裏70層ボス戦①
アカと一緒に来た時、70層のボスは氷龍だった。
何かすげえ余裕だった気がする。
凍ってる分、樹魔法はもう一つだった気がするが、ヴェルケーロに居る水龍さんよりはだいぶ倒し易かった。ぶっちゃけアカが全部倒した気がするけども…
今まで初回のボスは少しづつアレンジが加わっている。という事は今回も違うのだろう。
俺の予想だと炎龍にモデルチェンジされてるんじゃないかと思うが…
つーか火龍なら楽だ。いつも模擬戦してるし。
「たのもーう!」
「グルル…よく来たな小僧…」
「うおおおおい!喋った!?」
「…話しかけてきたのは貴様ではないか」
「あ、すみません。喋れると思ってなかったもんで、ついビックリして」
「我もドラゴンだぞ。喋りもするわい」
「そっすね。ハハ…」
ダンジョンのモンスターが話した。
これは俺史上で最大級の驚きを…いや、最大はアシュレイが死んだ時だな。
何であんなところで…
「どうした?やらんのか?」
「…やるよ。よし、俺はお前を倒し、80層のボスも倒す!」
「その意気や良し。かかって参れ」
「応!」
話したことにすっかり気を取られていた。
よく考えれば金色の虫もマンモスも、言語は違うが会話は何となく成立していた気がする。
おまけにドラゴンだ。アカだって柴犬みたいな大きさの時から喋ってたじゃないか。
そう思えばどうという事はない。
で、戦う相手だが…炎龍じゃなかった。
勿論氷龍のままでもなく、水龍だった。
水龍と言えばヴェルケーロダンジョンである。
あそこにいるボスは水龍で相性が悪く…案の定、コイツも木矢とか効き辛そうだ。
そしておまけに大きい。
20mくらいあるんじゃないか。
わからん。大きすぎてピンと来ない。
そして大きさも問題だが、何より強者の持つオーラのような物を感じる。
大魔王様や親父のような…そこに居るだけで放たれる圧倒的なオーラを。
こんなの倒せるのか…?
「ええい、ままよ!トルネードアロー!ツリーアロー・ダブル!」
矢の嵐を発生させ、そこに魔力をたっぷり乗せた矢を紛れ込ませて撃つ。
さすがに火は効きづらいだろう。ならば物理で押す。
まあ物理も効きづらそうだが…
でも予想外の事が起これば動揺するが、これは所謂想定の範囲内だ。
水の体に物理攻撃が効き辛いなんてことは誰がどう考えても分かる。
だからゴリ押す。
どうにかして、少しづつでもダメージを与える。
「ペネトレイション!シャワー!タイフーン!」
「ええい!うるさいわ!」
尻尾の一薙ぎで吹き飛ばされる矢たち。
「ええ…?いや、まだ、まだだ!」
ならば、と直接攻撃。
いつもの爪切り短剣で刺す。
刺さるんだこれが。
割と切れ味の素晴らしい短剣はカッチカチの鬼の爪から竜の鱗までブッ刺さる。
「…チクっとしたぞ。それで?」
「…もう入んないの!ふぬぬ!」
刺さるが斬れない。いや、斬れた端から治っているのか。
刃を滑らせると切り裂いた感はある。
でも奇麗に斬れたところからキレイに引っ付いて治ってしまう。
ええい!
「どうしろってんだクソ!ズルいぞ!」
「ズルいもクソもあるか!ヌシの火力が低すぎるんじゃろが!」
「うぐ!?」
ギャーギャーと言い合いをしながら戦う。
物理的なダメージはそれほどでも無い。尻尾の薙ぎ払いも爪攻撃もアカの鱗製の盾は破れない。
衝撃は半端ないが、受け流せない程でもない。
だが、こちらの攻撃は刻みにすらなっていない。ほとんどノーダメである。
もしくは自動回復の方が上回っているのかもしれない。
「まだまだじゃな…出直してまいれ!かあああっ!」
「ぐおおおお…アッー!」
ドゴオオオオオオっと押し寄せるブレス。
と言うか瀧のような水流だ。
耐えていたがとても踏ん張れない。
「あばばば!ぐえ!痛って!」
ものすごい勢いの水流を喰らい、あちこちに体をぶつけ。
…俺はボス部屋の外まで押し流された。
「ゲホ!ゴッホ!!…ハァ…あ!?」
そして押し流された先は70層の入り口…ではなく、ダンジョンの入り口だった。
つまり振り出しに戻ったのだ。
「はあ…帰るか」
このまま無策で挑んでも時間を無駄にするだけでどうにもならなさそうだ。
食糧はまだ有るが…まあ帰ろう。
しょうがない。
『ええい、ままよ!』って表現好きなんですけど、勿論現実で使ったことありません…
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