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出張の日

 (連載『タロットカードと旅をして』から1年後のお話です♪)


 その後、栞は仕事に追われる日々を過ごし、気付けば季節が何回も変わり、次の年の7月になっていた。七夕が来れば30歳になる。比較的ひとりが好きな栞は、今年の誕生日も家で静かに過ごすつもりでいた。


ところが前日6日に、栞の思いは急な部長命令により、余儀なく変更された。7日朝9時から京都支店にて、今後の指針を決定する重要なミーティングが予定されていた。そこに参加する筈であった、同じマーケティング部のチーフが交通事故に遭い入院した為、代わりに出席して欲しいとの事であった。既に用意されていた資料を渡されたが、栞だけで代替え発表するには、まだ足りない部分が多い。直ぐにその準備を始めた。お昼休みも殆ど取らずに続けたが、それでも結局遅くまで残業し、帰宅は夜中になったのである。

そして7日当日、始発の新幹線に飛び乗り京都へと向かった。たった1日の事とは言え、碌に食事も睡眠も取れず準備に追われた。でも不思議と疲れは感じていない。これからの1日を想定し、適度な緊張感に包まれているせいであろうか。

その時車内販売のワゴンが通った。栞は珈琲を買い、早々に口に運ぶ。「美味しい」思わず口に出た。ほんのひとときではあるが、それでも今の栞にとっては、ほっと出来る大切な時間である。『さてと、これからの車内での数時間で、発表の段取りを再確認しておかないと』心の中で呟きながら、書類ケースを取り出した。


 京都支店には8時半過ぎに着いた。早速支店長に挨拶して会議室へ向かう。ミーティングまで20分以上あるが、既に全員が着席していた。

栞の体を緊張が駆け抜けていく。『大丈夫、準備は万全!』自分にそう言い聞かせながら、用意されていた椅子に座る。資料をもう一度軽く見直して、支店長に目で合図を送った。まだ予定の9時には10分程早かったが、ミーティングは開始された。

最初の挨拶で少し戸惑ったものの、本題に入ってからは滞りなくスムーズに進んだ。そして思った以上に上手くいったのである。支店長も「予想以上の出来だ。」と満面の笑みで労ってくれた。その言葉で、責任を果たせた実感を得た。『頑張った甲斐があったわ』栞は心の中でそう呟く。そしてじんわりと湧いてきた嬉しさを噛み締めた。


その後、会議室からランチルームへ移動し会食となる。仕事の延長ではあるが、和やかな雰囲気のまま、そつなく進み終了した。



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