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裁判 後

打ち合わせをした後で実際の裁判は行われた。

裁判官との打ち合わせではない。


俺たち裁判官を判定する側の打ち合わせだ。

裁判官を判定し、あまりに一方に味方するだとか、問題のある行動をする場合は途中でストップさせたりしなければならないかもしれない。

まあそうはならないと思うが。



斯くしてヴェルケーロ法廷の第一回の裁判が開かれた。

勿論裁判官は俺ではなく、新人官僚たちである。

所謂高等裁判所のように、此処の裁判官が捌けなかったものを俺の所にあげてもらうシステムにしたい。まあ、大魔王法廷と同じようなものだ。

三審制も何れは導入するべきか…うーむ。



新人官僚のうち、この1か月ほど学校を優秀な成績で卒業した者の中で希望者30人ほどと法の基準を話し合いを重ね、成績の良かったもの10名を裁判官に任命した。

この10名のうち裁判長と裁判官を毎回選出して裁判を行う。

勿論、家族や親しい物が被告や原告になった時は裁判官にはなれない。

申告しなかった場合は…罰則を決めなければならないな。


1軒目の裁判ではベロザの印章を使った詐欺を行った者が現れた。

今日の裁判長はモトーメという名の若者だ。

彼は子供の頃にエルトリッヒから避難してきたメンバーの一人で、学校を優秀な成績で卒業。

それから人族なのにロッソの下で騎士団に行き、この度の裁判官募集に応募したという経歴である。まだ10代後半だがみんなが口を揃えてあいつは優秀だという。


10名の裁判官の中でもトップの成績だった。

ぶっちゃけ評価する方(おれたち)より優秀であることは間違いないだろうなあ。



「では原告と被告は入廷してください」


今回の原告はベロザを代表に一緒に酒造りをしている者たち。

そして、被告は時々こちらに行商に来ていた商人だ。


「原告側はなぜこういう訴えを起こしたかを簡単に説明してください」

「簡単にって…オラの酒が騙られてたんだ。オラは許せねえんだ」


おいおい、簡単すぎだろベロザよ。

もうちょい他に言いようがあるんじゃないか、と裁判官はもとより俺たち幹部も観客も、見てる全員が思ったに違いない。ベロザはリーダーシップもあるし皆に慕われているしなんだけど、もう一つ言葉が足りないところがあるんだよなあ。

沈黙は金、という言葉もあるし多過ぎよりはいいのか?うーむ。


「原告はこう言っていますが、被告人、トガインル商会の代表、トーガ殿どうですか?」

「全く存じ上げない事でございます。私どもは正常なルートで入手したものです」

「その正常なルートとは?」

「それは、勿論こちらの領にて買いつけました」

「それは違うだ!」

「違うと申されましても」

「違うだ。ちゃんと証拠があるだ!」


ベロザが出したのは帳簿、この年のベロザ印を押した物は何本、何種類。

そのうち一般に売ったのは何本。

どの商人に何本売ったか…って感じで全部細かく記してある。


「あいつ案外細かい事やってたんだなあ」

「そうですな、さすがベロザ殿」

「あれはベリス殿がやり始めたらしいですぞ。結婚した夫とドレーヌ公爵の勧めだそうですが」


ベリスちゃんはドレーヌ公爵の部下と結婚して旦那のいる所こっちを行き来する生活をしている。

んで、兄貴の作った酒を公爵に献上したらついでにちゃんと記した方が良いんじゃないかって進められたんだって。ほーん。


「ドレーヌのオッサン、案外細かいんだな」

「良い所ですな。家臣にも慕われているようです」


結局この帳簿が決め手となって裁判はベロザ側の勝ちになった。

商人は儲けた額を罰金に、さらに同額をベロザとリヒタール酒房への賠償金に充てることになった。

ギリギリ商会が潰れるかどうかってラインだ。

ぶっ潰れて借金が払えなくなってもイヤだからフォローしてやるようにマークスに言うか。


「それでは次の件、復旧作業中の喧嘩について」


喧嘩した当人たちが連れられてきた。

顔を見合わせるとまた揉めそうになっていたが貴賓席|(丸太)に俺たちが座っているのを見て大人しくなった。ウルグエアルとシュゲイムが双方を今にも殴りそうな顔で睨んでいるからだ。

(魔族or人族の)恥さらしどもめ…と思っているに違いない



裁判はそこそこ揉めたがどちらが悪いとも言いづらい。

怪我は双方にそこそこ出たが素手での喧嘩だったことだし、殺意も無い。

死体をいっぱい見て色々感情が昂ってもまあしょうがないじゃろと思うのだが。


「では判決を申し渡します。双方どちらの意見も正しい所も悪い所もあります。なので双方に罰金を命じます」

「ええ!」「そんな!」

「その罰金で双方の縁者と仲良く一緒に飯を食い、酒を飲むように。酒と供に恨みを流すのです。勿論その席で喧嘩などすれば…宜しいですね」

「「ええ~?」」

「ハハッ。なかなかの判決だな」

「酒のついでに一暴れしそうですがね。まあこれからに遺恨を残されても困るので良い判断かと」

「そうだな。足りない分は俺が持つよ」


こうして小宴会のつもりが大きな祭りになり…俺の財布はまた軽くなった。

珍しく前後編にしてみました。

内政戦記というタイトルで今頃のように法律に裁判。どうなっとるんじゃと我ながら突っ込みたい。

でもタイミング的にこの辺なんですよと言い訳。

衣食がそろそろ足りてきたと思うので…ここら辺なんですよともう一度誤魔化す。


今まではどうしたかと言うと、元住民たちは犯罪者をほどほどにボコボコにしていたし、シュゲイム達は人族が悪いことしたら住む所がなくなると思って過剰に裁いていました。

敢えて描写していませんがそういうことです

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