帰宅銭湯②
前回の続きです
ふう、マリアのおかげでえらい目に合った。
あれから前かがみで風呂を抜け出し、着替えもロクに前かがみのまま部屋まで帰って来た。
おかげでみんな微妙な顔をしていた。
「領主様体調わるいのかな?」
「ちがうだろう、坊ちゃんもお年頃だからなあ…」
なんて声まで聞こえて来た。
ちくしょう!
何でバレてんだ!
つーか分かってもソッとしておいてくれよ!
「チクショウ…」
「マリア殿と仲良くすればよいではありませんか。」
「マークス!お前!」
部屋で一人ダンゴムシのように丸まっているとマークスの呆れ声が聞こえて来た。
「若様、なにが不満なのですかな?あれほどの美女が慕ってくれておるのですぞ。」
「マリアに不満は無いけど…俺はアシュレイを生き返らせるの!分かってんだろ!」
「ですが、世継ぎはご用意していただかないと。家と個人の問題は別ですぞ。それに、あまりマリア殿をぞんざいに扱うと…」
「どうなんだよ?」
「さあ、ご自分でお考え下さい。では食事の用意が出来ればお呼びします」
何だアイツ。
マークスは言いたいこと言って出て行きやがった。
マリアをぞんざいに扱うとどうなるって?
そりゃあ…忍者部隊がアッチ向いちゃうかもな……ってそりゃ最悪の展開じゃねえか。
情報は最高にして最強の武器だ。
まあ俺がそれを活用できているかは微妙だ、俺じゃない誰かはもっと情報を活用できるだろう。
で、マリア達の忍者部隊はウチの情報の殆どを持っている。
それが他所に流れたら…
それとまあ、やんないとは思うけど。
もしマリアが俺の事を恨んで暗殺しようとしたら…
簡単に殺される自信はある。アカンわ。
「もっと優しくしないといけないかな?」
「そうです。もっと優しくしてくれてもいいと思いますよ」
「…ごめん」
いたのか、とは言わない。
何時だって呼んだらすぐ来るのだ。
すぐそこで待機しているのが当たり前だろう。
「アシュレイが生き返って、そうしたらお前の事も真剣に考える。立場上、正室には難しいかもしれんが…」
「そうですか。それはありがとう御座います」
覚悟を決めて発した言葉に帰って来たものはシレッとした一言だった。
だが、ニコリとしたその表情は非常に美しかった。
そしてそのままの表情で一言。
「ですが、マリラエール様の方を優先した方がよろしいかと」
「ええ…?そうだな。師匠の方もなんとかしないといけないのか…」
つーか俺ってよく考えなくてもハーレム物の主人公みたいになってないか?
いつの間にやら流されて嫁が増えて…ってパターンになりつつある。
まずいな。コレはダメな予感が。
つーか絶対アシュレイに怒られるな。
「でも、私がいくら誘惑してもアシュレイ様に操をたてる姿は素敵です。コレで他の女にホイホイ釣られるようなら…」
「ど、どうすんの?」
「さて、そんな悪い男はどうしてやりましょうかね。ちょん切ればいいかな?とか思っちゃいます。ウフフ。」
「ハハ…やんないよ?」
どこをちょん切るってんだ。首か?それとも俺の分身か?
どちらにしても風呂にも寝所にも忍び込み放題のコイツからすれば楽勝だ。
レベルが上がってからだは変わった。
とはいえ…戦っている時は銃弾が当たっても弾き返しそうなほどの異様な防御力があるが、事務仕事してる時なんて普通に紙で手を切る。
つまり油断しまくってると普通に首ちょんぱくらいやられてもおかしくない。珍ちょんぱも止めて欲しい。そっちは油断しかしてないからな…