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花火

俺たちが空で苦戦している間、チラチラッと見ていたが地上の方もかなり苦戦していた。


大砲を城壁に置いた。

一度取りに帰り、15門は置いただろう。


だから何かといえば一方的に撃たれることがなくなった。

幸いなことに射程は同程度だったらしく…壁の高さをプラスして同程度とも言えるが、撃てば撃ち返される状況には持って行けた。


だがまあ、そうなると後は普通に数と数との戦いになる。

相手は見えていた10門ほどではなく、やはり20門程度の砲を出してきた。

砲の数の戦いはこちらが少し劣るが、代わりに城壁がある。


遠距離での大砲同士の戦いは攻撃力で劣り、防御力ではこちらが圧倒的に上だ。

相手は大砲に当てなくても壁や城内にブッ込んでもいいと考えればその辺は微妙だが。


概ね互角なら、城壁の中で大人しく防衛戦をやっていればいいと思うのだが。

敵地上軍が城壁に押し寄せた際、ふとした拍子に一部が城門の外に出た。

そして乱戦になったと。まあしょうがない。



まともな軍隊なら命令無視して勝手に暴れれば処刑ものであるが、魔族は強さと引き換えに暴走癖がある。

普段は平穏なのに、血を見ると暴れ始めてどうしようもなくなるのだ。


だからまあ、多少の命令違反でどうこうしようとは思わない。

前回の侵攻の際に打って出る話になっていて、『アホか?城壁あるのになんでわざわざ打って出るんだ?』と言って喧嘩になったが。まあ、まあ魔族の習性を考えたら無理なかったのかもな。

扉閉めてても自分らから開けて出ちゃうんだもん。

そんなモンどうしようもない。


で、ドッカンドッカンしてる下で元気に兵が暴れまわり、城壁付近のをいっぱい撃ちとって余勢を駆って一部がそのまま敵陣に乗り込み、罠に嵌って討ち取られ…という何とも魔族らしい戦いを繰り広げ、しばらく戦った後に日が暮れてきてどちらともなく引いて終わり。

初日はこんな感じで終わった。


分かったことは地上戦ではほぼ互角、砲の撃ち合いでもほぼ互角。

そして空中戦はやや押され気味。


だが、地上戦は城壁がある分こちらが幾らか有利だ。

そもそも屋根があるかないかで兵の疲労度が違う。

雨でも降れば差はもっと顕著になるだろう。雨乞いでもするか。


あとは囲まれているというと兵糧攻めが気になるが、前方だけ遮断されて後方には通行可能だ。

ならこちらは飢え死にする心配はない。



という事で今は押されている空中戦をどうにかしないと。

空を制するものは世界を制するのだ。



「…と言う訳で、取り急ぎ作った物がこれです」


カバンから取り出したのは…花火玉と筒だ。

大砲にも使っている黒色火薬をコネコネして星を作って、樹魔法で皮を作って。

奇麗に並べたら蓋をして。紙をペタペタ。

導火線には火薬を仕込んでいるので簡単には消えない。


テレビで作っているのを見て、領地で作って見たものだ。

残念ながら色はまだそんなにきれいじゃない。炎色反応を利用しているのは分かるが…マグネシウムとか?どうやって分離するんだろうか?


科学の授業とかもうちょいちゃんと聞くべきだった。

水兵リーベとか、有機化学の基本の基本は覚えてるんだけど、どうやってNaやらMgやらを分離して取り出すんだ???



俺は花火を空対空の戦いで使ったが、地対空で使っても悪くはないと思う。

城砦の要所に仕掛けておいて、敵が来たら打ち上げて爆発させれば。

上手く至近距離で爆発したら今日の感じなら墜落する事もあるだろう。

馬は繊細な動物だから大きな音でびっくりして大暴れする。

天馬もその傾向があるみたいで…そう思うと戦争に向いてないんじゃないかと思ってしまうな。


まあ大きな音がドッカンドッカンすれば少々遠くてもまともに破壊工作は出来なくなるだろう。


勿論上空から地上に落としてもいい。

というか戦場ではそういう使い道になると考えていた。


敵軍や大砲に向けて空から投げ落とす。

空爆するなら爆弾か火炎瓶だなと思ったが…爆弾は起爆の仕組みがパッと思いつかなかった。

信管だとか雷管とか?何かそういう仕掛けが必要になるのではないか。

そうしないと火薬をばら撒くだけになる。


まあソレはソレで、大砲の周りに火薬がいっぱいになれば危ないことこの上ないとは思うが。

火炎瓶はアルコールならあるが、石油はヴェルケーロに無かった。

これも魔界全体を探させてもらわないと…


獣脂や植物油ならあるけど、火炎瓶って灯油とかガソリンとかのはず。

サラダ油で大丈夫か?

いや、昔植物油をまいて火をつけたけどほとんど燃えてる感じなかった。

あの時は藁が燃えてただけっぽかったな。

あとは、増粘剤があるといいんだったかな?

