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普段どおり?


アーク歴1500年 弐の月


ヴェルケーロ領



大魔王領からヴェルケーロ領に帰ってきた。

と言ってもヴェルケーロ領は元々は大魔王領の中のごく一部分を指すので正確には大魔王領の中を移動する…になるのか?いや、下賜されたんだから俺のモンなのか?

ややっこしい。とりあえず家に帰ったんだよ。



大魔王城からヴェルケーロ領までの間にあるのはバニング子爵のゲルセルネ領とワニさん領主、ウルグエアルさんの治めるカニエラル領だ。バニング子爵はあったことないが、吸血鬼のイケメン子爵らしい。ウルグエアルさんは一度会ったことがあるが、ワニさんみたいな顔の竜人族の伯爵さんだ。


ぶっちゃけ竜人族とリザードマンの違いが分からん。

リザードマンはうちの領地にもいるが、気の良いおじさんだ。語尾が『シャー』になったりはしない。

ちなみにそのおじさんの娘さんはお母さん似の可愛らしい猫耳獣人だ。

正直可愛い女の子の猫耳獣人というだけで素晴らしい。

最早素晴らしい以外の言葉が見つからぬ。

え?オッサンの猫耳?聞くなそんなの。



話がそれたが竜人族はとってもプライドが高い。

そして個人の戦闘能力もすごく高い。


だから多分大人しく軍門に下ってくれるなんてことはあり得ない。

俺は大魔王様の後継って事になった。認められない者とは戦いになるだろう。


なのでさっき通った道路に入る領主たちとはまず間違いなく戦いになるだろう。

うーん、大人しく配下になってくれれば俺の所のお酒いっぱいあげるよ?何て言っても無理だろうな…いや、ワンチャンいけるかも。



「まあそんなワケで、とりあえず軍備を整えまーす」

「攻め込むという選択肢はないのですか?」


この場にいるのはいつものようにマークスとロッソとマリアとそれにアカだ。

んで、攻め込んで暴れたそうにしているのはロッソ。


「まあ攻勢に出るって選択肢も無くもないんだけどね。防衛なら地の利はあるけども、自分たちより強いかもしれないって相手の所に攻め込むのはなあ」

「強い所に攻め込むことこそ本望ではないですか!」

「おれがいればかてるぞ!」

「ああ、うん。そう言うかもとは思った」


ロッソはやる気満々だ。

マークスも『うんうん』って顔をしている。

アホかこいつら。


「はあ…あのな。俺たちは一回も負けることは許されないの。そのくらいの覚悟でいて欲しいんだけど」

「負けるつもりはありませんぞ!」

「おれがんばるぞ!」

「ロッソ、お座り。アカもうるさいから座れ」


怒られてシュンとした二人は放っておこう。

とりあえず、現状を整理だ。



「マリアには引き続き周囲の状況を探ってほしい。とくにあのアホっぽい公爵サマあたりな」

「はい。」

「もう少し内政しときたかったけどなあ。うすうす1500年かと思ってたけど…」

「ん?何が1500年ですかな?」

「そりゃ…なんでもない。もう少し大魔王様に長生きしてほしかったなって事。」


そりゃあ、ゲームの開始年数の事だ。

いちいち覚えてなかったが、製作者がいるゲームならキリが良い年から始まるんじゃないかなとは思っていた。直近でキリがいい所はなんといっても1500年だ。

そりゃあもう、今年何かが起こるってのは間違いないっしょ。くらいに思っていたが…そうか。大魔王様の死亡がズバンと来たか、ってのが感想だ。


大魔王様も俺の記憶を読んだ以上、同じことを考えて遺書を用意していたんだろう。

その遺書が有効に使えてスムーズに権力が移行するかと言うとそんな感じはないけどね。


「とりあえずは防御を固めて、そんで交易なんかは続けて行こう。大魔王城やユグドラシルは勿論、隣のワニさん家なんかも交易が嫌だとは言わんだろ。そこまで嫌ってたり嫌がらせしたりはしないだろうし…プライドの高い竜人族なんだしな?」

「そうですな。そう言うタイプではないでしょう」

「じゃあ正々堂々と挑んでくるだろ?しょうもない事はしないはずだ。何なら果たし状みたいなの送ってきちゃうかもな。そんで一騎打ちだ。うーん、良いね」

「素晴らしいですな!」


一騎打ちほどいい物は無い。

そういう表情のロッソ。お前が出るかどうかは分かんねえぞ?

まあでも実際の所俺はやる気ねえからウチから出すならロッソだ。


とりあえずはやや軍事に重心を置いて、後は普段通りにしていこう。

忙しくなりそうだなあ。

はぁ。ダンジョン攻略しなきゃなんねえのになあ。


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