ステーキ焼きトリ唐揚げ野菜炒めモツ煮込み
「なんと、もう片付けてしまうとは!さすがは王子!」
「王子って言い方やめろよ」
「い~や、貴方様は国王の孫にして、我が王国の正統なる後継者です。そのように国王自身が認められておりますぞ!王子と呼ばないのであれば殿下とでも?」
「殿下って。もっと微妙じゃん…」
ユグドラシル王国の援軍を率いていたのは俺と一緒に西側の防壁を守っていてくれたライルさん。
まあお守りをしてくれていたともいうが…知らない人が来るより知ってる人が来てくれた方が良い。
俺としちゃ知ってる顔の方がいいや程度の感覚なんだけど、どうも彼はエルフの中ではいい所の出のようだ。
彼自身は一軍を率いる軍人であるが、彼の祖父は母国では大臣をしているらしい。
そんな人材をこの辺鄙の、普通に考えりゃ負ける防衛戦に送って来たって事は爺ちゃんは割と本気で同盟を守るつもりのようだ。嬉しいし助かる。
でもだからって王子王子って扱いにされるのも慣れて無さ過ぎて困る。
「それにしても戦力差は10倍近かったと聞いておりますが、どんな手を使われたので?」
「一応、本命をうまく誘導して捕まえたんだけど。まああいつらがサッサと退却したのはアッチの事情がかなりあったみたいだな。まあ良く来てくれたよ。おーい、飯の用意おねがいー!」
「「は~い」」
とりあえずは宴会だ。それに土産も。
爺さんの折角送ってきてくれた援軍を手ぶらで返すわけにはいかん。
上手く繁殖してくれていた豚さんたちは順調にお肉に。
足りない分…まあかなり足りないけど。
足りない分はみんなが山に入ってケモノを獲って来てくれた。
アカとロッソを主体に野山を駆け回り、イノシシに鹿に熊にトカゲを…トカゲ?
ん?翼のあるトカゲだ。んんん?
「これドラゴンじゃねえの?アカ?」
「これはわいばーん?だぞ。おれのごはん!おすすめ!」
「へ、へー?」
ワイバーンって初めて見た。
アカはここしばらくの間に割と大きくなって柴犬サイズからハスキー犬くらいの大きさになった。
大きくなったなあ、とは思うけどアカの事をドラゴンか?と言えば、デブっとした犬みたいな爬虫類だと返すだろう。
まあ、アカがややぽっちゃりしてる件については元気そうなんだし、別にどうでもいい。
食っちゃ寝の成果が出ているというだけの事だ。
ワイバーンを捌くところは見たことがないが、尻尾に付いた毒の棘以外はどうという事はないらしい。
翼はほとんど食べるところが無いが、ワニのようなボディは割と歯応えがある白身の肉らしい。
狩りでとらえた鳥類のような肉だということだ。
野生のワイバーンと飛竜隊の乗る飛竜はどう違うのかと思うが、同じ種類の同じもので…野生化しているのはどうせ手におえないから軍も始末すると。
討伐の過程で卵が手に入れば育てて騎竜とするようだが。
まあ、肉自体は美味いらしいし楽しみである。
という事で出来上がったのが、ワイバーン肉と野菜の炒めものに唐揚げに酒蒸し、それにバーベキュー、ベーコン、モツ煮込み。勿論ステーキも煮込み料理も串焼きもある。
味の方は…うん。
ワイバーンのフルコースは、どれもこれも悪くない。
タンパクな白身はそれ自体で食べると少し寂しいが、少し味を濃くすればどうにでもなる。
バーベキューも鳥っぽいからダメかと思ったらそんなことない。
串焼きは何というかすごく上品な焼き鳥だ。
もっしゃもっしゃと皆と一緒に食べながら感想を言い合う。
俺はこの中だとやっぱり唐揚げが美味いとおもう。
そう言うとお酒大好きのメンバーから『やっぱり酒蒸しでしょう』と言われるし、串焼きはまだ塩味とマヨネーズ味しかないからちょっと物足りない。やっぱヤキトリといえば醤油ダレだよな。
この場合焼きワニ?焼きワイバーン?だけど。
それにしても揚げ物に比べて酒蒸しがそんなに美味いか?と思うが、俺が思うに唐揚げが酒蒸しなんぞに負けているのは醤油が無いからだ。
醤油の香ばしさが無いから、物足りないのではないか。
それと、やっぱりニンニクと塩だけじゃあ足りないんじゃないか。
ここは胡椒やショウガが欲しい。
だが胡椒はインドかその辺りが原産だったはず。
某国民的RPGで、船をもらうために黒コショウを獲りに行ったイベントがあった。
あれでもインドくらいの所にある国に行った。
そしてボスのカンダタに負ける…その前に人食い箱にやられたのだ。懐かしい。
ちゃんと宝箱は調べてから開けようね。って教訓だが、あのシリーズは箱モンスターのドロップが美味いから結局開けに行っちゃうんだよな。
とまあ、それは良い。
胡椒は欲しいが、アレはもっと暖かい地方で作られるモノだったとおもう。
稲作も難しいこの辺の土地じゃ無理だ。やっぱりもっと暖かい地方に行きたいなあ。
その辺リヒタールはいい所だった。
暖かいし平野が広がってるし。それでいて川もあるから水の便もいい。
…気候もよく、平野が広がっている。
山はあまりないが降水量もそこそこ有るのでちゃんと水も川もある。
だからみんなそこが欲しくて取り合いになって。
いつも戦争の最前線になる理由はその辺なんだけどね。分かってんだけどね。
まあそのくらい肥沃な大地なのだ。
それを飢えた狼のような汎人族が獲りに来ないだろうか?いや、来る(反語
まあ領土争いが無くても1000年以上我慢させられてた魔族大っ嫌いの宗教狂い達が頑張るだろう。
そこは間違いないはず。
リヒタールはみんな注目の美味しい土地だ。
翻ってヴェルケーロ領はどうだろうか。
…寒い。遠い。碌なもん獲れない。
モンスターも比較的多い。ワイバーンは美味かったけど。
水は鉱山汚染に注意…うん。控えめに言って良い所ではない。
大魔王様はなんでこんなところに俺を放り込んだのか。
まあ他のいい所だとうるさい貴族とかも多かったんだろうけどさあ。もうちょっとさあ。
書いてて腹が減って来た…