50層
装備を更新して47層のカブトムシ地帯に戻った。
虫くんたちの攻撃は全然…いやまあ、前回に比べればあんまり痛くない。
ナイフのようにとがった角で突っ込んでくるが、外套を突き破ってくることは出来ないようだ。さすが龍皮といったところか。
それに、リングのおかげで受ける衝撃も前回に比べれば半分以下になった感じがする。
痛い事は痛い。が、それほどでもないって所だ。
「余裕だな!?」
「よゆー!よゆー!」
カブトムシの背側はすごく硬いが、腹側は大した事はない。
ご先祖様の爪切り用短剣で腹からスパスパ斬り、刺せる。
神殺しの短剣なんていらんかったんや。爪切りで十分なんや。
買えなくて悔しいから言ってるんじゃないんだからね!
「ふははは!らくしょーだな!」
「そうだな。かかって来い来いだ。」
アカも前回の鬱憤を晴らすかのようにブレスで、爪で薙ぎ払う。
そうしてサクサクと47層、48層、49層をクリアした。
出てきたのはどれも虫。
虫たちの攻撃方法は尖った角で刺す、牙で咬む、それから変な汁を飛ばす。という物だった。
咬んでも龍皮は突き破れず、汁も皮に弾かれる。
樹龍王と言うだけあって樹属性魔法とも相性がいいらしく、俺の魔法も強化されている感じが凄い。
「高かっただけのことあるなあ」
「おれもいたくない!このキラキラきにいったぞ!」
指輪は程よくピカピカしていてアカが好きそうな見た目だ。
そう言う意味でもいい買い物だったな。
そうしてたどり着いた50層。
何となくわかる。このボスは虫系だ。やだなあ。
「俺、虫って嫌いなんだよね」
「なんでだ?うまいぞ?」
「食うな…ああいや、まあ食ってもいいけど」
虫はすごく栄養価が高いんだっけ?
でも、『体にいいから虫食えよ^^』って言われて喜んで食べる日本人はどのくらいいるだろう?
一部の地方では蜂の子やらイナゴやら食べるらしいけど、喰いなれてるなら兎も角…
まあ虫も言ってしまえばエビとかと大して変わらんと言われたらそうかとは思う。
でもじゃあ食べろっていわれると…
「いかないの?」
「行くよ!ちょっと考え事してただけ!」
いかんいかん、これからボス戦だ。気合を入れろ!
「よし…行くぞ!」
「おー!」
気合を入れて階段を上る。
そしてたどり着いた50層。
ただっ広い、いかにもボス部屋です。って階層だ。
そこにいるのは…
「あれ?さっきまでと同じ虫か?」
「むしだ!もえちゃえ!」
「あっ!ちょ!」
ボス部屋で、そこにいるのは虫の塊。
先ほどまでとは少し様相は違うが、虫だという事は同じ。
…そんなわけがない。
どうせボスは急に強くなるに決まっているのだ。
俺はそう思って動かなかったが、アカはそうでも無い。
爬虫類で虫をムシャムシャ食うくせに虫嫌いのアカさんは何も考えずにブレスを吐いた。
10mくらいありそうな虫の塊、その中心部を襲う火球はおおよそ直径1mくらいあるだろうか。
最初は細い火炎放射器か、ソフトボールくらいの火球か、ってくらいだったアカのブレスも成長したものだ。うんうん。
なんて思ったのがやはり悪かったのか。
虫たちはブレスが迫るとギュルッ!と動き、華麗にそこだけ丸くくり抜いてブレスをかわした。
「うそお?」
「よけた!なまいきだぞ!えいえい!」
ポンポンっと打ち出されるブレス。
そして2連弾になってもヒョイヒョイっと避ける虫たち…そしてそのままこちらに向けて大群が襲い掛かってくる。
「…これすごくヤバい気がする」
「ぐぬぬ!むしのくせに!」
今までは虫が襲ってきてもせいぜい数百匹だった。
その数百もまとめてかかってくればブレスで処理できたので、一度に相手する数は多くて20匹くらいだ。
それが何千単位で襲い掛かってくる。しかもブレスを避けながら…
「アローストーム!アロートルネード!アローストーム!はわわ」
「もえろ!もえろ!火!えーい!あわわわ」
矢の嵐も矢の竜巻も大して効いてない。
何百という矢は大半が外れ、当たってもその一匹にしか効果が無い。
アカのブレスも近寄って来ただけ回避は難しくなっているようだ。
何匹を、上手くいって何十匹を巻き込む程度。という事は残りが全部襲い掛かって来て…
「ぎええええ!いてててて!」
「痛い!ぐへ!足ぃいいいい!アカン!逃げるぞ!」
「てったい~!」
虫の大群の前に俺たちは何もできず。
無様に階段まで何とか逃げ切った。
ボス部屋は門で閉ざされて逃げられないとかじゃなく、サクッと階段から前のフロアに戻れる仕様だ。おかげで助かったわ。
いまさらですが、ボス戦は撤退自由だしアイテムで即戻りも出来ます。
死んだらそのまま終了なのに初見のボスでも倒すか死ぬまで出れないとかゲームにしても酷すぎる鬼畜仕様ですよね。せめてレベルダウンとかアイテムロストで(白目)
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