砂糖混ぜるんだっけ?塩だっけ?うーん分からん…って程度の知識だ。


アルコールを瓶に入れてぶん投げるとはソレはソレで危ないと思うが、一瞬で燃えちゃったりするとあんまり威力は無いと思う。ならもう魔法の方が便利でいいだろう。いっそ火矢でもいい。



あっちこっち調べればこの世界にも石炭も石油もあると思う。

でもまあ油の良し悪しなんて俺にはわからん。


蒸留して分けるってのは知っているが、どの段階のどれがガソリンでどれが軽油で?とかさっぱり分からん。オクタン価ってなんじゃ?スポーツカーはハイオクなんじゃろ?って程度。

蒸留した最後に残ってる黒いのをアスファルトに使うってのはなんとなく知ってるけど。


「…で、これは?手を真っ黒にして何を作って来たのだ?」

「伯母上は見たことなかったですか?夜にあげる花火ですよ」

「あー、前にマリラエール様がお前の所で見たと言っていた。奇麗だったからいずれ大魔王城でもいずれやると」

「これで敵の空軍を怯ませて…まあ論より証拠ですよ。ちょっと見ててください」


そう言ってマークスと一緒に筒をセットして花火を打ち上げる。

領で工夫しながら打ち上げ花火したから俺も一応は出来るのだ。

何故かマークスの方が上手いが。



ひゅ~~~っと上空まで飛んで行った花火はドーン!と音を立てて爆発した。

地上までビリッと振動が来るほどだ。

残念ながら昼なので色合いは分からん。分かった所で黒色火薬だけだから多分あんまりきれいじゃない。


「おおっ」

「ドーンと来たな…だがあまり美しくは無いぞ?」

「今回は適当に作って、特に色のついていない物ですから…ですがかなりの振動があったと思います。これを空で、至近距離で受ければどうですか?ギロンヌ殿」

「む。離れていてもかなりの振動がありました。某の飛竜もかなり驚いた様子でしたな。至近距離ならば飛竜(ワイバーン)天馬(ペガサス)も、鷲獅子(グリフォン)とて無事ではありますまい。乗り手の方も一緒になって目を回すでしょうな。そうなると墜落します。」

「そういうことです。まあウチの火龍でもかなり厳しいでしょう。ビックリして混乱はします。下手すりゃ墜落ですね。」

「おれはだいじょうぶだぞ!」


そうか?

俺はお前に落とされかけたことを全く忘れてないぞ。

何時だって乗る時はパラシュート完備だし。

びくびくしながら乗ってるのは間違いない。


こんなのがすぐ後ろとかで爆発したらそりゃ大混乱して俺を振り落とすんじゃないか。

そのくらいの信用しかないぞ…


「まあ今のは大きな奴です。手持ちで使えるのはのはもっと小さい…これくらいですかね。」

「ふむ、この位なら投げやすそうだな」

「そうですね。で、先ほどの撃ちあげる方、こちらはかなり上空まで飛ばせます。まあそこそこ防衛には使えるとは思います。でもまあ、基本は自陣の上空に敵が来たら終わりですよね。そこからカバンに入れた岩でもバラまかれたらと思うと。」

「そうだな、上空を完全に取られると厳しいだろう飛べる者がいると言っても限度があるからな」


そういや師匠は飛べる人だった。

装備でなんちゃらと言っていたが…後はユグドラシルのジジイも風魔法で飛べるって言ってた。

俺?アカがいるからいいんだよ!



「…という訳でギロンヌ殿たち飛竜部隊や、空を飛べる者たちにはどうにか制空権を得てもらいたい。そうすれば砲はどうにでもなるでしょう。この花火を上から投げ落としてもいい。そうすりゃ大混乱待ったなしです。」

「岩をばら撒く…なるほどなあ。カイトの発想はすごいものだ。で、それは量産できるのか?」

「今から作りますけど…持っている分はこれくらいです」


3個の花火玉を出した。

拳くらいの大きさで投げるにはいいと思うが対空防衛にはちょっと頼りない。


もう少し大きいのも作りたいがそれは一人じゃ大変もいい所だ。

ちょっと手空きのやつに手伝わせて作らせるかと思うが、花火はこう見えて機密情報の塊である。

どうするよ?


「…もう少し量産してほしい」

「…ですよね。まあ残ってる領民に手伝ってもらいます」


幸いここはリヒタール。

昔ながらの知り合いも沢山いるし、何ならマリアの所の酒場にまた行ってみてもいいか。


前にもあとがきで書きましたが、主人公は得意分野にはちょっと詳しい程度の普通の人間を想定しています。

普通の人が異世界に行って、マグネシウムやナトリウムを分離して、原油からガソリンを取り出してオクタン価を…できる?って考えた時に少なくとも自分はできないと思いました。

出来る人ももちろんいるとは思いますがw

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