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勇者は3倍つよい

OSHIGOTOを何とか片付け、遅めの晩飯を食っていると来客があった。

女性の冒険者が来ているとの取次ぎを聞いたマークスに『おやっ?』という目で見られたが、俺は何にも悪い事はしていない。していないぞ。


「誰かに手を出すならまずはマリラエール様からですぞ」

「わーってるよ」

「私は何時でも構いませんよ」

「わ、分かってるよ…」


止めろよマリア。マークスが見てるだろ?

じゃなくて。


マリアに手を出す気はない。

忍者だからどうこうとか部下だからどうこうとかいうのを除けばメイド服着た美人のお姉さんだ。

ぶっちゃけすんごく好みだけど…ダメ!

出したいけどダメ!


「マリア殿ならまあ。マリラエール様に見つかると大変叱られそうですが」

「出さないよ!」


ウッフンとしなを作ってこちらを見るマリアを見ないようにしつつ、リリーを呼ぶようにと指示を出す。

そう言えばエルトリッヒが落城して、逃げ出した時以来まともに顔を合わせたことがない。



あれから…そうか、あれからもう4年か。

あの時はまだ小学校の高学年くらいだったが、彼女は純粋な人族。

きっと大きくなっているだろう。


俺?俺はあの時小学生くらいで今も…って俺の事はいいんだよ!




「リリー・エルトリッヒ様が参られました。」

「入れてくれ」

「失礼します!リリー・エルトリッヒです!」

「カイトです。久しぶりだね」

「ハッ!」

「もうちょっと崩した話し方でいいんだけど…」

「カイト様は上官であります!」

「…そう。まあいいけど」


こんな喋り方をする子だったっけ?

覚えてないけど普通にお姫様っぽかった感じがするのだが…まあいい。

奇麗な金髪に紫の目、基本的な容姿はほとんど変わらない。

変わったのは大きくなった身長と胸だ。

大変けしからん。


「大きくなったな…てか俺抜かれてない?」

「身長では元々抜かれっぱなしだった気がしますが」

「うるさい!…いまいくつになったかな?」

「16歳であります!」


身長の事を聞いたのだけど。

まあいいか。


あれ?俺って今何歳だ?えーっと???84年生まれだから18か。コイツの2個上か。

しかし、自分の年さえ把握できないとは。参ったな。


「とまあ、呼びつけてすまなかった。ゴンゾの所に行ったら優秀な冒険者がいると聞いたので誰かと思ったらリリー殿だったわけだ。」

「ハッ」

「エルトリッヒから脱出した時は武芸なんかあまり出来そうに見えなかったんだけど…良い師についたのか?」

「師匠はシュゲイムとトルネルです!」

「トルネル…ああ、あの隊長か」

「ハイ!」


トルネル隊長はエルトリッヒから脱出するときに色々世話になった。

こっちに来てからさっぱり情報を聞かないが…?


「トルネル隊長は今なにやってんの?」

「師匠は田んぼをいじりながら後進を鍛えています!」

「半隠居か。隊長まだ若いだろうに…いいなあ(ボソッ」


農業をしながら後進を鍛える。夢のような生活である。

ちょっと羨ましいから部隊の指揮官に指名してまた忙しくしてやろうか。


「ヴェルケーロ領内でトルネル殿の教えを受けた者は人族だけに限りません。魔族の中にも多くの者が弟子になっておりますな」

「そうなの?」

「そうです。兵の中にも彼を慕うものは多いようですな」

「ほへー。まあいい人だったって記憶はある。そんなに腕が良かったかどうかは覚えてないな…」

「トルネル師匠本人の武術の腕は、あくまでそれなりです」

「そうか…」


まあ名選手が名コーチ、名監督になるかと言えばそうでも無い。

凡人の方が良い指導者になると言うのはよくあることだ。


ただまあ、天才を教えられるかどうかは別の筈だ。

目の前のリリーはどう見ても天才タイプである。

ギフトを持たない一般的な人族は基本的にいくら鍛えてもレベル20程度で頭打ちである。ダンジョンでいうと久遠の塔の10階層のボスが倒せるかどうかという所だ。

魔族は人族の3人分の強さがあると言われているが、それでも魔族の一般人に30階層のボスは厳しいだろう。


リリーは水龍の単独撃破に成功している。

つまり50層程度のボスを倒すくらいの実力があるという事だ。うーむ。


「何でそんなに急に強くなった?何かいいギフト貰ってたっけ?」

「私には魔眼がありますので…」

「そうか。魔眼の使い方が分かったのか」

「はい。未来見の魔眼でした。」


ほーん?

つまりは未来が見えるという事か。

どのくらいがどういう風に見えるのかは分からないが、戦闘ではかなり有利に働くだろう。

戦場以外ではどうなのか。ちょっと俺の未来でも視て欲しいものだ。


「じゃあちょっと占いを…いや、なんでもない。それで、魔眼以外にギフトは何かある?」

「その、少し言い辛いのですが」

「ん?」

「魔眼の勇者という称号?があります。他にも一騎当千と快刀乱麻というギフトがあります。」

「勇者か…」


『勇者』もギフトの一つだ。

勇者の称号を持つ者は魔族特攻の効果がある。

つまり、勇者は対魔族戦では対人族戦の3倍強いと言うクソチート性能を誇る。


でもダンジョンのモンスターに対しては同じはず。

つまり彼女は素で水龍を倒し、さらに魔族にはその3倍の力で襲い掛かるのだ。

うん、俺死んじゃうな。


そしてギフト。

一騎当千に快刀乱麻。ギフトが二つある。いわゆる二重能力者(ダブル)だ。

勇者もいれると三重(トリプル)である。ああ、魔眼もあるか。

4つか…


普通に俺よりはるかに強くて何の可笑しさも無い。むしろ当然と言った所だ。

くやし…くなんてないやい!チクショウ!





一寸だけリリーを仲間にしようかと思ったけどそれはやめた。

ダンジョン攻略のためにはもっとパーティーの人数を増やせばいいとは思うが、そうすると経験値も分散していくし、俺はほぼ足止めしかしなくなる。


俺が足止め、拘束してる間に他の人が倒すのだ。

すんげー効率良さそう。


でもそれは困るのだ。

ただダンジョンをクリアしたいと思うだけなら、効率的にもそれが正解だろうとは思う。

でもそんなので後々ソロでやっていけるとは思えないのであまり人数を増やしたくはないのだ。


…という訳でリリーは俺の欲しい素材を集めてくれるファンネル部隊として頑張ってもらう事になった。水龍素材はたっぷりあるので次は火竜?ああ、火龍の鱗はアカにもらえばいいな。

何なら寝てるときに勝手に鱗を剥いでヒールしても良い。

バレたらめっちゃ怒られそうだけど多分バレない。



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