お誘い
前回の流れからエッチな方向のお誘い…ではありませんよ
アーク歴1504年 捌の月
ヴェルケーロ領
「魔界の全体的な収穫は普段と変わり無いようです。人間界も同様です。これで領民たちの不満も少しは解消されるでしょう。それと、人間界の様子ですが…」
力が必要だ。
60層は何とかクリアしたが、ほぼ相打ちに近い状況だった。
そして70層のボスは水龍だった。
前は余裕だったが、やはりとんでもない強敵になっていた。
喋る水龍にはこちらの攻撃はあんまり通用している感じではなかった。
全体に打撃力が低いのだ、俺は。
分かってはいるが、だからと言ってどうにもできない。
装備できそうだった金甲虫の甲殻はゴンゾに渡して脛当てに加工してもらった。
サッカー選手が靴下の下に仕込んであるような形だ。あれなら動く時も邪魔にならないし、相手のローキックも防げる。
まあドラゴンがローキックしてくるとは思えんが…まあ攻撃力(ATK)と防御力(DEF)が5%も上がるアイテムだ。付けなきゃ損だ。
もう一つのボスドロップである角槍はどうにもならん。
解体するか売るか。
まあ売る方向だな…
これからドンドンと敵が強くなる。そうなるはず。
けどまあこの流れで行くとソロでの80層ボスはそんなに甘くないはず。
となるともっと力が欲しい。
パワーが、スピードが、魔力が欲しい。うーむ。
サクッと強くなるにはレベル上げと領地を増やすことだ。
どちらかが上がれば掛け算で強くなるからな。出来れば領地を…
「あー!どっか戦争吹っ掛けてきてくんないかな」
「突然なにを…まあ有りますが」
「あるのかよ!?」
久々に帰って来た夜、マークスと忍び衆のカラッゾから最近の外の事について報告を受けていた。
報告を受けながら俺はぼんやり他のことを考えていたわけだが。
力を付けるにはモンスターを倒してレベルを上げるか、それかギフトによる補正を稼ぐかだ。
普通のキャラの場合はギフトの補正は一定なのでとにかくレベルを上げるしかないわけだが、カイトの場合はギフトの補正値は領地や領民、収入が増えると増加する。
しかもその補正値が掛け算になる。加算じゃなくて乗算だ。
レベルを上げて内政をすると倍率ドン!さらにドン!になるのだ。
はらたいらさんに3000点!(古い
という訳で領地や領民が欲しい。
でもタダで譲ってくれるわけがない。
そう思っていたが、その需要はあるらしい。
まったくもって意味不明だが、領地も軍備も順調に整ってきているウチに戦争を吹っ掛けてくる相手がいるらしいのだ。
「…誰よ?」
「隣のカニエラル領の領主、ウルグエアル殿ですな」
「はあ…?あのオッサンとは仲良くしてると思ってたんだけど…?」
マークスに詳しく聞いてみると。
ヴェルケーロ領のお隣さんはウルグエアル子爵というワニさんのような領主さんである。
彼の治めるカニエラル領は大魔王領からヴェルケーロ領に往復する時に通っている何もないところなので、俺の中で『道路』と呼んでいる領地だ。
その道路の持ち主であるウルグエアルさんは特に野心も何もない人で、領内の経営より自分の武を高めたいのだと。
んで、うちの領がいい感じで発展しているのでついでに領の事を任せ、自分は自分のための道を歩きたい。カイト・リヒタールは大魔王様が跡継ぎと認めたんだし領民たちも大事にしてくれるだろうと…
「で、何でそれで戦争になるの?タダで俺か師匠に道路くれればいいじゃん」
「まあそれでは領民や部下が納得しないと思ったのでしょう。正々堂々の戦いをして、その後領地を譲りたいと」
「うーん…まあ良い話かどうかは微妙なところだな。罠とかじゃないの?正々堂々って言っといて、俺らがノコノコ出かけた所に後ろから伏兵が『わー!』って来るとか?」
「そんなセコイ真似は若以外しないと思いますが…」
「やっかましい!」
セコイ真似とは何だ。
正面に気を引き付けて横や後ろから急襲するというのは定跡もいい所だろうに。
釣り野伏や十面埋伏を見習え!
まったく、これだから脳筋は…
「わざわざ正々堂々の戦いと言っておいて小細工するのがセコイと言っていますが」
「まあそうかもな。俺もそこまではやらないよ。そもそも正々堂々なんて言わないし」
「重々存じ上げております」
「そこは存じ上げなくていいんだよ」
と、まあ何やかんやで戦う事になった。
レベルは増えなさそうだが領地は増える。
でも変な部下がいっぱい量産されそうだが…うーむ。