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氷獄

「ざぶい」

「おれはへっちゃらだぞ?」


65層は例えていうなら南極だった。

ダンジョンの外は真夏でクソ暑いのに、中に入ると南極だ。

温度差で死ねる。


いやまあ、北極かもしれんが…テレビで見た極地付近の真っ白で氷の山がある風景だ。

山があるからやっぱり南極か?まあ地球基準ならそうなるな。


水龍装備には低温時にも耐性があるはずだと鍛冶屋も言っていたが、それにも限度があるようだ。

たぶん氷属性魔法を一時的に浴びるくらいなら問題ないんだろうけど、外気温が常時マイナス何十度って環境だとやっぱり無理なんだな。

だんだんと鎧が冷たくなってきて、今や氷を服に張り付けているようだ。


「帰ろ」

「おれまだいけるのに!」


冷暖房標準完備のドラゴン様とは違い、ヒトカスは熱くても寒くても駄目なのだ。

という訳でぐずるアカを連れて帰還。

帰ったらダンジョン前にある風呂屋に直行だ。



どこのダンジョンも入り口前は発展している。

いわゆる門前町や城下町のようなものだ。


人が集まる所には自然と宿屋や食べ物屋が出来、雑貨屋から専門的な店までドンドンと出来てくるのだ。うんうん、うちの領もこうやって自然な発展をさせないとな。

今はあんまり特殊な産業も無く、急に増えた人口に物を言わせて無理やり発展させているようなものだ。人がいなくなる切っ掛けがあると途端に穴が開いた風船みたいになってしまうだろう。


「ぶへええ…きもちいいなああああ」

「きもちいいのだ」

「コラ、風呂で泳ぐな」

「おー?」


アカは大きな湯船を器用に泳いでいる。

翼があるから泳ぐのに邪魔なんかじゃないかと思ったが全然そうでも無い。

むしろうまく翼を使って泳ぐ。不思議だなあ。


「しかし、火耐性の次は氷耐性?かな。」

「前のはダメなのか?」

「あー…ちょっと被ってみたけど全然だめだったわ」


以前に30層辺りで寒い層があった。

その時に使った装備を帰りに少し試してみたが、まあ少しは変わるかな?という程度だった。

10層だったかな?のボスから採れた焼けた毛皮も試してみたが、そいつはまあ…ただの布と大差ない感じだった。


極寒の世界ではすべての常識を疑った方が良い。

金属鎧は肌に張り付いて取れなくなるし、汗をかくとそこが凍傷になる。

涙は凍って目が閉じられなくなる、あるいは開かなくなるし…何であんなところいかなきゃならないんだ。


「みんなどうしてるんだろ」

「きいてみたらいいだろ」

「せやな」



そんな訳で聞き込みをしてみる。

師匠は忙しそうなのでダンジョン前の酒場でメシを喰いながら情報収集である。


「久遠の塔65層?そんな上層の情報はそんなにねえな」

「そうなの?」

「すげえ寒いって層だろ?そこら辺で断念する冒険者が多いんだよな、なあマスター」

「ああ。でも氷狼族の奴らとかは攻略できるらしいぜ?」

「それって元々寒さに強いからだろ?じゃなくって俺らが攻略できるようにしたいんだけど」

「エルフとドラゴンか。ドラゴンは大丈夫だろ?もうそいつに任せてダボダボのコートでも毛布でも着て付いて行けばいいんじゃねえのか?攻略してる奴らも大概はそうしてるぜ。」

「うーむ。」


酒場のマスターと常連っぽい酔っ払いたちの情報だと『パーティーで分業して、お荷物部隊は黙って付いて行け』と。

まあそれはそれでいいんだろうけどな。

あとでソロで登りなおす時に困るんだよね…耐寒装備か。

また宿題が増えたな。

というわけで最低限の耐寒装備だけ購入して、アカに引っ張ってもらう事になった。

この階層をクリアしてしまえばあとでお金を稼いで本格的な耐寒装備を揃えよう。

そうだそうしよう。



結果からいうと65層から70層までは地獄のような風景だった。

コキュートス?だっけ?氷の地獄。

イメージ的にはあんな感じだが。

俺は剣を握る事も出来ず、ひたすら木矢で足止めをしていた。


以前は寒い環境だと木矢の足止め効果も悪かったが、魔力を多めに仕込めるようになってからはそれもうまく調整できるようになった。

アカは元気いっぱいで俺は付いて行くだけで何とかなったのだった。


ボスはどこかで見たような氷の龍で…まあアカさんソロで余裕だった。

アカ曰く、ヴェルケーロの水龍より物理攻撃が通りやすくて楽だったんだと。

ひょうごく、で変換すると一番に出て来るのは兵庫区なんですね…

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