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終章 果ての果て

 

「それを知りたいですか」


「・・・ああ」


「本当に」


「ああ」


「・・・分かりました。それでは私の話の続きを聞いてください」


「何故」


「いいから聞けば・・・分かるはずです」


「・・・・・・」


 男は喋りはじめた。

 

「私は攻略本を手にし、次々と世に恵まれないソフトをクリアしてきました」


(・・・・・・)


 俺はその言葉を言うのを躊躇った。


「ふふ、もういいですよ。そうです、クソゲーと呼ばれる物たちです」


(・・・・・・)


「その多くは、ロクにやり込みもしない内から、クソゲーのレッテルを貼られる!」


 男は次第に激昂して行く。


「そう、アナタのような人たちに・・・」


「なっ!」


「あなたは何なんですか?」


「何を」


「あなたは私なのですか?・・・私なんでしょう?」


「違う!」


「そうですか、私はアナタが私自身にしか見えないのですが」


「やめろ!」


 男は溜息をついた。


「よいでしょう。決着をつけましょう。そう舞台はファミコンで」


 

男の語りの後、世界が暗転した。


「エキサイトバイク」

エディット機能でジャンプ台ばかり作る。


「魔界村」

一面をクリア出来ずに、コントローラーを本体に投げつける。

プーという音とともに画面がバグる。


 「ドラクエⅡ」

復活の呪文を間違えて、コントローラーを振り回し、本体もぶっ飛んだ。


「ファミスタ」

3アウトとなると意味もなく、センターにボールを投げた。


「燃えろ!プロ野球」

広島のランスでバントホームラン。


夜中、ファミコンをしていて、親に見つかった時の恐怖。



再び暗転。

俺は目を開くが、辺りは闇の中。


「ここは?」


「わかりませんか?」


「私・・・いえ、アナタのなれの果てですよ」


「・・・・・・」


 しばらくすると、暗闇に目が馴染んでくる。

 どうやら納屋のようだ。

 その隅っこにあったのは、数十年の埃をかぶったファミコン。


「なっ」


「思い出しましたか?あの日、私は夜中、ゲームをしているのが親にバレて、ファミコンを没収されてしまいました」


「それがここに・・・」


「そうです。それが私いや、アナタなのです」


「そうか」


「そうです」


 男の満面に気色の悪い笑みを浮かべる。


「でも・・・」


「何か」


「それは、俺じゃないんだよ」


「???」


「それは、お前なんだよ」


「???」


 俺はそれを指さした。

 ファミコンの横に無造作に置かれた箱に入ったゲームソフト達を。


「そんな違う!」


 男は狼狽した。


「すまない」


 俺は男に向かって深く一礼する。

 重苦しい間。

 男は、苦し紛れに口を開く。


「アナタ」


「はい?」


「クソゲーと言いましたね」


「お前がいいと言ったんだろ」


「五月蠅い!」


「おいっ」


「クソゲーといった!クソゲーといった!クソ、クソ、クソ、クソゲーと」


 男は狂乱し、繰り返し叫ぶ。


「クソ、クソ、クソ、クソ、糞、糞、糞、糞、Ksogee!!!!」


 男が叫んだ瞬間、俺の意識は彼方へと。



 俺は目が覚めた。

 エレベーター内で倒れていた俺は、ようやく発見された。


(良かった・・・)


 これで助かったと安堵の思いが込み上げる。

 救助の人の手が差し伸べられる。

 が!

 それは、あの男だった。

 不覚にも男の手を取ってしまった。

 男の口角が醜く歪む。


「私も思い出しましたよ。アナタも私と一緒ということを」


「・・・違う!」


「埃まみれたファミコン」


「・・・・・・違う」


「それはアナタ」


「違う!違う!違うって!」


現世(うつせ)は、泡沫(うたかた)の夢のアナタ」


「そうじゃ、そうじゃ、ないって!」


「現世に憧れと思いを抱くアナタ」


「違う!!!!!」


 俺は錯乱した。

 崩壊し消えゆく世界。

 きっと夢を見ているのだ。

 悪い夢を。

 醒めない夢はない。

 きっとない。

 きっ・・・と・・・きっ・・・と。

 キット。




 結


 エレベーターの中、俺は見知らぬ男と二人で階上を目指していた。

 突如、室内の電灯の明かりが消え、浮上が止まった。


(どこかで・・・)


 経験のしたことある場面。

 きっと、よくない事が起きる。

 俺は本能的にそう思った。


「知っていますか」


 なんの脈絡もなく、急に喋り出す男。


「なんですか」


「知っていますか」


 俺の憤りの声には、一切耳を傾けず、同じ言葉を繰り返す男。


「だから、何が?」


 思わず声を荒げてしまう。


「ファミコンですよ」


 男に同意するとよくない事が起こりそうで、俺は咄嗟に、


「知らない」


 と答えた。 


「そうですか」


 男はしょんぼりと俯いた。

 良かった。

 これでやり過ごせた。


「本当に・・・本当に知らないのですか」


 男は諦めずに、じりじりと狭い密室の中、俺に迫って来る。


「本当に、本当に、知らないのですか」


「知らない」


(知らないクソゲーだなんて)


「・・・・・・」


「・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・」


 重苦しい沈黙。

 そして男は口を開いた。


「アナタ」


「はい?」


「クソゲーと言いましたね!」


 俺は心の中で言っただけだ。

 全身が総毛だった。


「クソゲーといった!クソゲーといった!クソ、クソ、クソ、クソゲーと」


 男は狂乱し、繰り返し叫ぶ。


「クソ、クソ、クソ、クソ、糞、糞、糞、糞、Ksogee!!!!」


(ああ、また繰り返される)


 男が叫んだ瞬間、俺の意識はリセットされた。

 永遠に続く無限ループ、クリア出来ない理不尽さ・・・まるで。

 どこまで・・・。

 俺は・・・。

 いったい・・・。

 ・・・・・・。

 ・・・。

 何なんだ。

 いつまで・・・続くのか・・・。


                完



                    2012→2020


 ありがとうございます!

 ファミコン世代ではない方は?かもしれませんが、大丈夫、世代の人も?だと思います(笑)。

 拙文、失礼しました。

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