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収穫祭の準備

アーク歴1500年 玖の月


ヴェルケーロ領



ヴェルケーロ領には山間部と平野部がある。

平野部は避難民を上手く連れて来たね。って大魔王様にご褒美で貰った領地で、去年からはここでエルトリッヒ公国から移住してきた人間たちのグループによる稲作が行われていたのだ。


もちろん人間たちだけではなく、魔族のみんなも混じっての村であり、一緒に種まきをして草を刈って…晴れた日も雨の日にも一喜一憂して作り上げた米だ。


避難民たちは米づくりの経験があるという事なので任せっぱなしにしてた。

なんかおかしいなと思ってよく見ると植え方が適当だ。日本で見る田んぼと違うと思った。


なるほど。どうやら直播きだったらしいな。

来年からは暖かい所で発芽させて、水を張った田に正条植えをしないと。

感覚を均一にするには箱みたいなのを転がすんだっけ?

縄を田んぼの両側から引っ張るんだっけ?

それにしても…


「ふがああぁ。だめだ。腰が痛い…」


屈んだままの姿勢で鎌を使って稲を刈る。刈ったら即次の。

何束かまとめて刈ったら束ねて一度地面に置き、また屈んで刈る。

結構疲れる。というか腰に来る。


俺が梃子摺っているというのに隣でやってるジジイのペースがやばい。

赤くもないのに俺の3倍速い!


「領主様、まだまだこれからですぞ!」

「おお?ジジイかと思ったらシュゲイムかよ。何でそんなに慣れてんの?」

「騎士になってからも親戚の田んぼを手伝わされておりましたので。」



ほーん。ええのんか王配が田んぼいじってて?

と思うけどまあエルトリッヒ的には全然アリらしい。そう言うモンか。


「これって収穫してすぐ食べてもいいんだっけ?いや、干したっけ??」

「通常は干して、それから脱穀して精米という流れになります。すぐ食べたいなら魔法でという事も出来なくはありませんが」

「それは…食べたいけど我慢だ。んでその間にお祭りの用意をしよう。うん、そうしよう」


いわゆる収穫祭だ。

祭りと言えば出店である。

タコ焼きに焼きそば、綿菓子にお面屋さんに射的に怪しいくじ引き。

射的か…いい加減鉄砲開発どうにかしないとな。今のゴンゾならパパッと試作できそうだが。


あとはイカ天にイカ焼きに…だめだ、海産物は厳しい。

川エビ焼きで大丈夫か?うーん?

チョコバナナはチョコがないしバナナも無い。ダメだ。

リンゴ飴はリンゴはあるが飴が…砂糖がなあ。


あとはなんだ?かき氷にフランクフルト??この辺はいけそうだが。

うーん、食べ物ばっかりだな。

あー、花火か。火薬がなあ…色の悪いただの火花になりそうだが…まあやってみるか。

駄目なら火魔法バンバン打ち上げればいいだろ。アカに火噴かせてもいい。



みんなお金はあっても使い道がない。

割と繊維工場なんかでは給料を多めに払っているが、払った所で店があんまりまだないので貯金が増えてしまっているらしい。

それはイカン。領内に貨幣を流通させて経済をガンガン回さないと。


「よし、頑張ろう」

「はぁ」


という訳で俺は頑張った。


領主館の周辺から大通りに出店を何軒も用意した。

何軒なんて単位じゃないな。なん百に近い。

怪しいヒモの付いたくじ引き屋も作った。大当たりは何がいいか。

PS(プレミアのついた酒)(5本分)くらいでいいか。抽選当たんねえんすよ…


抽選と言えば正月に宝くじやってもいいな。一等はお米3俵とかで。

それと競馬場も作ろう。

訓練所の裏山を大きく拡張して競馬場に変える。


直線500mくらいの大規模なものを作りたいがそんなモン急に出来るわけない。

思いついてから三日、あっと言う間に一周1000mほどのコースが出来た。

くそう、そのうち2000mクラスの立派な競馬場を作ろう。


同時に馬券も作るが、いわゆる馬単だけだ。

6頭立てがいいところだろうし、馬連や枠連なんて言われても分からんだろう。

複勝もなし!男なら馬単一発で当てるだけ!


「配当はどうするのですかな?」

「うーん?そうだなあ。配当は運営資金に1割だけもらって9割返しでいこうか。それと馬券は一応偽造防止に魔力紋を使う。まあ誰もそこまでやらんとは思うが」


9割返しはかなり良心的だ。

JRAなら75%、宝くじなら50%以下しか購入者には帰ってこない。

パチスロなら機械割りは設定1でも98%くらいあるそうだけど…ホントか?


まあ、リヒタール家はそれほどボッタくる気はない。

なんたって今回はみんなに金をバリバリ使わせようというお祭りイベントである。

別に儲けたくてやるわけじゃないからな。


「なかなか盛況ではないか」

「あれ?師匠。暇なんですか?」

「暇とは何だ!お前が変わったことをしているという報せがあったから態々見に来たのだぞ!」

「あー…そりゃすみません」


誰だ報せたの?と思ったらこっちを見てウインクしてる奴が。

マークスか。イランことして…って訳でもないか。まあいい。


師匠はお供に何人かの文官と武官を連れてきている。見たことある人も多い。

ワイバーンに乗って来たあの人は以前にユグドラシルに援軍に来てくれた人だ。

それから、あのメイドさんもドレーヌ公爵の領地へ行った時に一緒になった人だ。

名前は分からんが挨拶しとくか。


「どうも、ご無沙汰しております。カイト・リヒタールです。先日の援軍の際にはお世話になりました」

「これはご丁寧に。私はカリム、こちらは妻のエイミラでございます。」

「ああ、ご夫婦でいらっしゃったんですね。いつも師匠がお世話になっております。」

「いえいえ、こちらこそお世話になっております。マリラーエル様ったらカイト殿の事ばかりお話しになるのですよ。」

「なっ、おま」

「カイトの所でゴロゴロしたいだとか、アイツの飯を食べたい。だとか。早く貰ってやってくださいね。うふふ」

「エイミラ!お前何を!」

「本当の事ではありませんか。カイト様、出来るだけお早めに。お早めにお願いいたしますね!」

「ハハハ…。」


挨拶しない方がよかったかもしれん。

そう思わせてくれる勢いで、エイミラさんは言いたいことを言い。夫であるカリム氏に引きずられながら屋台の方に消えていった。


「ゴホン、カイトよ。今回の催しは…」

「そんなにこっちでゴロゴロしたかったんですか?」

「い、いや。違う。そうではないのだ。仕事で疲れた時にな、こちらでの生活は楽しかったなあとな??」

「まあ冗談ですよ。今日は楽しんでいってくださいね」

「おう!まかせろ!」


師匠は連れて来た兵たちと、案内にベロザを引きずって屋台の方へ消えていった。

お早めに、か。俺も出来るだけ早く強くはなりたいと思っているのだが…


中々カイト(この体)は強くなれない。

金も稼いでいるし、領民も増えた。食料生産だってドンドンと増えていっている。

なのに、やはり素のステータスが低いからなのか。思うようには戦えない。

火力の低さはどうしようもない。ふう、どうしたものか。



抽選当たんねーとか言ってたら値上げですってよ。どうなってんだってばよってばよ!

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