手を染めてないから足を洗わない。
新年あけましておめでとうございます。
今年も拙作をよろしくお願いします。
相変わらず亀更新かと思われますが是非お付き合い下さい。
謎の声に言われるがままに帰途に着く。休みを求めるかのように弱まった風が頬を撫ぜるのがとても心地良い。依然として人は誰も居らず、自分を残して消滅してしまったみたいだ。
ただ帰るのは惜しい気がする。
しかしながら速く帰らないと先に進めない。この坂を登れば我が家だ。
気づけば走り出していた。心臓がどくどくと血を移動させているのを感じる。そう言えば最近運動なんて殆ど手をつけてなかった。だから足を洗う必要なんてなかった。流してはいけないものまで流してしまった気がする。
部屋の扉はいつもと違っていた。
いや、勿論部品が違ったり色が変わってたりする訳では無い。
人が居た。それも、普通の身長の人が屈めば通れる道を相当苦労しないと通れないような大男。背中だけを見せられて、『この人は暴力団に所属していて麻薬販売に最近手を染めて泡銭を使って豪遊しているぜ。十中八九。』なんて言われても多分『失礼だろ!』とは訂正出来無いかもしれない。そもそも僕は声高に相手を否定するなんて事とても出来ないんだった。やっとこの位置に落ち着いたのだし、また迫害の土地に戻る気はサラサラない。
さて、どうしようか。
まぁ適当に声を掛けても死にはしないだろう。家に用があってそこにいるのだろうから。まさかウチの風水を分析しに来たのではないだろう。
「すみません。僕この家の者ですが。ご要件は何でしょうか?」
『あなたにお聞きしたい事があるのですが。』
呼びかけると後ろ姿からはとても想定できないような端正な顔立ちをした男性がいた。予想外過ぎて萎縮してしまった。こういうクラスの中心にいそうな男が苦手なのも関係しているのかもしれないが。
「何でしょうか?」
まぁ取り敢えず答えた。
『貴方の両親の場所はご存知ですか?貴方の両親のせいで今裏の業界が揺れているようで…。』
『あ、私こういう者です。』
筋肉質な体の割に細くて綺麗な手から名刺を渡された。
【白眉情報新聞特命情報員 遊佐木】
あの人が言っていた事はこれか……と
僕は確信した。
普通は信じ難い筈なのに。