京都にて
栞は開放感を味いながら駅へと向かった。
前方に時計台が見える。針は3時半を指していた。と、その時、その針に何故か目が止まった。如何してかは分からない、ただふと、、それに引き留められる『何か』が自然と沸き上がってくるのを感じた。
今日は直帰の予定であるので、このまま家に戻るつもりでいた。けれど、、。
幸いにも明日は土曜日である。自分からの誕生日プレゼントに〜週末の2日間、京都で神社仏閣を廻りながら、その『何か』を見つけるのも良いのでは?栞にはこんな風に、不思議な感覚が度々訪れるのだ。そしてそれが導くその先には、必ず栞の運命を左右する出来事が待っている筈であった。
先ず、京都駅の中にある観光案内所へと向かった。近くのホテルを予約し、そして次にデパートへ移動する。必要な物を購入して、そのままチェックインした。
部屋に入ると、急に疲れがどんと押し寄せた。それもその筈、昨日から殆ど休む間も無く仕事をしたのである。本当はラウンジに降りて、先程沸いた『不思議な感覚』と一緒に、珈琲を味いたいと思ったが、、体の方は休みたいと願っている様だ。
軽くシャワーを浴びてベッドに入る。体を横たえるや否や眠りに落ちていった。そしていつもの夢を見た。
そう、このところ、繰り返し見ている夢である。それもほんの一瞬の出来事なのだ。場所は何処か分からない。紅い物に囲まれた処に立っていると、誰かに声を掛けられる。それで栞が何か言おうとする、っと、、そこでいつも目が醒めるのだった。そして今日もまたそうであった。
ほんの一瞬に思えたけれど、それでも2時間位眠った様だ。すっきりとした気分で目を開けた。そうだったのね!栞は夢の意味を実感していた。そう、、ここ京都には、紅い場所が数え切れない程あるから。栞には持って生まれた不思議な力がある。だからこの夢には必ず意味があるのだと分かっていた。
だから明日は、風の声を聞きながら〜思いのままに歩こうと決めた。