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拾ったドロイドが美少女だったので、一緒に旅することにしました  作者: ディミトリー・トレチャコフ大尉
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Engage

友人に、お前の書いているそれはライトとは到底言い難いと、言われたので。

私にもライト風の文章はきっと書けると、証明したかったが故の暴走↓



―ところで、もし誤りがあるとすれば、それは人の犯した間違いである。したがって、キリストの裁きの座で染みがないと認められるために、神に関わるものを非難しないようにしなさい。


                                        モルモン書




「モルフォ1よりエリアコントロール。政府軍機の北上を確認、座標HG562397」


『相手は4機だ、援護を待て』


「……俺の獲物だ、手を出すな。モルフォ1エンゲージ」


『あ、おい!待て‼』



 空気を切り裂く、ジェットの轟音。急降下時に生じる、エアインテークが作り出す独特な重低音をBGMに、1機の戦闘機―V字型のラダーの、その片方を蒼色に染め上げた前進翼機が眼下の敵機に獰猛に襲いかかる。


 レーダーが捉えたか、4機の敵は慌てて出力を上げ、慣れた動作で散開するが、既にその内の1機は前進翼の彼に捕捉されている。


 チャフを撒き、最大加速で逃げようとしたところを、しかし彼がそれよりも速くロックオン。


 コックピットの、パイロットの戦闘行動の効率化の為に、必要最低限の表示機能を集約した、ヘッドアップディスプレイの照準がロックを示す赤色に変わるのとほぼ同時。



「フォックス2」



 彼は操縦桿のトリガーを引いた。


 撃ち出されたミサイルは、忠実に敵機を追い、あまりにも遅いタイミングでフレアを射出した敵機を嘲笑うようにガスの尾を引きながら命中し、敵機をそのパイロットごと、そうだったものに変える。



 だが直後、コックピットに響き渡るロックオンアラート。


 見れば後方に、まるで先程墜とされた僚機の敵討ちをするかのように喰らいつく敵機。


 敵がミサイルを発射するタイミングを見計らって、フレア射出と同時に急旋回。敵機に、かなり強引に格闘戦に持ち込ませる。


 元々機動性にしか利点のない前進翼は、しかしだからこそ格闘戦において非常に強力だ。


 ドッグファイトに持ち込んだ敵機に、数回ハイGターンを仕掛けてやれば、敵が気づく間もなく彼は先程と真逆の位置、敵機の後方に肉薄する。



「ガンズ」



 操縦桿の武装選択パッドで、ガン―20mm対空ガトリング砲を選択し、ガンレティクルを敵機の真ん中に収めてトリガー。


 毎秒数十発という、凄まじい発射レートで撃ち出された機関砲弾が、敵機の装甲を引き裂く。


 燃料に引火したらしい敵機が、錐揉みしながら火を噴いて墜ちていくのを、その蒼い双眸で捉えたのも一瞬。


 残りの敵機に、機首を向けた。



 1機は賢明に、逃げを選択した。屈辱的ではあろうが、命あっての物種がこの業界の鉄則である以上、良い判断ではある。


 だがもう1機は彼に向かってきた。撤退機の時間稼ぎか、はたまた激情からかは分からないが、脅威である以上仕留める義務が彼にはある。



 ヘッドオン。自機と敵機が向かい合った状態だ。


 まるで中世の一騎打ちの様に。お互いが向かい合って、交差したその一瞬に全てが決まる。あまり彼の好かない戦い方だ。


 ヘッドオンはリスクの高い戦法だ。普段はパイロットを銃弾から守ってくれるかも知れない防弾板かエンジンが無いし、音速を超えた機動戦が当たり前の現代では、彼我の距離が詰まるのも一瞬だ。


 ちょうど、今のように。



 高度差はほぼゼロ。


 速度有利もない状況で、衝突でもする気なのかと思える程無謀に突っ込んでくる敵機が、機関砲を放つのが見えた。


 その瞬間、彼は空戦用フラップを降ろすと同時に、操縦桿を思い切り引く。ストール警告がやかましく機体を元の姿勢に戻すよう警告してくるが、気にしてなどいられない。


 瞬間的に真上を向いた機体は、しかし急すぎるその機動に失速し、だが機体はそのまま回転し続ける。


 まるで、器械体操の選手が殆ど位置を変えずに1回転するかのように。


 くるりと向いた機首が、虚しく彼の元いた位置を通過した敵機に向いた頃には、彼は機関砲のトリガーを引いていた。





「状況終了。撃墜3、残る1機は逃げた」



 無線越しに、ヒュウと下手な口笛で驚いてみせ、答える声。



『しめて6000って所か、流石だな。増援が来る前に離脱しろ』


「コピー。モルフォ1、RTB」



 無線を切って、ヘルメットを外し空を仰ぐ。度重なる核爆発とその他多数の煙のせいで、今ではすっかり太陽の光が途絶えた灰色の空。


 もう少し上まで昇れば、またあの青黒い空が見えるのだろうか。





 いつの日か夢見た、あの空にもう一度会えるのだろうか。


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