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悪魔の証明

アーク歴1506年 弐の月


ヴェルケーロ領



月が替わっても来訪者は途切れなかった。

俺がいくら頑張っても、というか頑張って御接待をすればするほど来訪者が増えた。


その中にはリヒタールでぶん殴った奴らもいっぱいいた。

皆、昔ながらの魔族らしく強い者には従うそうだ。

俺もどうやらいつの間にか単純な暴力でも魔界でも有数の武将と認められるほどの強さを得たようで…嬉しいようなそうでも無いような。


だが、俺はいい加減ダンジョンに行きたい。

新たに手に入れた力。

何人の人の命を奪ったのか分からない、だがそのおかげでレベルがかなり上がったようだ。

今の俺はレベル1000を超えているのだ。

それになんちゃらの種のおかげでブーストが効いているようだ。


いや、これは増えた領地と人口のおかげか?

俺のギフトは領地が増え、富むほどに強くなる。

あー、でも今年に限ってはそうでもないか。


年末に侵攻され、収穫も人口も減った。

どうもギフトによる加算?乗算?は年始の状態で計算されているようなので…まあ俺の今のギフトの状態は去年より悪いと思っていいだろう。



窓から見る景色はまだまだ酷いものだ。

果樹園は何とか苗が定着しようかという所。

畑は突貫で作って細い大根が出来てきている。

白菜は…うーん。今年は栄養状態が良くないだろうからなあ。

一部では変に栄養が良さそうで困るけど。

微生物もこの短期間でしかも冬場、いろんな栄養を処理するのに時間がかかるはずだ。


兎に角大事に大事にしていた畑はボロボロだ。

勿論、畑以外にも内壁と外壁の間に合った施設もどれもこれもボロボロにされている。


住宅街や商店もクソ塗れだし、風呂屋もボロボロ、わざわざ植林してたところも、牧場やお墓まで荒らされている。無事なのは猛龍注意の看板が張ってある鉱山くらいか。看板の前まで足跡があるがそこで止まっている。ビビりやがったな。


あー、やだやだ。戦争があるとこれだから困る。

やっぱ領地より畦道一本でも外で戦わないといけないってのは正しいんだね。




気を取り直して。

反逆者が出た流れで作ることになったが、新しく調べた法を作らねばならない。

ぶっちゃけマークスに丸投げしたいが、まあそうもいかん。


ハンムラビ法典は『目には目を』、で有名な法律である。

紀元よりだいぶ前に作られて、200か条以上の条項があったらしいが…詳しい事は俺も知らん。

ただし目には目を…が成立するのはあくまで対等な立場のみで身分差によって罰は全然違う物になるらしい。アカンやんけ。


過去に有った魔界の法について調べてもらったが、まあ乱暴な物だった。

どっちの言い分が正しいか、困ったら決闘。


いうてDNA鑑定も監視カメラも無い。証人も証言も金積めばどうにでもなりそうな世界じゃコレが正しいのかもしれん。戦って強い者が正しいのだ。

…でもなあ。



大魔王様の代になってからは裁判は互いの言い分を聞いて、裁判官が行うものとなった。

ただし、大魔王法廷以外は割と適当だ。

上告して行けばいずれは大魔王法廷での審議になる。大魔王様は心が読めるのでほぼ正確だが、それまでに握りつぶされるものが多い。




人間界にも裁判があるらしい。

ただし、判例を見せてもらうと所謂『悪魔の証明』を求めるものがあった。

やってないことを立証しろ、という物だ。出来るか!


「いいか、こういう裁判は悪い例だ。」

「はあ」

「どこがですか?」

「どこがって、被疑者が否定するのが難しすぎるからだよ。良いか?俺が…そうだな、師匠の着替えを覗いたと疑われているとしよう」

「なっ!」

「良いではありませんか」

「夫婦なのですから当然です」

「まだ婚約者ですから…少し、はしたないですかな」


法を決める会議をしている。

出席者は俺と師匠とマークス、シュゲイム、ウルグエアルだ。

それとそれぞれのお付きの文官が後ろに控えている形か。

師匠は体調が悪そうだが、まあ話に参加するくらいなら良かろうと思ったのだが。


「何たる破廉恥な…ゴホゴホ」

「大丈夫ですか…?まあ、たとえ話ですから。今のが不味いならリンゴを盗んだとかでもいいです」

「この領の物はお前の物だ。勝手に食えばよいではないか」

「…貴族の認識だとそうなっちゃうから師匠に悪戯したって事にしたんですよ。いいですか?」

「良くはないがまあ分かった」

「俺はやってないと言うし、師匠はやったという。ならばやってない証明をして見せろ!という訳ですね」

「誰か証人でもいればよいではないか」

「夜中だったりするじゃないですか。そしたらみんな寝てますよ。アカだって寝てます。」

「マリアがいるだろう」

「いやまあそうですけど…」


うーん、参ったなこれ。

たとえが悪かったか。ちょっと変えよう。


「…じゃあこうしましょう。シュゲイムが可愛い奥さんがいるのに浮気したと」

「ブフーッ!」

「うわ汚い!」


シュゲイムは飲んでた紅茶を吹きだした。

汚いからやめろ。


「や、やりませんよ!」

「例えだって言ってるじゃん!もう!だから、やってないっていうならお前が証明しろよ!」

「いや、そんなのやって無いに決まってるじゃないですか」

「どうして浮気してないんだよ。イケメンなんだし女の子にモテモテじゃん。その気になればホイホイ浮気できちゃうだろ」

「いや、それは「やってないって言うならやってない証拠出して。ほら早く」…そんな証拠など有りませんよ!」

「はい、有罪。やってない証拠出せないなら有罪~!…とまあこれが悪魔の証明です。例えば昨日の夜は妻と一緒だった、でも昼は?一昨日は?その前は?ごはんの後1時間くらい出掛けましたね?その時にサクッと一発やったんじゃ?昼の休憩30分くらい何処いってたの?とか言い出したらキリが無いんです。いちいち全部証拠や証人なんて揃う訳ない。こんなことで有罪だってやってたら全部有罪になる。証明は裁判を起こした側がしなければならないのです。」

「成程なあ…」

「うーむ、良く解らんような解ったような…」


師匠、ウルグエアル、マークスはそれぞれ納得気。

シュゲイムはネタにされて不機嫌そうだがまあ分からんでもないって顔だ。

後にいるの文官たちは頷いている。

さすがにこの位のことは分かっているのだろう。


「なるほど。さすがは坊ちゃん。シュゲイム殿の浮気を暴かれましたな」

「やってませんよ!?」

「冗談でございますよ。ホッホッホ」


まあ、あの奥さん可愛いけど怖いっぽいもんな…浮気したらどんな目に合うか…

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