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他守衝動

初めましてみなさん!きむち。と申します!

死神と天使を題材にしたバトルものと、恋愛ものを融合させた、いい感じに頭のイカれた物語にしたいと思います!これからよろしくお願いします!

指先が冷たい。


意識もなくなりかけている。


視界も暗く、だんだん狭くなっていく。


「──か!────ですか!」


誰かの声が耳の奥に突き刺さる。

今はその声を意識することさえ面倒だ。


もう、感覚がない。

考えることさえくだらないと思える。



ああ、そうか、僕はここで死ぬのか──



◈◈◈



12月24日。クリスマスイヴ。


神坂市の、ビルが並ぶ商店街は沢山の人で溢れかえっていた。手を繋いで歩くカップル。ビジネススーツを羽織って足取り軽く歩く女性や、男性。


僕、七海 千寿(せんじゅ)は、そんな聖なる夜に1人で街を歩いていた。


特にこれと言って予定は無く、ただの散歩をしている。

僕はこの、多くのビルが伸びる神坂市の夜がとても好きだ。

夜のビルの光はまるで、澄んだ夜空に輝く星のようで。



──いや、僕が散歩をしているのは、この街が好きだとか、夜景が好きだとか、そんな理由じゃない。

ただただ、家に居たくない。それが理由だ。


僕の両親は、僕が小学生の頃に死んだ。

外的な損傷はなく、他人から恨みを持たれていたワケでもない。その為、不明の死とされた。


そして僕は父親の兄、つまり、伯父に引き取られることになった。

そこでの生活は一言で言うと過酷だった。奴隷のように扱われ、毎日のように暴力を振るわれる。

そんな(牢獄)にいるのが嫌なのだ。


「はぁ──」


吐くため息は白く消えていく。


視界を夜空から人混みに移す。

絶え間なく人々は行き交い、肺が凍えるほど寒い空気を、その熱で温めていく。


その中に1つ、不穏に動く影が見える。

それは、ゆらりゆらりとおぼつかない足取りで歩く男だった。


その顔は醜く歪んでいた。


やがて周囲の人間たちもその異常さに気が付き、男を中心に人混みの穴(ブラックホール)を作り始めた。


そこでひとつの悲鳴が上がった。


人混みの隙間から目を凝らす。

そうすると直ぐに何が起こったのか理解出来た。

男のすぐ側に立っていた女性がナイフで切りつけられていた。

決して致命傷という訳ではなく、腕の皮膚に数センチの切込みをつけられていた。


やがて周囲の人間は声を上げながら、恐怖という感情に背中を押されてその場から逃げ出す。


その光景を見る、いや、見つめる僕の頭はやけに冷静で、とても冷ややかだった。


「──はぁ」


吐き出す息は白い。


いつの間にか、切りつけられた女性と、周囲の人々はその場にはもう居なくて、そこに居るのは、僕と、《《白い少女》》だけだった。


僕から少し離れた場所に立つその少女は、髪が白く、目は透き通るような白縹色で光を帯びていた。その横顔はよく鼻筋が通っていて、抜けるような白い肌は、冷気で紅く染められた頬を、いっそう目立たせた。

そしてその顔は恐怖に飲まれているように見えた。


僕はどうしてここに立っているのか。



もしかしたら──


あの(狂人)に自分を殺して欲しいのかもしれない。


男は、活動を再開させる。

その手に持つナイフは、街灯に照らされてきらりと輝く。


「うひぇ──っ」


奇怪な声を上げて、その男は、少女の方向に走り込み、ナイフを構える。


「あ──」


間抜けな声をあげながら、僕の体は勝手に動いていた。


時間はとても緩やかだ。

全ての物が止まっているように見える。

その時間(とき)の中、僕の足は少女の方へと足を踏み込んでいく。

そして、僕は少女を庇うように、男の前に立ちはだかる。

男はナイフを腹部に構え、刃をこちらに向けながら駆け寄ってくる。


やがては、すぐに腹に熱が刺さった。


「がっ──、あっ──」


地面に背中から倒れる。痛みはない。

ただただ、腹が熱い。

男は顔を、今回は恐怖に歪ませて、その場から走り去っていく。


僕は、とうに生きる意味を無くしてしまっていたんだ。


少女の顔は見えない。

顔が見たかった。白い彼女の顔が。


「あっ──、あ」


指先が冷たい。


意識もなくなりかけている。


視界も暗く、だんだん狭くなっていく。


「──か!────ですか!」


《《誰か》》の声が耳の奥に突き刺さる。

今はその声を意識することさえ面倒だ。


もう、感覚がない。

考えることさえくだらないと思える。



ああ、そうか、僕はここで死ぬのか──



◈◈◈



目を開けると、木製の天井が目に映った。


「ここは…」


「あ!起きました!篠田さん!起きました!」


女の子の声が聞こえる。寝起きの頭にはキツい。

寝転がったまま、首を右に向ける。

そこには、白い少女がいた。


「きみは──」


その言葉の意味を汲み取ったように少女は口を開く。


「はい、私は貴方に助けていただきました」

そして、ありがとうございました。と、礼をされた。


助けた。そうだ。僕は彼女を助けた。じゃあ僕はなんで、なんで生きている。


「僕は、死んだ──」


「いいえ、今は生きています」


少女は僕の間違いのない呟きに、直ぐにそう返答した。

ワケがわからない。

なんだって僕は今こうやって生きて、こうやってこの子と話せているんだ。


「今は生きているって、僕は君を守って死んだろう」


「ええ、貴方は──」

「お、起きたね、さすが《《死神の子》》だ」


少女の声を切り裂いて、ドアから入ってきたのは、赤い髪をした女性だった。年齢は25ぐらいだろうか。

ワイシャツとスキニーのジーンズを身につけ、口には煙草を咥えている。


「じゃあ、キリ。彼を起こして私の部屋に連れてきてくれ」


「わかりました。篠田さん」


そう言って、『篠田』と呼ばれた女性はドアを開けて部屋を出ていく。


そして再び、この部屋は『キリ』と呼ばれた少女と僕の2人きりの空間になる。


「それでは──」

「あ、あの!頭が追いついていないんだけど」


少女は、そうですね。と、呟き、

「先程の女性にいろいろと話をされると思います。貴方の命と、これからの貴方について」


その言葉は深い意味を帯びているように感じた。


「それでは行きましょう。案内します──」


そう言われて、起き上がる。どうやら僕はソファの上で寝ていたらしい。


ふと、自分の掌を見やる。


手は真っ黒で、爪がとても長い。しかもそれも黒い。

腕なんかはただの黒い骨と肉だけで構成されているようにしか見えない。


「え、なんだこれ…!?」


その時に気づいた。


《《僕の体が、人間のそれでは無くなっていることに》》──

読んでくださりありがとうございますっ!!

これから頑張って執筆を頑張っていきたいと思うので、星とか、応援とかして頂けるととても励みになります!暇な時にぜひ覗きに来ていただけるととても嬉しいです!それではこれからよろしくお願いします!

Byきむち。

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