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製紙


アーク歴1501年 壱の月


ヴェルケーロ領



異世界と言えば紙だ。そう、製紙である。

羊皮紙とは何かご存じだろうか。


羊の皮ようにごわごわした紙…ではない。

羊の皮を剥いで、それを利用して作った紙だ。


具体的に言うと剥ぎ取った羊の皮を消石灰に漬けておき、奇麗に毛や脂肪を除去してそれからピンと引っ張った状態で乾燥させ、切り出して成型する。

文字にすると短いが、大変な苦労を伴う。おまけに羊の皮を使うので当然羊を殺している。

どうせ毛を採ったり肉にしたら殺して食うのかもしれんが、生産性はどう考えても低い。


この世界には割と普通に分厚い辞書みたいなのもあったし、凄く書きにくい変な紙も今まであった。でも木簡・竹簡は見たことなかったから良く分かんねーけどそういう文化なんだと思ってた。

変な紙だなと思ったけどあれが羊皮紙だったらしい。

分かんねえよそんなの。

現代に暮らしてて羊皮紙なんて見る機会ないでしょうが。



領主様になってイヤイヤ書類仕事が増え、ふっと気が付いて紙の値段を聞いてみてビックリである。

無茶苦茶高いのだ。

日本円でいうと1枚2000円くらいするのだ。勿論このド田舎までの輸送費込みで、だが。



現代社会に生きていた俺としては馬鹿じゃないのと思うような金額である。

A4のコピー用紙なんて500枚入って500円とかその辺だ。安い所なら400円を切っている。

つまりA4の紙が1枚=1円程度である。

それが1枚2000円…うーん。高い。


「紙作るか…高すぎだろ」

「作れるので?」

「何となくだが和紙の作り方は分かる。」


小学校の時に遠足で見学に行ったことがある。

コウゾやミツマタの木の皮をドロドロに茹でて繊維を取り出してそれを漉く、だと思う。

細かいところは覚えてないけど取りあえず木の皮だ。


材料はそれでいいとして。

紙漉きの機械…というか機構自体もなんとなくわかる。


俺が見学したところでは上から釣ってあったが、アレは手が楽になるだけで別に無くても問題ない。

要は枠と漉く為のすだれのようなのがあればいい。なんならザルでもイケるはず。繊維が少しづつ引っかかり、水分が抜けることが出来るような物なら何でもよいはずだ。


肝心の材料もすだれも魔法で作れる。

そう考えたら俺と相性いいな。よし、作ろう。


「ゲインおるかー?」

「坊ちゃん…またですかい?」

「今回だけはお前が頼みだ。これこれこういうのを作ってだな。こういう風に紙を…」

「今回だけは、…の部分は割と毎回聞いておりますが…はあ、なるほどなるほど」


文句を言いながらゲインはサクサク作る。

そして俺は木の皮を剥いで茹でる。

灰か石灰か何かを触媒に使ったほうがたぶんいいと思うんだが、それが何かはこれから頑張る人に任せよう。


茹でたらボコボコ叩いて繊維をほぐす。茹でた皮は茹でた皮だ。ほぐさないとどうにもならない。

手で揉んでもどうにもならないので綿棒でバンバンと叩いてみる。

こんなんでいいのか?と思いつつほぐす。


解れてきたら余計な部分、汚い所を取り除き。

水にドボンして漉しはじめる。

何だか粘りが無いのでノリを追加。米から作ったノリだが大丈夫か?


漉いてみたら案外いける。

よし、って事で乾かす台が…ないな。


「忘れてた。乾かすから台作ってくれ。」

「おうよ」


サクサクッと新しい机が出来た。

そこに枠ごとエイッとひっくり返し、すだれをゆっくり剥いでいく。


「ほー。乾いたら紙になるんで?」

「たぶんこれでいいはずだが…まあ材料とかは適当だからなあ。たぶん茹でる時に何かを加えたと思う。灰とか?石灰だったか?わかんね。あと、適当にノリを追加したけど何かもっといい材料があるんじゃなかったかな。何だったかな木の実だか根っこだか、そんなのだった気はするけど…」

「調べろって事だろ?はあ…」

「すまん。後で興味ありそうな新人連れて来るよ」

「早めに頼むぜ、坊ちゃん」


…という訳で俺が放置している間に紙漉き工場はスタートした。

コウゾとミツマタもいっぱい植えた。

植えたと思ったらホイホイ育つ。

樹魔法の本領発揮である。



マリアの所の、つまり忍者部隊の者が紙に興味あるとかでそいつを主任に任命して研究しつつ生産させた。少し研究したところで元々買ってた紙と大して変わらない品質になり、改良に次ぐ改良を繰り返すうちにどんどん品質は良くなっていった。

薄くて頑丈で、それでいてお安い。そんな紙が出来上がったのだ。


「よし…これからはこの紙を使おう。いやあ、安上がりでできるようになって良かった良かった。」

「そうですな。コストは抑えられるし産業は増えるしで素晴らしいですな。」

「輸出できるほどの量産に至るまでには随分かかりそうだけどな…まあいいか。」


別に儲けようと思った訳じゃない。あんまりコストが酷いから抑えようと思っただけなのだ。将来的には美濃和紙みたいにブランド化して…ヴェル和紙?名前の響きはそれほど悪くないような、むしろ良いような…???


あとでシュゲイムに聞いたら元避難民たちの間にも紙漉きを知っている者がいたみたいだ。

そうならそうと早く言えよ!


内政の定番ですね。

私は小学校の時に学校の遠足で紙漉きを見に行きました。

当時は友達と遊びながら何となく見ていたけどもっとちゃんと見ておけばよかったなあと思う事は多々あります。

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