運命の出会いへ
翌朝は栞にしては遅い時間まで眠った。枕元の時計の針が、もう少しで9時に届く。多分前日の中途半端な午睡のせいで、夜半過ぎまで眠れなかったせいであろう。首を少し動かすと頭の芯が鈍く痛む。長過ぎる眠りは逆に疲労を連れてくる事もある様だ。思いっ切り手足を伸ばし一呼吸して、また軽く目を瞑る。このところ繰り返し見る夢の中を改めてイメージしてみた。でも霞がかかっている赤い鳥居しか表れてこない。「そうよね、感じたままに歩き回るしかないわ。」声に出してそう言ってベッドから起き上がった。そして軽くシャワーを浴び、身支度を整え部屋を出た。
駅に向かって歩きながら、ふと空を見上げた。何処までも青い空間の中を雲がゆっくりと流れていく。爽やかさを感じていたいのに、何故か心が騒つく。軽く目を瞑りほぉ〜っと深く息を吐き出した。何も考えなくて良いのだ。ただただ直感に従えば良い。そのまま人の流れに沿って歩くと駅に着いた。
改札を通りまた少し歩く。そして既にホームにあった電車に乗り込む。暫く車窓の風景を楽しむつもりだった。けれど、、隣に立っていた女性が次の駅で降りると、ついその後を付いて一緒に降りてしまった。何故か分からないが、そのまま釣られた様に後を歩いて行く。彼女は別の電車に乗り換え,空いている座席に腰掛けた。栞もそれに倣う。不思議に何の違和感も持たなかった。『きっと彼女の行く先に私の目的地がある』そう感じた。それが答えなのだと思う。
幾つかの駅を通り過ぎると彼女が立ち上がりドアへ向かう。だから栞もそうしてそこで降りた。其処は【伏見稲荷駅】であった。朱い鳥居、、確かに此処には数え切れない沢山の鳥居が連なる。『此処なのかしら?私が呼ばれた運命の場所!』大鳥居を抜け、千本鳥居へと向かう。階段を登り始め、ふと前方上を見ると、先程の彼女が男性と肩を並べて歩いている。笑いながら軽く腕を叩いたり、とても楽しそうだ。ふたりの笑顔で胸の奥から何か温かいものが流れてくる気がした。
果たしてこの何処までも続く鳥居の先に何かあるのだろうか?栞は上へ上へと続く階段を見上げた。
何処までも続く鳥居の道。まるで天に通じている様に見える。栞はゆっくりと階段を登り始めた。
https://ncode.syosetu.com/n8941fi/20/ (タロットカードと旅をして OSHO禅カード 旅館にて参照)
このその後ストーリーは、【タロットカードと旅をして】本編で出逢うふたりのお話ですが、思うところありこのまま閉じようと思います。
中途半端なまま無理やり完結させてしまう事をお詫び致します。