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復活

ロッソが消えた後はショックが大きくて動けなかったが、なんと言うか親父が消えた後はあまり衝撃を受けなかった。

始めからもう死んでしまっていて復活は無理だろうと思っていたからなのだろうか。

それともあんな性格だから特に衝撃を受けていないのか。


「まあ良いか…これで80層を攻略したはずなんだけどご褒美はっと…あれか?」


親父の大量の砂が舞って視界が悪かったが、階層移動のための階段がある。

そしてそこには3種類の宝珠があった。


「力の珠と命の珠と…キン○マか。無駄に神々しいな」


無駄に黄金に光り輝くタマタマを無視し、命の珠を手に取る。

手に取った瞬間、頭の中に文字が浮かんだ。


<命の珠を使いますか? Y/N>


勿論使う。『Y』を押したい。

キーボードが無い。ふむ?


「使う!イエス!ワイ!?」


<誰に使いますか>


ずら~~~っと名前が出てきた。

良かった。適当に口で答えても問題なかったようだ。

アシュレイを筆頭に、何十人もの名前が出てくる。

ユグドラシル防衛で死んだエルフのもの、リヒタールにいた町人の名前、ヴェルケーロを守って死んだ者たち…でも、ロッソの名前はやはりない。親父の名前も無い。どうなっているのだろうか。


「アシュレイ・アークトゥルスを生き返らせる」


音声認識である以上、おかしなことを言ってしまうと失敗しかねない。

そんな事をロッソが望むはずはないのだ。


アシュレイに使う、と言った瞬間。俺の体はどこかに引き寄せられる感じになり、気が付いたら久遠の塔の入り口に居た。

横にはアシュレイが。あの日のままのアシュレイがいたのだ。


「アシュレイ…」

「えっ?」


ガバリと抱き寄せる。

何年かかったろう。何年かかってしまったのだろう。

俺の力がもっとあれば。もっと早くコイツを助けてやれたのに。


「なっ、ちょ…誰だお前!」

「誰って俺だよ、カイト?」

「カイト?なぜ疑問形なのだ?とりあえず私を放せ!」

「お、おう…」


怒られたので放す。

かわいい。少し戸惑った時の顔だ。

あの頃のままだ。でも目線の位置はかなり違う。


昔は俺の方がずいぶん小さく、かなり上を見上げていた。でも今や俺の方がすっかり大きくなって…あの時、アシュレイを一人で行かせたりしなければ死なせることもなかったのだろうか。

俺の代わりに死なせてしまって。

俺が能天気で、おまけに弱くて。あの時…


「ウッ…クッ…」

「…カイト?泣いているのか?」

「何でもない…ズズッ…良かった。アシュレイ…良かった…」


一人泣き始めた俺をアシュレイが慰めてくれている。

アシュレイは戸惑いながらも俺が俺だと認めてくれたようだ。


まあ仕方ない。俺は何年も経ったと実感できているが、コイツの中じゃ昨日今日の話だろうし。

最後の記憶なんてあるのだろうか。死後の世界は…


「アカきたぞー」

「…おう」

「ド、ドラゴン!?」


そうこうしている間に俺が外に出たのを感じ取ったのか、アカが来た。

アシュレイは突然現れたドラゴンにおっかなびっくりしながらもすぐに仲良くなった。

つーかアカはもうペロペロしてるし触られるの嫌なはずの尻尾も平気で撫でまわされている。

なんでやねん。


「コイツ可愛いな」

「そうだろ。最初はもっと小さくてもっと可愛かったんだぞ」

「むう…ズルい!」

「今も小さくなれるぞ…えい!」


ポンっと小さくなるアカ。

2トントラックサイズだったが、柴犬サイズに戻った。

何だよ戻れるのか。エサ代浮いていいな?


「うわあああ!かわいいい!」

「や、止め…うへへ」


可愛いと飛びついて抱き上げるアシュレイ。

止めて欲しそうにしていたかと思うと鼻の下を伸ばしてスケベ親父のようになるアカ。

どうなんだこれは。俺は止めさせた方がいいのか。それともニマニマしていたらいいのか。


「こいつカイトのヨメか?同じニオイする」

「ヨメ…まあそうだ。」

「まあそうだ!?何だその言い方は」

「じゃあアシュレイは俺の嫁だ。何か文句あるか!」

「ない!同じニオイだぞ!」

「無い…です…」


勢いで言い放ったがまあ良し。

それにしても同じニオイか。

俺たちはまだお互いの臭いを擦り合わせるような破廉恥極まりない事はしていない。

勢いで抱きしめてしまっただけである。


「同じかんじがするけど…わからん!」

「よー分からんけど…まあいいか?」

「良いんじゃないか?フフッ」


何やらうれしそうなアシュレイを見ると俺も嬉しい。


まあ立ち話も何なので、アカに元の大きさに戻ってもらって乗る。

そして今は二人で空の上。

おっと、二人と一匹か。


「おい、リヒタールはアッチじゃないのか?」

「色々あってな…今はヴェルケーロって所に住んでる」

「どこだそこは?」

「すげード田舎の山の中…だった。今はまあまあ普通の田舎町だよ」

「ふーん?あ、母上とアフェリスはどうしてる?」

「伯母上は女王様になって頑張ってる。アフェリスはうちの領地で遊ん…頑張ってるよ」


空の上で今までの事を色々話した。

今が1506年、凡そ10年近くたっていることにまず驚いていた。

冷静になると、そんなに時間が経つのかと俺も驚いたが。


2歳年上だったアシュレイは7~8歳年下になるのか。

お姉さんっぽく振舞っていたが俺が大きくなったことでアシュレイも戸惑いが大きいようだ。

それだけ時間が過ぎていたんだなと俺も改めて感じる。


久しぶりに会ったアシュレイはやっぱり可愛い。

まだ美人でどうこうって年じゃないんだけど…なんだろうな。やはり惹かれるものがある。


話していると少し照れくさい。

それはアシュレイも同じようだ。

極力これまでの事だけを話した。


大魔王様に会ったことも話した。

アシュレイは大魔王様に会ったことがあるようだ。

優しげなお爺ちゃんという認識だったようで…まあソレは間違ってない。

俺もアシュレイも、大魔王様から見れば子孫の一部らしいし。

細かい事はよー分からんが、家系図的なのを見たら入り組んでいるのだろう。どこの貴族もそうなってる。興味はあるが見たくない。見ていると頭が痛くなりそうだ。


「あー、見えてきた。あの辺だぞ」

「あれって火山じゃないのか?」

「そうそう。あの火山の煙の下にいい感じの鉱石が埋まってんだよ。なあ、アカ?」

「キラキラいっぱいだぞ!サイコーだぞ!」


ふんすふんすしているアカ。アホ可愛い。

そう言えばアカに献上している金はどのくらいの量になっているのだろう。

はんぶんのはんぶんな!という初期の取り決めの下、出土する金の25%がアカの手元に入っているはず。俺はイチイチ確認したりしていないがえらい量になってるんじゃないか。


そのうち資金に困ったら少し分けてもらおう。

キラキラの…ガラス玉あたりと交換したりしてくれないかな?

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― 新着の感想 ―
[一言] 寿命の長い魔族だから8歳程度の差ならロリコン言われることも無いのかな
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