夢と装備を詰め込んで
アーク歴1502年 漆の月
ヴェルケーロ領
探索は順調に進んだ。
素材が多くあったので水龍装備は順調に完成し、俺の鎧は夏でも涼しい素敵仕様に生まれ変わった。
素晴らしいな。
まあ今までの鎧だってそれなりに耐性はあったようで、試しに何も無しで火山階層に入ったら息もできない程の暑さだった。火事の時に高温の煙を吸い込んで肺がやられるというが、まさにそうなってしまいそうなほどの暑さ。いや、もはや熱さだ。
火龍であるアカは元気いっぱいだったが、ひ弱な人間(魔族)の体では何かしらの防御をしないととても無理だ。
という訳で火山の熱を物ともしないドラゴンと水鎧に身を包んでエアコン完備の俺はのっしのっしとダンジョンを進んだ。
主に防具の性能のおかげで戦闘も楽勝。水龍の牙を使った武器も火属性のモンスターをザックザックと切り裂き、向かうところ敵なしである。
主に装備の性能のおかげで勝つ。素晴らしいな。
「やっぱり装備は偉大だな。装備ゲーになるのも仕方ない」
「そうびげー?ってなんだ?」
「装備ゲーってのは、戦闘において中の人より装備の比重が大きいと言うか…うーん。なんて言えば良いんだろ」
プレイヤーの上手い下手やレベルの上下よりも持っている装備が重要な…という事なのだが。
何と説明すればいいやら。
「アカの爪はどうだ?効果あるか?」
「ちょっとあるきづらい。あんまりつよさはわかんない」
「ダメじゃん」
アカは右手の…人間でいう所の人差し指だけ付け爪をしている。
そこだけ爪が赤と青の変な模様になって、少し長くなっているので4足歩行では歩きづらそうにしているし、戦いの時は爪で切り裂くわけだが…一本だけ使うと言うのも逆に難しいようだ。
じゃあ全部の爪を付け爪にしたら?と思うとそれはそれで気持ち悪いから嫌だと。難しいな…
「じゃあ付け牙とかどう?」
「しゃべるととれそうだぞ」
そうだな。
何かの漫画でクシャミと一緒に入れ歯が飛び出すようなコマがあった気がするが、まさにああいう事になりそう。
ただし、出て来るのは入れ歯じゃなくてドラゴンの牙で。
その時、目の前に俺が歩いてたりしたら背中がザックリいきそうだ。…やめとこ。
ペットのクシャミで死亡とか死因として絶対に嫌だからなあ。
「やっぱお前の装備はアクセサリーとかでいいか。混乱とか呪耐性?水属性や氷属性耐性みたいな装備でどう?」
「よくわからん。それでいいぞ??」
「そうだな。また今度お金溜まったら買おう」
コイツが混乱して俺の方にブレスとか撃って来たら死んでしまう。
何としてもそれは避けないと。
探索はほどほどに順調だ。
火山地帯は65階層で終わったみたい。中ボスは溶岩を飛ばしてくる虎のような生き物だった。
強いかと言えば強い。だが、火属性耐性が物凄く上がっている俺らには大した障害ではなかった。
ダメージ-90%って感じで、見た目より全然熱くないし衝撃も大した事はなかった。
でもまあ、メラメラ燃える溶岩を飛ばしてくるのだ。
たぶん普通の装備だと掠ったら服が燃えて戦いになんてならなかっただろう。
やはり装備の力は重要なのだ。
攻撃力の方もやや決定打には欠けたものの、順調にダメージを積み重ねて削り倒した。
まあそれについては仕方ない。アカのブレスは全く聞いてなかったし、俺の武器は水属性だけど所詮は短剣。一撃大ダメージを狙えるような武器ではないのだ。
ゴンゾの所で見せてもらったリリーの武器は水龍製の長剣だった。
同じモノを作ってもらおうかと思ったが、どうせ片手じゃ扱いづらい。
今回は装備の具合を見たかったので少し控えめにしてもらっていた。
まあソレで余裕だったという事だ。
「まあらくしょーだったな」
「らくしょー!らくしょー!」
まあこれならソロで倒せそう。
そう思うような相性の良さだった。
今更だけどやっぱりこのダンジョンは装備ゲーなんじゃないか。
本格的にソロ探索することになったらアシュレイバッグに装備いっぱい詰め込むことになりそう。
夢と装備を詰め込んで独り楽しいダンジョンダイブってわけだ。
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