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ソラのイロ  作者: 亜房
分岐器
10/61

飢饉の時のパン屋

⚠️眠くなりながら書いた部分が含まれます!後日修正する可能性が御座いますが、修正するにしてもしっかり2度楽しめるようにするので安心してお読みになってくださいませ。感想お待ちしております。

扉を開けるといつもの見なれた光景。

此処はあちらとどうやら同じらしい。

店主は趣味の辞書読みをしている。

私もよく辞書で読書をするがこの人の頻度には劣るだろう。


『いらっしゃい澄香ちゃん。』


辞書を閉じにこやかな挨拶-と本人は言っているが私はどうも狸の親玉みたいに見える-

私は軽く手をあげて返した。


『いつものでいいかい?』


常連客だから、こう聴かれるのではなく割と沢山来る前から言われている台詞だ。

何か常連客にこんなのが居るぞって他の人に見せたかったらしい。

私が居る時は大抵人が殆ど居ない時なんだけど、それに店主が気づいてからも何故か定着している。


いつものというのはコーヒーとクラブハウスサンド何だが今日は別のにしよう。


『メニューを見せてもらってもいい?』


店主は意外そうな顔をしてメニューを棚から引っ張り出した。


『はい。どうぞ。しかし珍しいねぇ。そんな顔をしてる澄香ちゃん初めて見たよ。』


うーん。何のことだろう。

何となく予想つくけど目で何処が?と聞いてみる。


『うーん。いつもは最低限で予防線を多数張って生きてる感じだけど、余計な枷が外れた感じがするんだよね。』


心当たりが無いわけでは無かった。

目標という物があると少し人は違って見えると言うが本当なのかも知れない


「ふーん。そうかな。」


「そう言えば坤野こんのさんはどうなのかな?何処か表情に影がある気がするけども。」


そうなのだ。

先入観を取り除いてしっかり見るようにしているから気がついたのかも知れないが、何処と無くいつもと違う。


『澄香ちゃんには敵わないなぁ。』


『最近近辺がどうもきな臭いのさ。どうも喧嘩してるようでね。後暗い連中が。それのせいで商売があがったりだよ。』


 こんな平和でゆっくりと時が流れるほのぼのとした田舎にそんな事が起こりうるとは、かなり信じ難い話ではあるが本当らしい。この昼時に関わらず客が1人も居ない。昼時に1度来て人がオイルショックの時のトイレットペーパー騒ぎのようで、それ以来昼時には来なくなった為あまり信用出来るソースでは無いが。


「じゃあ、私の事を雇えそうにないね。気が変わってたって言うのに」


からかうように私は言った。

以前看板娘として居てくれと言われた事があったのだ。


『いや、そんなことないよ?』

『嬉しいこと言ってくれるねぇ。』


笑いながら坤野は言う。

どうやら薮蛇だったらしい。


「客減っちゃうでしょうから遠慮しときますけどね。」


 何とか返しはしたけれど負け惜しみっぽくなってしまった。


『そんなことないさ。』


『君、眼鏡を掛けたら文学少女っぽくて喫茶店に映える。』


『今なら時給1100円は出すよー』


割と魅力的な雇用環境なのが悔しい。

しかし…。


「妙に雇用環境良いけど、何か企んでないかな?」


それを言うと、分かりやすくぎくっとして致命的な証拠を目の前に出された3流サスペンスドラマの犯人のようになっている。余りにも分かりやす過ぎないか。気づかせる為にやってるのだろうし分かりやすい方がまぁいいか。


『まぁ、企んでないと言ったら嘘になるねぇ。』


観念したのかイタズラがバレた悪ガキのようになっているが、全然矛先を収める気配はない。

このまま話させたらろくなことにならない気がする。


「まぁ、言わないで良いよ。」


「こういう事を言い出すと厄介事に巻き込まれるのが相場だし。」


とか言いながら私はやっとメニューを見る。

坤野さんは色々とブツブツ言ってるけどしばらく放置しておこう。

こちらに来てあちらと明らかに違う内容が出てきてしまったのだ。しばらくここで足を止めなくてはならないのは明白だ。だけど、そのまま素直にやるって言うのも何だか気に食わないし。



うーん。何を食べようか。

しばらく固定してたから何か迷う。

まぁ、兎にも角にも

珈琲はこのフレンチプレスっていう淹れ方を指定しよう。

味の違いが分かるほど珈琲に入れ込んでいるわけではないけれど、あの淹れ方が気取ってなくて好きだ。


 銘柄はこの一番上のやつでいいだろう。何せ殆ど味の差が分からない。浅煎り深煎りの差とかは当然分かるがそれ以降の差となると完全に門外漢だ。「芳醇な香りが…」とか何とか言ってる人がよく居るけども半数以上はインスタントとすり替えてもバレないだろう。ワイン愛好家と一緒で高い物を飲んでいる自分に価値を感じている人が多い。そんな事で自分の穴を埋められる筈がないのに。本物の人間に見られたらそれはかなり痛々しいものに変わってしまうのに。


あとは、BLTでいいか。

結局サンドに落ち着いてしまうのは片手で食べられて考え事とかに向いているってことをつい考えてしまうからなんだろうなと思う。


ひとしきりこんな風に考えて

ブツブツ言ってる坤野さんに声を掛ける。


「この銘柄のフレンチプレスとBLTで。」


『はいよ。そう言うと思って今準備し終えたところだよ。』


そんなに予測しやすかったか…。

まぁ、ここにはサンド系は3種類しかない事を考えれば出来ないことでもないかも知れないけれど。


『ところで澄香ちゃん、仕事は受けてくれるのかい?』


満面の笑みで聴いてくる。

多分この人の事だ。

返答が分かってこういう事を言ってるのだろう。


私は嘆息してその出された右手を力なく握った。


















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