武闘会の準備
短めです。
お祝いでお金をばらまいた。
おかげで領民の購買意欲は増し、商店街にもお客さんが増えたとの喜びの声が聞こえた。
ところが、良い面もあれば当然問題になる事もある。
この間領民になった避難民たちと以前からずっと領民やってた者たちとの間で少し揉めたというのだ。
何で?
「以前からの者も最近領民になった者も平等に銭撒き大会に参加したからという事です」
「えー…?そんな事で揉めちゃうのか。参ったな。出来れば新規の人に生活必需品をお買い物してもらおうと思ったくらいなんだけど」
「それと、子供の方は良いとしても大人は大人で体格差が問題になると…」
「あー。まあちょっと思わなくもない」
親父のような2mを超えるバケモンと俺のようなちびっ子が並んだ場合、上から降ってくる餅…今回は銭だが。銭を拾いやすいのはどちらだろうか。
そりゃ親父だ。
俺みたいなのは大きな大人の取りこぼした奴を地面に這いずり回って拾うしかないのだ。
そして手を踏まれる。畜生。
「…わかった。これからは銭撒き以外にも目玉を作ろう。それに催し物も増やそう。目指せ月一回のお祭り!だ。」
「そうですな。老若男女、其々に活躍できる場が欲しい物ですな」
「そうなると何が良いかな?えーっと、トランプとか将棋とか?かけっことか?ああ、釣り大会でもいいな。それに戦い…天下一武闘会とか???」
「良いと思いますぞ。他に案はありますかな?」
「え?ええっ?うーん。えーっと???絵とか服とか工芸品とか???ああ、美味しい食べ物とかどうだ?酒とか、野菜とか肉とか…ああ、それらを用いた料理大会なんてのもいいかもな。大食い大会なんてのもアリかも。忘れちゃいけない野球にサッカー!?」
「素晴らしいですな。カイト様の発想には驚きを禁じえませぬ。一部ついていけないものもありますが」
うん、そうだろう。
無茶振りされてひねり出したが、ほとんど全部前世に会ったモノのパクリだ。
最初にそういうの思いついた人はマジですごいわ。
そしてこの世界でトランプも将棋も無ければ野球もサッカーも俺が暇つぶしに遊びでやったくらいしか無い。バットはその辺の枝でグローブは素手、サッカーボールは布製のふにゃふにゃか木の塊のめちゃ硬い奴だ。
「ああ、芸能部門もいいか。歌とか音楽とか書物とかもか?あとは茶碗とか???」
「茶碗ですか?」
「良い仕事してますねえって感じで…あー、いや別に茶碗じゃなくていい。焼き物とか木工とか、工芸品とかって事だよ。うーん、審査員の気に入る品ってだけで選ばれちゃいそうだけどまあソレはソレでいいんじゃないか?」
素人が素人を審査するのだ。
後の世の芸術家が見ればなんてアホな事をしてるんだと思われそうだし、この絵がいいの?カイトってホントに審美眼ないんだなあ…なんて言われそう。まあソレはまあソレでいいだろ?
どうせ抽象画なんて誰か声がでかい奴が良いって言えば良いんだ(偏見
「よし、という事で何月は食べ物、何月は芸術、何月は武闘会って感じで決めていこ」
「ハハッ!」
そんなこんなで今年の予定は埋まっていった。
とりあえず壱の月は新年の祝いで銭撒き大会、弐の月は武闘会って事になった。
まあ俺は何でもよかったが、聞いてみたら武闘会したいって意見が多かったのだ。
「まあ俺は何でもいいんですけどね」
「坊ちゃん、そこの木が邪魔です」
「はいはーい」
そういう訳で武闘会の会場を作ることになった。
イメージはモロに龍のタマタマを集めるマンガの武闘会である。
広さはそこそこ…10m四方じゃちょっと狭い?
だからって25m四方は広すぎじゃないか?うーむ。
イメージ画を描いたら俺とマークスと二人でざっくりした舞台を作ることに。
木担当と土担当である。
あとはゲインに控室に使う小屋と観客席を作らせたら終いだ。
まあ適当に作った。
客席は階段状にして、所謂すり鉢状の底に舞台がある作りだ。
排水しっかりしなきゃ台風が来たら沈むな…と思いながらの作成である。
何せ、似たような作りの溜め池は今までいっぱい作って来た。
途中から『ここに水溜めて池にしよ』って言われても『そうっすね。』と思ってしまうレベルである。
ルールも一応作った。
武器は禁止。
素手、裸足で基本的に舞台から落ちたら負け、相手を殺してしまっても当然失格だ。
どちらかが『参った』するか『10カウント』か、『抑え込み30秒』とそれに『場外』で決着だ。
柔道やらの抑え込み30秒で一本というのは、戦場で30秒抑え込むことが出来れば首を獲れるという基準らしい。
流石日本人、おっそろしい考え方だ。
400年前まで全力で首狩り族やってただけの事はある。
現代人には欠片も残っていないアグレッシブさだ。
いや、残さなくていいぞ。
次回はドキッ!半裸の男同士の魂のぶつかり合い!『発気揚揚!』