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調略のターン②

とりあえず戦争のターンから調略のターンになったのでユグドラシルからお越しの皆さんは帰ってもらう事になった。

悪いけど今の俺らの所にいきなり1000を超える人員を食わせる飯は…あるわ。


でもまあ問題はそれだけじゃなくて捕虜の皆さんだ。

こいつらは捕虜だ。うん。

ゲームなら数字上のモノだけになりそうだが、捕虜だって生き物だから飯も食えばウンコもする。


ウンコは肥料になってまた捕虜の皆さんの口に戻るわけなので、ウンコが増えるのもそう悪くはない。だがタダで食わせる飯はどこの世界にも無い。


「と言う訳で皆さんにはこれから農作業をしてもらいまーす。」


万に迫る軍を崩壊させた。

となると通常、捕虜は千人単位でいてもおかしくない。

だが今回の戦では捕虜はほんの200人ほどだった。


まあ言うて城壁には攻めてこられたからそいつらは撃退したものの、その後は大将だけを狙った作戦だった。一番損害がひどくなる追撃戦はほとんどしていないので…捕虜を捕まえるタイミングがほとんどなかった。と言う訳で捕虜なんてそんなに出るはずなかったのだ。


捕虜となった者は城壁に攻めてきて怪我して動けなくなった者とドレーヌ公爵と一緒に落とし穴に落ちて動けなくなった者たちだけ。まあそれだけで200もいたって方がむしろ多いかもしれん。


死者についてだ。

出来るだけ戦死者を出さないように考えて戦ったが、先鋒として突撃してきた部隊にはやはりかなり損害があった。足や手に矢弾が当たってもそれだけでは頑丈な魔族は死なないが、さすがに頭を直撃すれば死ぬ。何十という数では足りないほどの戦死者を出してしまった。これから人間界に備えなければならないというのに…


戦死した者たちについては墓を掘って丁重に葬った。

墓を掘ったのは捕虜だ。最初は自分たちが入る穴だと思ってめっちゃ嫌がってた。

そんな発想はなかったわ。昔の中国かよ。



さて、捕虜たちについてだ。

戦死者の墓穴を掘らせた後は農作業にかかってもらう事になった。

「農作業なんてやってられるか!」とか「武人になんてことをさせるのだ!いっそ殺せ!」とかって声が上がると思ったら意外とそうでも無い。


平和が長く続いたおかげで半士半農というより全農の村人を無理やり徴兵したような兵がほとんどだったようだ。

賢くしてたらちゃんと元の所に返してやるし、何なら畑を切り拓いて定住してもいいよっていうとむしろ張り切って農業をしていた。

農業以外だと開墾作業やら治水に林業、それに元大工だとか鍛冶屋だとかって奴らにはそっち方向を手伝わせた。


働き者は大歓迎なのでウチのやり方を教え、飯を食わせて頑張った者には酒も出した。

すると初日酒を貰えなかった者は次の日頑張って、初日酒を飲んだものと一緒になって飲む。

こういう好循環が生まれた。うんうん、素晴らしいね。


アッチの全農ももうちょいどうにかしてほしい。

食料品の値段を下げるのは一般人にはすごく良い事だが、そのせいで農作物の買取価格が下がって農家が儲からない。


儲からないから若者は農家をやらない。そうすると食料生産量も自給率も下がり、どんどん田んぼも減って空き地になってしまいに電気屋しか儲からないソーラーパネルになって…まあ1次産業はもっと大切にしてほしいね。安けりゃいいってものじゃないのだ。

漁業も同じで知り合いの漁師は魚が減ったし燃料代ばっかりあがってクソ儲かんねえってボヤいてた。


とまあ、話がはるか斜め上に飛んで行ったが。

捕虜の中で農業を頑張ってるグループは良い。素晴らしい。



問題は頑張らなくて文句を言う組だ。

基本善良な魔族の中にもちゃんとそういうのがいる。

捕虜200人のうち10名程だが、こいつらの扱いには困った。


皆の言うようにいっそ見せしめにしてしまおうかと思ったが、それは美味しくない。

だからって元の所に返したって感謝してくれるかと言えばそうでも無い。

捕虜の扱いってホント難しい。


「…という事で彼らはマグロ漁船に…じゃなくって鉱山送りになりました。真面目に働いてる人にはそういう事はしませんので」

「鉱山…」「何てこった…」


非協力的な捕虜の扱いについて、普通に頑張ってくれている捕虜の皆さんの前で説明する。

まあでも頑張ってても同じ飯、文句言ってても同じ飯ってそりゃ通らんでしょ?

