死に至るかもしれない病
書きたいけれど何が書きたいかわからない。
じゃあ書きたくないんじゃないの? と思われるだろうし自分自身でも思うのだが、よくわからない。そんな鬱屈とした問いを抱えることで生まれるフラストレーションから逃げてきたのが自分なのだが、わからないなら文字に起こしてみようと思って今書いている。
自分自身がわからない。何もわからない。何を考えているのか何に苦しんでいるのか何を求めているのか、漠然としたものはわかるけれど、それはまるで砂漠の色がわかるようなもので、そもそもなぜそこに砂が溜まっているかとか根本的なものが何もわからない。靄に包まれているように目隠しをされているように。
俺にとってフラストレーションは耳にぶら下がったイヤリングのようで、取りたくても取れない。いつも鏡を見ながら疫病神のようにぶら下がるイヤリングを見てため息を吐き出す。みたいな。
わからないわからないわからない。
俺は小説を書くのが好きなのだと思っているけれど、今まで書いたものだってみな、何か衝動が文字として現れたような意味不明なものばかりだ。正確には書いた俺にはわかるのだけれど、そういう意味じゃなくて何かこう書きたいから書き始めたのだけれど書きたくないから意味不明なものになってしまうような。剣と盾を一緒にしてしまったがゆえに重たくて振りづらい、みたいな。要するによくわかっていない。
この逃げ場を失ったフラストレーションを大事に抱えて生きてきたのだけれど、どうにも限界らしく今こうやって文字に書き起こしている。
俺はどうしたい?
わかるようなわからないような薬をゼリーに混ぜたら何の薬かわからなくなっちゃったみたいな。
俺はずっとこれの答えを探している。誰かきっと素晴らしい人間が神さまのように答えをくれるのだろうと期待してみたものの、誰もかれもヒントだってくれやしなかった。それ以上に他人を理解しようとする気が一切なかった。というより、理解が難しいものに対してわざわざ理解しようとする労力を投げ棄てている。蹴飛ばしているのだ。
さてさてさて、じゃあこれをどう解決する? 正直手に余って肩が脱臼しそうだ。けれど、地面に落とすこともできず、何か鎖で縛られているような、要するにこの吐いてしまいそうなほどのフラストレーションを抱くことこそが俺らしいという意味であり、これなくして俺は俺という個を保てないということらしい。まあつまりこのフラストレーションを生み出したのは俺自身というわけだ。別に悪魔が嫌味で渡してきたわけでも神さまに試練として課せられたわけでもないということだ。
どうすればいいかわからないから俺はこうやって文字に起こしている。この文章の前にもなんだか行き場のない怒りを書きなぐったけれど、ひとまず落ち着いた。意味があるのか? それはわからないけれど、きっとオナニーでもしているよりはずっと健康的なはずだ。そう思いたいだけの可能性もあるけれどまあそれはいいとして。
どうしようか。
こんなものを抱えたままだと俺はきっと俺を殺したくなる。でも死にたくないからどうにか突破口が欲しくてこうやってあがいてる。これが俺に課せられた原罪が形を為したものだと神々しい神さまっぽいやつが言えば信じて自らの首をしめてしまうかもしれないけど、きっとそんなお節介なやつはいない。じゃあ自分で行動してなんとかするしかないのだけれど、どうしようもない。いくら考えても行動しても短い人生の中でヒントのヒントになるようなものさえ見つからなかった。あったかもしれないけれど俺は気づかなかった。
どうしよう。つまりこう考えるということは俺はどうにかしたいのだ。そう、俺はどうしようもないほど生きたい。けれど今のままだとどうしようもないほど死にたい。俺はきっと小説を書くことが好きなのだ。でも書く元気が身体というより心にない。だから俺がぶちまけているのは何かよくわからないわからせる気もない意味不明なものばかりだ。こう書いていると排泄物に似ているんじゃないかとふと思った。つまり俺は下痢なのだ。下品でごめんね。
結論もオチも何もない。どうすればいいのかわからないということをこうやって文字に書き起こしてなんとかならないかなと美女とイチャイチャする夢を見ることを願うように頭の中でうすぼんやりと期待している。
俺はコイツと心中するのか?
それともコイツを俺から引きはがして虫のように踏みつぶすのか。それとも仲直りしてなんかそういう雰囲気になってハッピーエンドみたいな雰囲気の中消えてしまうのか。それともやっぱり神さまっぽい神々しい誰かがやってきてなんか助けてくれるのか。そうなりゃ楽なんだけどねえ。