いまならトマト900万個!
~前回のあらすじ~
カブトムシにボッコボコにやられたので装備を整えることにした。
金がなかった。
以上!
短剣一本が5億z、大体5億円って単位がぶっ飛びすぎだろ!アホか!
…と思ったけどそう言えば前にぼったくり武器屋で一式そろえようと思ったら5億zだったことを思い出した。
装備一式で5億、より上位の短剣1本で5億。
ならそんなもんなのか?俺の感覚が狂ってるだけなのか??
「あの、そちらの短剣はアルカネイオスの短剣ですよね。そちらも売れば1億ほどにはなります。武器防具はダンジョンで主に発見されますが、高い装備を付けてダンジョンに潜ればそれなりに稼げてすぐに取り戻せますので…」
「それもそうか」
目的のためにケチってる場合ではないんだな。
そんな訳で俺はお買い物を続行することになった。
と言っても今欲しいのはあのカブトムシを何とかできる装備、つまりは火力より防御力だ。
倒すのには問題なかったからな。攻撃がやたらヤバかっただけで…
「それで買ったのがこれか。幾らだったのだ?」
「二人で9億くらいです。ああ、これだけあれば鍬が何本買えるのやら。トマトが何個分…」
「けち臭い事を言うな。全くお前は…」
買ったのは龍皮の鎧、ではないな。大きめのコートだ。
『樹龍王の外套』と言う名前の付いた装備だが、もとは汎人族の女性魔術師が愛用していたらしい。
女性魔術師の使っていたコートなのに俺の背丈だと少し余る。どういうことだ?
…まあ良い。
とりあえず龍の皮なら、包丁持ったカブトムシが突っ込んできても鎧ごと貫かれて手や腹に穴が開くって事はないらしい。
でもそれってもろに衝撃が来て下手すりゃ骨が折れるんじゃないの?ってことで衝撃を軽減するアクセサリー『耐衝の指輪』を買った。勿論アカにも。
どういう理屈で衝撃を軽減するかは分からん。
でもまあ防弾チョッキを着ていて撃たれた場合、銃弾は防げても衝撃で肋骨が折れて肺に刺さったってのは聞いたことある。
前回も盾に貼ってあるアカの鱗はカブトムシの角を通さなかった。でも盾を括りつけていた腕の肉は痛み、骨も折れるかと思った。衝撃は出来るだけ受け流していたつもりだったが、まあそう上手くもいかない。数が多かったからな…って事を相談すると『耐衝の指輪』勧められたのだ。
んでその指輪は俺の指にはブカブカで、アカの指にも合わないので紐を付けて首からつるしている。
一応これでも効果があることは確認済みだ。
それにしてもお高い。
装備3個で9億って…
鍬一本で10万くらいだが、ということは9億ゼニーは鍬9000本か。
多いようでそうでも…いや、やっぱり多いな。
うちの領の老若男女に一人一本配ってしまえる。
どうすんだそんなに鍬ばっかり。鎌やスコップも配れ。
トマトだってそうだ。
物価の高い王都で一つ100ゼニー、うちの領ならタダ同然で売られている。
最盛期には公営の畑は勝手に持って帰っていいってレベルなのだ。
王都価格でも900万個のトマト。
みんな腹いっぱいになる。でもそれだけばら撒くと売れなくなるだろう。益々数が必要になるな。
ちょっと意味わかんないっすね。
「まあ仕方ない。武器防具は高いものだ…金は足りたのか?」
「貯めてたアカの抜け鱗が役に立ちました。それと今まで持ってた装備を買い取ってもらいました。それと領地のお金も…」
俺がこんなに金に苦労してんのに師匠は『まあ仕方ない。』で済ませた。
これだから金持ちのお嬢さんは…
師匠に付けてもらったザイールさんは商人半分、官僚半分と言う人材だったようだ。
彼の鑑定額が本当に正しいのかと言う疑問は尽きないが、この世界の物価がおかしいかと言えばそうでも無い。
俺が今までダンジョンで稼いだアイテムはぜーんぶタンスの肥やしになっていたのだが、それらを売り払うと3億近くになった。
それに今装備している『エアリスの外套』を売って、アカの抜け鱗を売って…そして装備を更新して差し引き2億ほどの支払いで済むようだ。そのくらいなら領地で出た収益から払える。
後は小切手のようなものを渡して終わりである。
「領民たちが稼いだお金を個人の武器に使うのはどうかと思いましたが…」
「その分ダンジョンで稼いで国庫に…いや、領庫にか。返納すればいいだろう。まあ、途中で命を落とさんようにだけは気を付けてな」
「ハイ」
死んだら装備品はダンジョンに吸収されてそのうち宝箱になるらしい。
つまり何億もの装備がダンジョンから出てくると言うのは、それだけ高額な装備をもった冒険者でも死んでいるという事。油断は禁物だな。
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