学校じゃないんだから。

そもそもこちらを皆殺しに…まではしようとしていなかったとしても、攻め込んできていた連中だ。

命を奪わないだけ優しいと思ってほしい。


それに、ウチの鉱山の環境は言うほどひどくはない。

何せウチには人がいないしその人も見内ばかりなのだから、怪我人やましてや死人が出るような環境にだけは絶対にしたくない。


と言う訳でいつ崩落が起こるかわからん危なっかしい坑道なんて掘らずに山をガバガバっと削って土を運び、貴重そうな(カッコイイ)岩や鉱石だけ取り除いてまた他所に持っていき埋めたりする。

という事をやっている。

シャベルと一輪車は事前に作ってあってこれがまた大好評だ。


一輪車のタイヤ部分はゴムがどうしようもなかったので鉄の輪だ。

ガタガタの道にクッション性のない鉄輪。

俺から見れば最悪の組み合わせだと思うが、コッチの人たちにしてみると案外いけてるみたいで助かった。


その内ゴムの木とか見つけないと。

ゴムは…樹液とって?それから硫黄と反応させるんだったかな??

だめだ。要試行錯誤だ。そもそもゴムの木を見てわかるか…自信が全くない。



鉱山から取り除いた土の廃棄場所に困るが、それも町全体を拡張したり、周りを囲む壁を作るのに使っている。もうすぐそれでも余りが酷くなりそうだが…どうしようか。

壁その2の外側にその3を作るか。マリアにローゼにシーナ、その次は何にすればいいのだろうか。などとつい考える。その名前は付けないと決めたはずだが。



「まあ鉱山の環境は諸君が思うほどひどくはない。鉱山の支配者が少しうるさいだけで後はそれほど危険も無い。気になれば一度覗きに行ってもいい。それから…今日集めたのはこちらが本命だけど。国元に手紙を書いてもいいぞ。手紙が書けないものは代筆しよう。」

「手紙!?」「良いのですか?」

「手紙くらい別に良い。と言っても一応検閲はさせてもらう。こちらの内部情報をホイホイと書かれても困るからな。だが、家族宛ての私信なんかの邪魔はしないという事だ。諸君らの中にも家族や恋人を置いて出兵した者もいるだろう。彼らにどのように伝わっているかわからんからな。安心させてあげればいい。費用は真面目に頑張ってくれる者にはこちらで負担する」


そう言うとザワザワと話し声が聞こえてくる。

まあ昼飯の時間に広場に集めていきなり手紙書いていいよ。って言われても困るところはあるだろう。

だがまあ、勿論意味はある。


俺もまだ情報を得ていないが、ドレーヌ公爵軍が敗北したことは伝わっているだろう。

そうしたら帰ってこない連中は戦死したと思われてもしょうがない。

とすれば、家族は悲しむし恋人はしれっと寝取られたり…まあそれはどうか知らんが。


もしかしたらあっちでドレーヌ公爵の家族が反ヴェルケーロキャンペーンを開いてもう一度攻めてくるなんてこともあり得る。

そうじゃない、捕虜になってるんだ。

しかも扱いはそう悪くない。悪くないどころかむしろいいかも知れん。畑仕事して酒も飲ませてもらって…あれ?元の領地よりいいかも?みんなこっちにおいでよ!ってなんねえかな。


まあ流石にそこまではなんねえだろうな。

だがそれは良い。


俺の狙いはそこじゃなくて、『もうヴェルケーロを一度攻めるとかダメなんじゃないか。そもそもドレーヌ公爵は死んでないみたいだし公爵位を騙し取るための謀略だったんじゃないか』…って話にして欲しい。いや、して欲しいじゃないな。

こちらが情報を流してそういう話にする、のだ。


という訳で手紙作戦のほかはマリア達に裏でごそごそと動いてもらい、俺は俺で表で動くことにした。

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