表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
255/391

80層攻略戦

「いい加減進むか…」


俺はロッソの消えた75層で、出来るだけ砂をかき集め、そのまま動けなくなった。

余りにも動く気が無くなったので休憩と称して飯を食って寝た。

もしかしたらもう一度ロッソが現れるかもしれない。

勿論、そんな訳はなかったが。


「ハァ…」


ロッソとの戦いを通じてレベルは上がった感じがある。

もう一々鑑定していないが体は軽い。

軽いはずの体がやけに重く感じる。不思議な事だ。



重い体を引きずり76階層へ。

相変わらずの荒野。ガタガタ道で自転車はもう一つだ。


やはりある程度舗装されている道で、そしてそこそこの性能のタイヤが欲しい。

そう考えると当たり前に享受していた前世の技術はすごい物だと感心する。


ゴムの木を見つけたとして。

たぶん俺の魔法でゴムの木は育つ。寒いとダメだからどこかで保温する必要があるんじゃないかとかそういうのはあるが…何ならゴム屋敷を立てても良い。暖炉と…日光が足りないだろうから魔力をふんだんに注いでゴムの木を育てる。


何て無駄な…と思うがハウスが出来るまではしょうがない。

ゴムは高温多湿を好んだと思うから、ジメジメした嫌な屋敷になるな…まあゴムの木が見つかってからでいいか。


合成ゴムという手もあるがあれは石油からだったと思うからなお遠い。

原油が沸いているところくらい探せばあるとは思が、だからってそこから軽油やガソリンに蒸留するどころか石油製品…だめだ。

さっぱり見当がつかん。



そんな事をつらつらと考えながら歩く。

時には軽くジョギングする。

最早通常モンスターなんてどれが出てきてもスライムやドラキーのようなものだ。

鎧袖一触、触るもの皆傷つけるのだ?


内政についてチョコチョコと考えているうちにさくっと79層は終わった。

この辺開発陣も面倒になったのだろう。MAPもスッキリして進みやすい。

いい加減飽きてきているであろうプレイヤーへの配慮だろうか。

そういう所配慮するくらいならカイトをもうちょい強くしてほしいよな。


ファ○コン時代のバランス崩壊ゲーかよ。

どうせパッチで直せばいいとか思ってんじゃねえぞ。

パワー○ップキット商法はいい加減止めろとあれほど…おっと、誰か来たようだ。


「たのもーう!」


80層に踏み入る。

そこにいるのは災厄の巨人。

前回アカと一緒に来た時は親父そっくりのおかしな巨人だったが…


「おう、カイト。遅かったではないか」

「やっぱり親父か…何で俺が来るって知ってんの?」

「うむ、それはな、実はこの…が、…でな。おっと、これは言えんのか。うーんと、ロッソの奴に聞いたのだ。奴め『御屋形様はご存じないでしょうがカイト様は~』と儂にいろいろと教えてくれたのだ。良い配下を持ったものだ。」


うんうん、と頷く親父。

言えんのかってなんだ?情報規制でもされてるのか?と思うが、後半の話はロッソにマウント取られてるだけやんけ。


巨体になってもどこか抜けている所は相変わらずだ。

そんな事だから暗殺されるんだよ…


「で、アシュレイ様を生き返らせるのだったな。さあ、かかって来るがよい」

「え?それだけなの?もうちょいなんか親子の会話的なのは??」

「そのようなものは不要!さあ、拳で語ってみせよ!」

「ええ…?じゃあまあ…よし、行くぞ親父!」

「来い!カイトよ!」


親父はいつまでたっても脳筋だった。

お袋はこんなアホのどこに惚れたのだろう。惚れる要素があったのだろうか?

良く解らんがとりあえずは仕掛けてみることにする。


親父の装備はいつもの裸マントに盾と槍だ。

槍は片手槍で少し短めだが、太さはごんぶとである。俺の太ももくらいあるんじゃないかってバカ太い槍。ブンブン振り回してこちらを威嚇しているが…ちがうな。

ありゃタダの準備体操だろう。


槍なので勿論鋭い刃が付いていて、その刃部分も怪しくきらめいているが…あんなモン刃を避けても柄でシバかれるだけで致命傷待ったなしである。

頭だったら一発でパッカーン。腹なら内臓破裂しても何らおかしくないだろう。


「アローストーム、アロートルネード!」


という訳で消極的な俺は遠距離攻撃だ。

木をいっぱい産み出して縛り付けてしまえば槍も何の役にも立たないのだ。


「ぬううん!そおーりゃああ!」


木矢で作られた嵐はやりの一振りで薙ぎ払われ、竜巻は反対方向へとグルグル槍を回して消し飛ばされた。


「…嘘だろ?」

「気合がたりーん!!!」

「ええ…?昭和かよ…」


昭和は恐ろしい。

運動部は水を飲まなくても平気だし、気合があると熱中症にもならない。

逆に気合の無い奴は真夏に水を飲まないくらいで倒れたり怪我をする。

投手は肩を冷やしちゃだめだから温める??

