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ソラのイロ  作者: 亜房
隧道
11/61

文哉:新世界より

少し沼りましたが約束通り今日投稿出来ました。

1ヶ月記念日(何となく言ってみたいだけ)に投稿出来て嬉しいです。

 国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。この名文を書いたのは記憶に間違いが無ければ川端康成だったか。

まさにそのような気分だった。

目的地に向かって走っていくこの電車は一面の銀世界の中で自己主張をするかのようにライトを光らせて走っている。紅鳶色の列車はそのままでも酷く目立つがその光によって温かみが増して見えた。


 しかし、あんな問題の渦中の場所がこんな銀世界だとは思いもしなかった。一昨日の嵐、昨日の台風一過の晴天と同じ天候で同じ世界を歩いている筈なのに今日こんな雪景色が有るということは今日未明から今までにこんな沢山降ったという事か。誰かの疚しい事を隠す為なのだろうか。その為であれば仕方ないように思える。後暗い宗教が信奉している神-本当に居るかは定かではないが-が不出来な信徒の暴走を覆い隠したくて降らす雪。そう考えると何故か神秘的に見えて来た。神秘的な物が必ずしも良いものでは無いという一例を見た気がした。雪は周り一体に平等に降り積もる。太郎君の家だろうが次郎君の家だろうがコミューンの本拠地だろうが。自然現象はある意味一つの平等の形なのかもしれない。


 確かに、自然現象でも平等出ない物は存在する雨と雪の何方どちらをを取ってみても場所によっては大洪水になる程降る所も有れば、水不足に喘ぐ地域だって有るし、雪解け水を農業に使う地域も有れば、我が国の首都のようにほとんど降らない所だってある。しかし、全ての人が完全に平等な物なんておそらく無い。無理やり考えるとするならば【救いの無い不平等】だろう。多分不平等を感じた事が無い人なんて居ない。色んな人が【妥協】したり【諦め】たりして、その心の穴を埋めているのだ。心の穴は埋めなければいけない。その穴から隙間風が入って心を冷たくしてしまうから。


 その風は都会に多く吹き荒れる。色々な人の埋まりきっていない心の穴を嘲笑うかのように吹き荒れる。だから問題が起こっているのは都会かと思っていた。田舎だって構成する人は何も変わりはしないのに。寧ろ移動しにくいその環境から脱出する事が出来ないから風の質は違えどもっと酷いに違いないじゃないか。例外は勿論もちろん有るだろうが、それがドラマにある様な心温まる田舎なのだろう。問題に巻き込まれてるだけの被害者は心が優しい人だといいなと思う。


 僕は人と話すのがそれ程得意ではない。寧ろ苦手と言っていい。だから今回の好奇心に殺されたくない。そんな後ろ向きな考え-いつもの事であるがこれから抜け出す事が大人になることならば、僕はまだ子供でいい。望みが破れた痕跡を積み上げた僕の人生にはおあつらえ向きだ-に浸っていると目的地の最寄駅に着いた。そこからまた別世界だった。こちらの世界では国境の長いトンネルは小刻みに存在するものらしい。一見平和に見えるこの駅は田舎の程度とは不釣り合いな程人が居なかった。まずは旅館探しだ。僕は一先ひとまず駅長室に行くことにした。

    雪     三好達治


 太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。

 次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。

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