侵攻(される側
章を追加し、世界地図も追加しました。
この章の最初、大魔王死すの前に地図を挿入してあります。
色々難しい。間違えてるところもいっぱいありそう。
アーク歴1500年 参の月
ヴェルケーロ領
雪も解け、行軍も可能になる時期が来た。
ヴェルケーロ領は山の方にはまだ雪が残っているが、そろそろ春の作付を行わないといけない。
やはり内政の基本は農業だ。
人類から農業を取り上げれば人はケモノを追い回し、ドングリを食べていた原始時代に戻るしかないのだ。
うむうむ。
さあ、今年はどんなふうに作付の配分をするか。
一年目はちょっと夏野菜が多すぎた。
二年目はそこを考えて夏野菜を減らし、春小麦を多くした。
まあ全体の農地も広がったがな。
今年は三年目。
まだ三年か、という感想を抱く。そして愕然とする。
そうか。
三年、もう三年か。俺はいつになればアシュレイを…。
さて、アシュレイの事はいつも心の片隅に置いておくとして。
ヴェルケーロではそもそもの農地は1年目と比べて10倍くらいになっている。
なら1年目に多すぎたと感じた夏野菜も1年目と同じくらいかそれ以上植えてもいいだろう。
あとは大豆や麦、稗粟蕎麦なんかの日持ちするものも戦の備えとしてたくさん育てないとなあ。
それに今年からは平地での米も栽培予定だ
塩も用意したし、塩水選から正状植えに千歯こきのチートコンボを炸裂させまくらねば!
ううむ。楽しみだのう。
「若様、ご報告が。大魔王様の位を掠め取ろうとした例のドレーヌ公爵がこちらに向けて出陣しようとしているようです」
「ふええ…マジかあのオッサン」
俺は今、お米のことで頭いっぱいだったんだけど…そうか。
うーん。薄々こういう事が起こるかもとは思っていたが…マジ来るのか。
いやまあ、何というか頭悪そうなオッサンだったからな。
大魔王に成ろうとして、それを邪魔されて。
あのクソども許せねえ!…ってなるかなと思ってたけど師匠の所じゃなくてこっちに来たか。
つーかあの宰相は一体何なん。
あんなアホな悪だくみする奴に権力与えちゃダメでしょうが…そこらへんどうなんだ大魔王のクソジジイよ…
それにしても、俺なんてまだまだガキンチョの仮免伯爵にすぎないんだ。
そんなのにわざわざ自分から攻撃を仕掛けても自分の名誉は…うーん。
「何がしたいのか良く解らんな…。で、数はどのくらい?」
「報告では3千ほど出陣したそうです。ですが、道中で数はまだ増えるかと…」
「ふーむ。じゃあ5千~1万くらいかな?」
「最低でも8千はあるかと思います」
8千の軍勢と言えば魔族の中では大変な数だ。
何せ魔族は個人の戦闘力が高い。
種族によるところはあるが、平均的には汎人の3倍程度の強さはある。
8千と言えば一般兵が2万4千相当か?
うーん、その辺は難しいところだけどなあ。
それでウチの軍。
大体魔族の兵が500人くらい、でシュゲイム君たちの所が100人そこそこかなあ。
うん。10倍より多いね。
普通に考えりゃ無理ゲーだ。
戦力差が10倍以上あれば普通に戦えば何やっても無理だ。
だがやりようはある。どうせ奴らはウゴウゴのシュークリーム…じゃない、烏合の衆だ。
アホ公爵の首さえ取ってしまえばどうにでもなるだろう。
そう、桶狭間をやればいいのだ。
って俺が信長と同じ事できると思う?無理に決まってんじゃん。
奇襲しようって時に都合良く雹が降るとかあいつどんだけ愛されてんだよ。
人は人、俺は俺でやるしかない。
と言う訳でまずは…
「まずは爺さんの所に援軍要請。それと師匠の所にもできたら素通りさせて挟み撃ちにするようにしてって連絡して」
「はい」
「それと、3番肥料の用意。小麦粉もいつもより奇麗に挽くように。あとは天気次第って所もあるな。雨なら籠城しよう。あの城壁はちょっとやそっとじゃ落とせないはず」
色んなシュミレーションゲームに手を出したし、歴史モノも色々と触った。
相手の頭をつぶせないのなら『不抜』をやってしまえばいい。
函谷関やシラクサ包囲戦、日本なら楠木正成が赤坂城、北条氏康が小田原城でやったことだ。
粘り勝ちを狙えば良い。
つまり耐えていれば向こうが兵糧切れや後方の不安で帰っていくだろう。
…と言うか魔族のことを考えればどちらも困るな。
出来るだけ魔族の兵を減らしたくないし、兵糧も減らしたくない。
その後に必ず来る汎人連合軍との戦いに備えなければならないのだから。
じゃあどうにかして本人を説得して、あるいは捕らえるなどして上手く和解に持っていくべきか。
うーむ。難しいな…
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