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大魔王死す

アーク歴1500年 壱の月

ヴェルケーロ領



「あけましておめでとうござります」

「うむ。おめでとう。」



1499年も終わり。

去年は忙しかった。

内政三昧で領地はいい感じで発展して人口も収入も食料生産も何もかもが右肩上がりだ。

んでユグドラシル王国へ軽く遊びに行って交易に~と思ったら突然スタンピードに巻き込まれて。


まあスタンピードはうまいこと乗り切れたから、交易もできるようになっていい感じで儲かってしまった。レベルも上がってお金も貰ってしかも感謝される。サイコーやね。

そして儲かったお金で冬季の工事をする。


雪で閉ざされる前に鉱山への道を拡張し、鉱山から流れる水の入る溜め池も増やした。

これで少しでも鉱山病の予防になればいいが…。




でまあ、ついに節目の年、アーク歴1500年だ。


非常に切りのいい年だが、今年は恐らく大魔王様が崩御する。

このことを知っているのは俺と大魔王様本人だけと言う状況。


どうするよ?と思うが特に大魔王様からの呼び出しもないし、俺がどうにかできることはない。

あるとすれば戦の準備くらいだ。


というわけで年末からいつも以上に武器防具の製造、加工を急がせているし、訓練もしている。

魔族は大体みんな強いが、血に飢えて荒ぶっているかと言うと割りとそうでも無い。

平和を謳歌していると、のほほんとしているのが殆どだ。

人族との戦争なんてまるで考えておらず、武器や防具も対モンスター用の物がほとんどだ。



大体どのゲームでも、魔族と言えば人族を見れば『ヒャッハー!』と襲い掛かるとんでもない奴らばっかりだったイメージだが、そりゃ反対に魔族から見ても人族は魔族と見れば舌なめずりしながら襲い掛かるとんでもない奴らなのだ。


でも今は長い長い平和の時代ですっかり牙どころか角や尻尾まで抜かれて爪はネイルサロンでキレイキレイしているような状況。ネイルがはがれるから戦えないよぉとか言いだしそうな惰弱な魔族までいる。


まあでも考えてみりゃ当然の事だ。

日本人だって食うか食われるかの戦国時代やその前には世界屈指の首狩り族だったわけだが、平和に慣れ切った現代人は豚や鳥を〆て食べることすらできない。

魚すら無理、触れない~。とか言う軟弱者もいるほどなのだ。


それに比べりゃ魔族が牙くらい抜かれてもしょうがない…か?


「しょうがないですかね?」

「なにがだ?」


俺の贈った爪切りで爪を切って、裏にあるヤスリで研いで。

奇麗になった爪を見てうっとりしている師匠を見ながら言う。


爪切りについては、『こんな便利なものは無い』との事で大変喜んで頂けた。

でもこんなにキレイになったら爪が汚れるから戦いたくないなんて言い出さないだろうか?


「これだけ奇麗になると戦いにも使えそうだな。こうか?こうかな?」


師匠は爪に魔力を纏わせ、訓練用の丸太をスパスパ切っていた。

まあ戦いたくないなんて言うはずなかったな。




そんな平和な正月は元日の深夜に終わった。

領内で作った綿をたくさん入れたあったか~いお布団に包まれてウトウトしていた時の事だ。


<『盟約』の保持者である『大魔王』アーク・ウル・ラ・ルアリが死亡したため、人魔間の戦争が解禁されました>

<『種』の保持者各自は統一のための戦いを開始してください>


「ふあっ!?」


何だ今の?隣でゴロゴロしているアカは平常通りの運行だ。

…という事はみんなには聞こえてないのか?

そう思っていると。


「若!若!お聞きになられましたか!」

「カイト!えらいことだぞ!」


マークスと師匠が部屋に飛び込んできた。


「おう、聞こえたか」

「ハッ。大魔王様がその、崩御なされたと」

「私も同じだ。大魔王様が崩御されたと…ご壮健のようであったが」

「続きはどうですか?」

「続き?ですか?」

「種の事か?私には聞こえたが…」


二人は顔を見合わせている。

うん?マークスには聞こえなかったのか?


何と言ったか、確か『種持ってる奴は世界統一しろよ!』みたいな…?

『種』と言うワードに聞き覚えはある。


アシュレイを身代わりに、生き残ってしまった時に同じような声が聞こえたのだ。

その時に種がなんとかと言っていた気がする。

後はアカをテイムした時にも何やら同じようなアナウンスが聞こえたが…なんて言ってたかな?


「まあいいか」

「大魔王様が亡くなられたのがまあいいですと!?」

「あー…違う。違うがまあ大して違わなくもない。大魔王様が亡くなったという事は、その座を巡っての争いが起きるという事だ。それと、追加して人類国家群との戦争も起こる。『盟約』の事は子供でも知っているだろう?『盟約』が破棄されればどうなるか。どうなると思う?」

「戦いが…起こります」

「そうだ。リーダー不在の魔界と今まで戦いを自粛させられてきた人類との戦争だよ。『教会』の力が強い国なんかはやる気満々なんじゃないかな?」


『教会』とは聖アウラ光皇教会と言うのが正式名称で、その第一義となるものは魔族の殲滅、あるいは奴隷化である。何ともおっかない教義だ。とりあえずは…


「とりあえずは教会の力が強い国にいる同胞に戻ってくるように連絡した方が良いな。家族がいたりして、どうしても残るってやつは知らんが…どう考えても戦争になる。下手すりゃ魔族ってだけで捕らえられて殺されるぞ」

「しかし、もう1000年を超えるほど平和が続いております。人間とのハーフどころかもう何世代も交わっておる者も多いですぞ」

「そうだぞ。いくら人族が野蛮でも今更戦いなどと」

「じゃあお前らは備えなくていい。俺はこのために今迄金稼いでたってのもあるんだから好きにする」


こいつらでも平和ボケしてるんだから魔族の連中は全体に駄目駄目だろう。

戦争になったときのリーダーとなる大魔王様も死んでるんだから、右往左往しているうちに人間に攻められるんじゃないか。

ああ、まさにゲーム最序盤のカイトの置かれた状況はこうなんだな。


「あー…とりあえずリヒタール領に駆けつける用意をしておこう。あそこは最前線になる。人間サイドのどこが攻めてきてもあそこからだ。それで、代官が…誰だっけ?」

「リバンバイン殿だ」

「バイバイン?やべえな…まあそいつが大人しく防衛準備をすれば良し、しなかった場合は」

「しなかった場合には?」

「そうだな、住民を避難させよう。戦いたい奴は知らん。」


街を、街の皆を守るために残る、大変結構じゃないか。

というか戦力にならない奴らはサッサと避難させてほしい。

非戦闘民を抱えても碌な事にならないからな…

ようやく国盗りゲーの時間なのです。

なお、MAPはまだ出来ていない模様…


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