澄香:梱包されたメッセージ
レビューが嬉しくて書いてしまいました。
同業者の面白い文章に刺激を受けたのも勿論有りますが。
「ふぅ。」
思わず息を着いた。やっぱりあの場所に行くと-いつもでは無いかもしれないけど-何かが変わる。結局、坤野さんの思い通りに働くことになってしまった。まぁ開始は来週の月曜日から-何とか交渉した-だからしばらく余裕は有るのだけれど。まぁそんな事はどうでもいいか。
誰も居ない食卓に座りながら本を読むくらいしかやることが無くてやっぱり移動して無いのでは無いかと見紛う程に平和だ。今のところやったことが長閑な昼下がりに行きつけの喫茶店でいつもと少し違うご飯を食べて、店主と世間話-何処か硝煙の匂いのする話ではあったけれども-しただけだ。あの人に私は担がれたのでは無いだろうか。そもそもあれ程信じていたことがおかしいのだ。幾らそれらしい事が何個も有ろうとそれは結局有っても無くても地球全体で見れば大同小異だ。世界を違える程の物じゃない。
『言ったじゃないですか。その違いが小さかろうが大きい乖離を産むんです。その内。』
いきなり後ろから声がした。ばっと急に振り返る。身体が少し歪な音を立てた。
『そんな驚くことないじゃあ無いですか。私たちしばらく同居人でしょう?』
振り返るとその人は雷の夜の彼女だった。いや、驚かない訳が無いだろう。これで驚かなかったら感覚が死んでると言わざる負えない。ひょっとしたら彼女は感覚すらも要らないものとして捨ててしまった-彼女は効率の為なら平気でそんな事をしそうな雰囲気を携えていた-のだろうか。
「でも、鍵閉まってませんでした?それに同居人だとしても貴女の事を私は何一つ知りません。」
何とか返す私はまるで外国に来た異邦人のようだった。彼女は美女の彫刻-極限まで無駄を排除しそうなその雰囲気からしてバロック芸術では無いだろう-のように首を傾げて言う。
『鍵なんてしまっておりませんでしたよ。そのうえ、鍵なんてこの世界では意味を成しません。本当に見られたく無いものですらみんな丸見えなのがこの世界なのですから。』
また抽象的な言葉を並べてくる。普段はそんな事でイライラするほど楽しい人生を送ってるつもりは無いが-楽しくない人生は感情の起伏すらとっぱらってしまうものだし-何故かイライラしていた。
「私は名前の付いたものが欲しいんです!別に抽象的な事を聴いてる訳では有りません!貴方は私の事を知ってるかも知れませんが、私は全く知らないんです!」
思ったより大きな声が出てしまった。久しぶり過ぎて身体の負担になっている気がする。
『名前は只の無粋な記号だと私は思うんですけどねぇ…。』
一度きりだと、言うように感覚を置いた。一字も聴き逃してはならないと耳を澄ませた。
『私の簡単な記号は火奥貴女にコレを渡しに来ました。これは間違いなくこれから使わなければならないものです。』
その手渡された物は予想外-と言うのは不適切かも知れないけれど、そもそも適切なんて誰が決めるんだっけか?-な代物だった。