もしけがをしたりぶっ倒れた奴がいたら、そいつらにヤカンで水をぶっかけて放置。

コーチが言う言葉は一つ『だらしない』だけだ。


とんでもねえ話しである。

いまなら虐待でコーチも監督もクビ待ったなしだ。

でも訳の分からん昭和理論は時に全てを吹き飛ばす。

ってなわけで俺の魔法も…もう訳わからんわ。


「気合が足りんぞカイト!そんなものでは姫は守れん!」

「…は?」


パンチを喰らい壁に飛ばされる。

でもそんな事よりアシュレイは守れんと言われてカチンときた。


「えーっと?肝心な時に死んじゃってる人に言われたくないんですけど?親父のせいでアシュレイ死んじゃったようなもんなんだけど?親友の王様も守れてないんですけど??」

「うぬぬ…やッかましいわ!減らず口ばかり叩きおって!」

「煩いのはお前じゃクソ親父!あんた等がアッサリくたばったから俺らが大変だったんだろうが!」


自然と普段から思ってたことを口にする。

だいたい、親父とオジサンが生きてれば何の苦労もなかった。


大魔王様は寿命だったからしょうがないとして。

親父たちが攻めてくる軍を千切っては投げちぎっては投げ(物理)すればよかったのだ。

俺らがあたふたして防衛に走り回る必要なんてなかったのにこいつらが…って普段から思ってたんだな。俺は。まあしょうがない。


煽りに弱い親父はあっと言う間に顔を真っ赤にし、槍を俺に打ち付ける。盾で殴りにくる。

だが、俺とてここまで来るのに何の苦労もしなかったわけではない。

怒りに任せて殴ってくる猛獣のような攻撃なんて捌くくらいは出来るのだ。

攻撃を捌き、受け流す。

或いは最小限のダメージになるように接近して根元で受け止める。


「ほい、おりゃ!この!」

「ぬっ…やりおるな…」


盾と短剣で重い攻撃を受け流し、力が入らないように位置を入れ替える。そしてチクチクと攻撃。

蝶のように舞い、蜂のように刺すのだ。

そうやって雑な攻撃を捌いていると、親父も少し落ち着いてきた。

なるほどと、感心したようにこちらを見る。


「随分と強くなったものだ。あのヒョロヒョロだったカイトが今や…うん。」

「カイトが今や?続きは?」

「随分…逞しくなったなあ…と…?」

「嘘をつくなああああ!」


今度は俺の番、とばかりに怒りを剣に乗せて振り回す。

短剣は小回りだけなら槍なんかに負けはしない。

槍を殴って上に弾き、開いた顔面に


「フレイムミサイル!ダブル!」

「ぬおっ」


当然この位じゃ倒せない。でも目の前に火が出ると生物は誰でもビックリするのだ。

巨人となっている親父でもそこは変わらない。


怯んだ親父の足元に潜り、股間に向けて今、全力の!


「うおおおお!しょう〇ゅうううけえぇぇぇん!」

「ぐおおおおおおおお!」


今俺の持っている魔力を全力で乗せた拳は親父の股間の…どこだろう。あんまり考えたくないな。

後か前か真ん中かは俺も夢中だったので良く解らないが、とにかく大事なところ付近を撃ち抜いた。

アッチもコッチも、その先も全てが内臓である。

ものすっごく痛いことは間違いないだろう。


「ぐぬぬ…ガクッ」

「10秒以内に立てなければ親父の負けだからな。い~ち、に~、さ~ん…きゅう~じゅう!カンカンカーン!はい、カイト選手の勝ちでーっす」

「う…お…」


目がうつろな親父は放置だ。

回復するまでしばらく待とう。


ロッソの方でしんみりさせたのでこちらは馬鹿っぽい戦いになりました。

親と子の本音のぶつかり合い…になったかどうかは何とも。


80層攻略でアシュレイ復活。

中盤ラストにふさわしい真剣な戦いにする予定だったのですが、気が付けばこうなっていました。

どうしてこうなった感がぱない。


評価・感想・レビュー・いいね などいただけると大変励みになります。

誤字報告もよろしくお願いします。助かります。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 裸マントマンで2回続けてシリアス展開は無理あるから仕方ないね せめて親父が蝶ネクタイを締める紳士だったら違ったろうけど
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