが…」
師匠には何を考えていたのか見抜かれていたかもしれん。
いや見抜かれまくっているだろう。
だが、俺はそこは敢えて否定する。
アシュレイの中では俺はきっと硬派でダンディなお兄さんに映っているはず。
「マリラエール、ご安心を。カイトは昔からスケベな奴でした。私の胸が大きくなるとチラチラと見てきていました。十分に存じております」
「ああ。それは私も感じたことがある」
「でもチラチラとは見てもお誘いには乗ってきませんでしたよ。アシュレイ様一筋でした。ウフフ」
「わ…私は…?」
アフェリスに対してはそういう目で見たことがなかったかも知れぬ。うぬ。
和やかにお食事会は進んだ。
俺はよく知らなかったが、アシュレイと師匠はごく近い親戚筋になるし位というか立場も近かった。
なので昔はちょいちょい会ってたそうだ。
とは言え二人の年齢はずいぶん違うんじゃないかとチラッと思ったが、その時に師匠が凄い顔をしていたので年の事はあまり考えないようにした。
アレはいろいろ不味い。
アシュレイは年齢的にはまだまだお子様。なのでお酒は禁止になった。
俺?俺はもう立派な大人だからセーフなのよ。
俺が甘い桃のお酒を呑んでいるとアフェリスも同じモノを呑んでいた。
妹のアフェリスの方が今や年は上なのだ。
でもよく見たら年が上になっているはずなのにアフェリスの方が子供っぽい。
どこがとは言わないが主に胸部装甲の辺りが頼りない気がするのだ。うむうむ。
「どこを見ている酔っ払い」
「どこって…俺はいつもアシュレイしか見てないよ」
「んなっ!?」
「お熱いな。ほらもっと飲め!」
「いただきまーっす。」
皆がガンガンと注いでくる。
そんなに飲めないっての。ってくらい飲まされ、数日ぶりに食べに食べてフラフラになった俺はアシュレイとマリアに運ばれてベッドへ。
「それではごゆっくり…」
「ふあ?おやすみ」
「じゃあカイト、またな」
「うん」
「あら、アシュレイ様はカイト様と一緒ですよ。お休みなさいませ」
「「えっ!?」」
マリアはウインクして出て行った。
俺は、俺とアシュレイは見つめ合い。
そのまま一緒に寝た。
俺たちは大人の階段を駆け上ってしまったのだ。
年齢に関して突っ込みを入れたくなるのは分かります。
まあ分かりますが舞台は日本じゃないし現代でもありません。
20代で行き遅れと言われる時代、世界観です。人族ならという注釈は付きますが…。
中世ヨーロッパっぽい世界、所謂なーろっぱだとそうならない方がおかしいと思っています。
中世日本でも女性の初婚の場合は10代で婚姻が普通でしょう。
明治時代の統計でも『全婚姻』で女性の場合は平均23歳となっています。
再婚、再々婚なども含めると初婚の場合はその数字よりかなり低くなると思います。
という訳で私の感覚でも少し若いんじゃないかと思いますが、タイミング的にも此処しかないので話の流れ上こうなっています。